バスを待っていると

10月18日(水)晴れのち曇り

バスを待っていると

バスを待っていると
反対方向から
バスの中でよく見かける人が
坂道を上ってきた

何日か雨が降り続いていたが
今日は久しぶりの青空で
日差しを楽しむように
ゆっくりと坂道を上ってきた

声を掛けようかと思ったが
たぶん、向こうはこちらの顔を知らない
唐突に声を掛けられて
びっくりするだけだろう

バス停でそんなことを考えている
私には気づかずに
その人はゆっくりと
盲導犬と一緒に
その人はゆっくりと
前を通り過ぎていった

足もと

9月25日(月)晴れ、気温上昇

足もと

右手に鞄を下げ
左手にタブレットをもって
TシャツGパンの青年が
電車を降りていった
足もとを確かめることなく
しっかりと歩き去った

いちいち足もとを
確かめることなく
足早に歩けるということが
若さのしるしだと
若者の後を
目で追いながら思う

まだまだ暑さが残っているから
70歳を超えた私も
TシャツGパンという姿だが
電車の乗り降りにはいちいち
足もとを確かめる
何度も何度も
転んでけがをして
そうして年をとってきたからとは言うものの
失ったものの大きさが
そのたびに感じられる

老いも若きも乗せて
電車は走り出す
速力を上げる
電車の中で一人
転んでけがをした時のことを
思い返す

確実に老いている

8月22日(火)うす曇、暑し

確実に老いている

朝、くどいほどに
今日は何をするか、
何を持って出かけるか
点検しているつもりなのだが、
手帳を忘れたり、
薬を持って出かけるのを忘れたりする。

うすぼんやりしているのは生まれつきなので、
できるだけ注意をしているつもりだが、
なおるどころか
だんだんひどくなってきた。

生病老死というが
生まれたときのことは覚えていない。
幸い、あまり病気にはかからず、
かかっても大病という経験はない。
いつ、どんな形で死ぬかはわからない。
なんとなく不安な気持ちで
待つばかりだ。

確実なのは、
今、自分が年をとっているということ。
実感したくないことだけれども
それを経験させられているということ。

ぼくはひとり、きみは大ぜい

8月6日(日)晴れ、暑し

ぼくはひとり、きみは大ぜい

ぼくはひとり、きみは大ぜい。
でもそれはぼくから見ての話で
きみから見たら、
きみはひとり、ぼくは、大ぜいの中の一人かもしれない。

ぼくの言葉はきみがいなければどこへも届かない。
誰か取り次いでくれる人がいなければ、
どこかでむなしく消えてしまう。
そしてきみは、
さまざまな言葉の大海の中に
きみの言葉を漂わせている。

きみの言葉も同じことだ。
きみの側から見れば、
ぼくは言葉の大海の中に漂う
ただの一人。しかし
きみの言葉がぼくの心に届けば、
ぼくは最大限の努力で、別のきみにその言葉を届けるだろう。
でも、心に届かないときだってあることを
分ってほしい。

きみも
ぼくも
同じ言葉を話しているはずで
大ぜいが
同じ言葉を話していると
思いながら
その言葉の意味を
しっかりととらえているわけではない。

それで大ぜいの人間が
勝手なことを言い散らかして
いろいろな噂が大きな顔をしてひしめき合っている
その中を通り抜けて
きみの言葉の
いちばんの意味と、いちばんの技巧とは伝わらないかもしれない。
きみの言葉は
大まかにしか伝わらないかもしれないし
間違って伝えられる恐れだって
十分にある。

言葉はもろくはかない。
だからいやだという人と、
だからこそ愛着がわくという人がいるだろう。
きみがどちらの人間であってもいい。
どちらの人間であってもぼくはきみが
そのもろくはかない言葉を大事にしようとするかぎり、
きみの友だちであり続けるだろう。
友達であることが、もろくはかない言葉を通じて
表現できる、それ以上のものであることを
改めて実感し続けるだろう。

風は吹き続ける――ジャンヌ・モローの訃報に接して――

7月31日(月)晴れ

生きたいように生きる
奔放で、自由な風が
スクリーンを
映画青年たちの
心のなかを
吹き抜けた
そんな時代があった

夕暮れ時に
ともる 街灯の 光が
心のなかに
眠っているなにかを
呼び起こすように
彼女の出演する
映画は
新しい風を吹き込んだ

女の美しさとか
魅力とかを心に響かせた
女優はいくらでもいるが
その醜さまでもあからさまにして
しかも魅力的だったのは
彼女だけだ
天国で逢っても
地獄で逢っても
同じように愛せるような気がする
女優だった

風はやんだわけではない
まだ吹き続けている
フランス映画は
そして世界の映画は
美しく(時に醜く)自由な女の生き方を
発信し続けている
しかし、その風は昔の風ではない

ジャンヌ・モローの
訃報を聞いて
時代の終わりを感じた
自分が青年だったころのことを
客観的に見直すことができる
そういう時代さえも終わろうとしていることを
知った

それでも
風は吹き続ける
奔放に吹き抜けて
自由な心を
励まし続ける
時代が変わっても
新しい自由を呼び寄せようと
風は吹き続ける
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