ダンテ・アリギエリ『神曲 煉獄編』(4)

5月26日(火)晴れ

 第3歌でダンテはローマ教会から破門され、それゆえ地獄に落ちていると信じられていたナポリ・シチリア王マンフレーディの魂に出会い、彼が死の間際に神と和解したことにより煉獄に置かれていることを知る。彼は煉獄山を登って罪を清めるために、まだ時間を過ごさなければならないが、それでもその時間が過ぎたのちには天国に入る望みを与えられたのである。喜び、あるいは悲しみを
私達の能力の一つが受け取り、
魂がその能力に集中している間、

魂は決してそれ以外の能力に振り向きはしない様子が認められる。
これが、我ら人間のうちで複数の魂が階層上に燃えていると
主張しているあの誤謬への反証だ。

それゆえ、魂を振り向かせて強く惹きつけ続けるものを
聞いている、あるいは見ていると、
時は過ぎ去り、そして人はそのことに気づかない。

なぜなら時間を計る能力と、
魂全体を支配する能力は、各々別な能力であるからだ。
ゆえにこの場合、後者は魂のほとんどすべてと結ばれ、前者は結ばれていない。

そのことを、その霊の話を聞きつつ驚き見つめているうちに、
私は実際に体験した。
(60-61ページ) ダンテはマンフレーディとの対話に気を取られて、彼らが煉獄山への上り口までやってきたこと、それまでにかなりの時が経過していたことに気付かなかった。第4歌の冒頭はこの状態について、プラトンとアリストテレスの人間の魂についての所説を引き合いに出しながら歌っている。プラトンは、人間の魂がそれぞれ独立した植物的魂(生命維持活動を司る)、動物的魂(衝動・感情を司る)、知性的魂(理性・思考を司る)の3つに分かれて別々に機能しているとした。これに対しアリストテレスはその3つの魂は一体となって1つの魂を形成し、ある1つの「能力」(ここでは感覚)が活動しているうちには、その他の「能力」に集中できないと考えた。
 解説は前回不覚にも通り過ぎてしまった箇所
三位格の中の一実体へと続いていく果てしない道を
我らの理性が踏破し得るなどと
望む者は愚かなるかな。

満足するがよい、人類よ、それが何かを知るだけで。
なぜなら、おまえ達がそのすべてを理解できていたならば、
マリアが御子を生む必要はなかったからだ。
(49ページ、第3歌34~39行、三位一体の神秘を理解することは人知を超えたことである)という個所に改めて触れて、魂の成り立ちについて完全に理解することができないとして、読者に神への畏れと人間の不完全性を思い出させようとするダンテの意図を見ている。

 ウェルギリウスに導かれてダンテは煉獄山の険しい斜面のわずかに開かれた割れ目を伝って登ってゆく。二人はやっとのことで山の周りの踊り場のように平坦な場所にたっどりついて休息し、自分たちが辿ってきた道を振り返るが、そこから見える眺めは(煉獄山鹿南半球にあるので、北半球で)見慣れた眺めとは全く違うものであった。

 ウェルギリウスはダンテに、これからの道のりについて、煉獄山は麓のほうでは険しく上りにくいが、頂上に近づくにしたがって平坦になり、登るのが容易になると告げる。
 すると、
一つの声が近くで響いた。「おそらく
その前に、お前は座って休むことになるさ」。
(69ページ) 声の主は、フィレンツェでダンテの近くに住んでいたリュート製作者のベラックワであった。彼は生前、何事も先延ばしする怠惰な性向の持ち主で、酒におぼれ、「悔悛の溜息を末期まで引き延ばした」(72ページ)ほどの男であるが、煉獄でもその怠惰さを続けているのではなくて、生前の行いの報いとして長い時間、煉獄山に登らずに待機して、忍耐を学ばなければならないのである。ベラックワはこうして、ダンテに向かって神意に従い忍耐するように説き聞かせるのである。(リュートはギターに似た昔の楽器であるが、現在でも演奏する人がいる。)

 神意はダンテが煉獄山を登っていくことを望んでいる。ウェルギリウスはさらに道を進むようにダンテを促す。
 煉獄は来世であるが、地球の南半球にあって、北半球と同じ太陽を見ることができ(見え方は違っている)、同じ時間の支配を受けている。だから、生前の罪の性質によって、煉獄で罪を償う時間が違うということになる。

 この歌では人間の知恵の限界、不完全性が強調され、人間が自力で様々な問題を解決しようとすることが戒められている。また、ダンテの身近な存在であった人物が登場し、彼がダンテに忠告を与えている。「煉獄編」でダンテは翻訳者・解説者である原さんの言葉を借りれば、「異なる考えを持つ他者を受け入れ、その理解、つまり友情をもとにした調和の世界の再構築を目指」そうとしているとも受け取れる。 
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