益田ミリ『銀座缶詰』

3月3日(日)晴れ

 昨日(3月2日)、益田ミリ『銀座缶詰』(幻冬舎文庫)を読み終えた。少し前に書店で立ち読みして、面白そうだと思ったので、著者については全く予備知識がないまま買ったのである。読み終えた日が、この著者の4コマ漫画を原作とする映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』の公開日と同じ日になったのは偶然の一致である。『朝日新聞』とWebマガジン幻冬舎に書いたエッセーをまとめたものであるが、2月10日に文庫の初版が出て、私の手元にあるのは25日に出た2版である。

 『銀座缶詰』という書名は本の中ほどに収められている「2泊の銀座缶詰」という文章に由来するようである。缶詰といっても編集者に押し込められたのではなくて、急いではいないが自分が仕上げたいと思っている仕事を仕上げるための自発的な缶詰である。だから銀座を選んだということらしい。窓の外の景色を眺めたり、体操したり、英語の勉強をしたり、食事のために外出したり・・・。別のエッセーの題名である「不マジメ適当人間」ぶりを披露しながら、しかしきちんとやることはやっている。易しい文章でそういう緩急をつけた生活ぶりとその中での感想が綴られている。「家事も、余暇も、仕事も、生きていくうえでそれぞれが大切ともって暮らしたい」(20ページ)と考え、だいたいその通りに暮らしているように見受けられる。

 こちらは老境にある男性なので、40代の女性である著者の生活と意見に共感できる部分が少ないことは否定できないが、いろいろなことに興味をもち(もちたくないことからはできるだけ逃げ)、いろいろなことをして(したくないことはせずに)、毎日を生きていこうという気持ちは変わらない。

 映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』について、その初号試写に出かけた時のことも書かれているが、この文章が書かれてから、活字になり、その一方で映画が試写を重ねて封切られるのにそれほどの時間がかかっていないわけだから、著者の周りの時間はかなり速く動いているのではないかという気がする。その中で余暇を楽しむのはかなりの凄技である。なお、著者のヒット漫画だという映画の原作『すーちゃん』のヒロインの名は、キャンディーズのスーちゃんこと田中好子さんからとったことに触れながら、田中さんの早すぎる死を悼んだ文章も収められている。

 ただの読者ではなく、自分でも文章を書こう(あるいは他の表現をしよう)と思っている人にとってもっともためになるくだりは、「漫画とわたしは一心同体のではないのだった。/そもそも、登場人物と一心同体では漫画は描けない。同じ気持ちを共有する瞬間はたくさんあるけれど、描く側は漫画のすべてをもっと遠いところから見ているのである」(「インタビューをめぐるあれこれ」、189ページ)であろう。もう既にそう思っていても、確認できるのは悪い気持のものではない。

 映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』は見に行く予定に入れていなかったのだけれども、このエッセー集を読んだら、見に出かけてもよいかなと思いはじめた。さて、どうなるか。
 
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