詩の魂は突然の来訪者

5月5日(金)晴れ

詩の魂は突然の訪問者

君は突然の訪問者
やってくるなり
私の背中をひっぱたいて
笑いながら去って行くかと思うと
私の傍らで
何も言わずに
泣いていたりする

君と向き合っていると
自分が愚かに思えたり
急に賢くなったと思ったり
恐怖におびえたり
その恐怖を克服する勇気をもらったりする

君の言葉の中で
あらゆる哲学が
無意味に聞こえる
ストアの哲学も
エピクロスの哲学も

詩の魂は気まぐれな
突然の来訪者
待っていても来ないし
待っていないときに来ることもある
どうやってその機嫌をとるか
たぶん誰にも分らないだろう

猫の歴史

4月27日(木)曇り時々晴れ

猫の歴史

昔、我が家の縁の下に
のらの雌猫が住み着いて
何度かお産をした

どこまで気持ちが通じていたのかは
わからないが
だんだんお互いに慣れ親しんできた
とくに母親同士が仲がよかったようだ

そのころは、我が家の周辺に
野良猫がたくさんいて
飼い主の方針で
自由を謳歌している家猫も交えて
にぎやかに暮らしていた

ときどき
我が家のトタン屋根の上で
猫たちが集まっていたようで
夜になると
大きな音がしてびっくりしたものだ

野良猫が最後に生んだ
子どもを引き取って飼い猫にした
この子を頼むと親猫がいったと
母は主張していたが、本当にそうだったのだろうか
その子猫が大人になり年寄りになり死んでから
我が家では猫を飼わなくなった
ご近所の猫もだんだんと姿を消した

それから年月が経って
我が家も2度ばかり改築をしたし
ご近所の家も
代替わりをしたり
改築をしたりした
犬を飼っている家もあるし
猫を飼っている猫もある

我が家でも猫を飼っているし
猫を飼っているご近所の家は少なくないが
表を走り回る猫はいないし
夜に寄り合いを開くこともないようだ

我が家の猫を膝にのせながら
おまえは運がいいのか悪いのか
自分ではどう思っているのかと
問うている

昔だったら、
表を走り回って
喧嘩もしたし、危ない目にも会っただろうが
猫の大好きな自由を謳歌したはずだ
家の中を走り回っては
餌を食べる そんな生活に満足しているのかと

そんな問いはどうでもいいよと
いうふうに
膝の上で
ゴロゴロと甘えている
猫の歴史は猫自身には綴れない
(もっとも、そう思っているのは人間だけかもしれない…)

とも白髪

4月21日(金)曇り

とも白髪

バスの停留所で
時々出会う
白髪頭の
おばあさんを見かけた

今日は旦那さんと一緒で
お孫さんの顔を見に出かけるのか
ただの買い物か
おばあさんは穏やかな顔で
旦那さんは少し厳しい顔で
二人とも
白髪頭に風を受けて
並んでバスを待っている
黙ってバスを待っている

とも白髪というけれど
夫婦そろって
こんなに見事に白髪になることは
あまりなさそうだ

幸福を
無表情で包み込んで
とも白髪の夫婦が
二人でバスを待っている

付記 このブログを始めて以来、読者の皆様から頂いた拍手の数が23,000を超えました。お礼申し上げるとともに、今後もよろしくご愛読いただくことをお願いします。

向こうの方に

4月7日(金)曇りのち晴れ

向こうの方に

幼稚園の近くを
電車が通っていた
電車に乗って
上の学校に通いたいと思っていた

小学校の校庭から
海の向こうの半島が見えた
その半島の向こうに
何があるかを知りたいと思いはじめた

それから電車で学校に通うようになって
幼いころの謎のさらに向こうを知り始め
それどころか
町が海を埋め立て埋め立て
だんだん広がって
海が遠くなる様子を見ていた

その一方で遠くの世界も近くの世界も
変わっていくのを見ていた
海が遠くなるにつれて
平べったい町が
だんだん背丈を伸ばしているのも見た

向こうだと思っていた世界が
どんどん自分の手の届く世界になった
だが町が広がり 変化し
自分の世界も広がり 自分自身も変化していく中で
知らない世界 手の届かない世界も
どんどん増えていった

変わりながら広がっていく
外の世界に対する
憧れに引きずられながら
謎解きを続けている
楽しくもあり 幻滅も伴う
謎解きを続けている

引き出しの隅に

3月13日(月)小雨が降り続いている

引き出しの隅に

引き出しの隅に
雪国で暮らしていたころに買った
セーターを見つけた
機械編みのインディゴ色のセーターだ

店の人は フランスの海軍の水兵が着ているセーターだといった
水兵たちは素肌の上からこのセーターを着ているという
アラン・ドロンがそうやってこのセーターを着ている
映画がありましたねえといった

アラン・ドロンが気になって買ったわけではない
アラン・ドロンと似ても似つかぬ日本人なので
セーターを水兵のようには着なかった
それでも着ていると、話のタネにはなった
雪国での冬をこのセーターを着て過ごしていた

雪国から離れて
乾いた空気の都会に住むようになり
この冬も このセーターを着ずに過ごした
それでも
引き出しの片隅のセーターを見ては
このセーターを着て過ごした日々のことを思い出す
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