島村英紀『火山入門 日本誕生から破局噴火まで』

5月15日(金)晴れ

 5月12日、島村英紀『火山入門 日本誕生から破局噴火まで』(NHK出版新書)を読む。

 1月から3月にかけてNHKカルチャーラジオ『科学と人間』は山崎晴雄首都大学東京教授の『富士山はどうしてそこにあるのか~日本列島の成り立ち』を放送していた。時期的にかなり接近して、同じようなテーマで一方では番組が組まれ、他方では出版がされたので、両者が補いあう関係にあるのかと思ったが、そうでもなさそうである。山崎さんの放送は人類の起源や進化についても言及していたが、島村さんのこの書物は地球上のさまざまな火山についても触れてはいるが、日本に住んでいるわれわれが身近にある火山について最低限知っておくべきことは何かということをとにかく語っておこうという姿勢に貫かれているようである。火山については最近の研究によって考え方が変わってきた点が少なくなく、その点で再入門の必要があるというのが書名の由来のように思われる。

 それはこの書物の書きだしの「このところ、日本とその周辺で火山が騒がしい」(3ページ)という認識に支えられているのであろう。山崎さんがまだ今のところ噴火の気配を見せていない富士山を前面に出しているのに対して、島村さんは御嶽山の噴火、西ノ島新島で続く噴火、桜島で繰り返される噴火と、活発な火山活動に目を向けていることにも留意すべきである。

 第1章「こうして火山が日本を作ってきた」ではプレート・テクトニクスの理論を使いながら、日本列島の成り立ちと火山と自信が多い理由を説明している。日本列島は東日本では太平洋プレート、西日本ではフィリピン海プレートという2つの海洋プレート、東日本では北米プレート、西日本ではユーラシアプレートという2つの大陸プレートがせめぎ合う場所にある。とはいうもののプレート・テクトニクスで地震や火山のすべてが説明できるわけではなく、もっと大きな出来事を説明するためには、地球の表面にあるプレートの動きとは別に、もっと地球の深部から上がってきているプリュームの働きを想定するプリューム・テクトニクスの理論が有効だというのである。

 さて、日本列島は4つのプレートがせめぎ合う場所に会うので、地震が起きたり、火山ができたりする。陸上にある火山の7分の1は日本にある(この少し前に、世界の火山の大半は海底にあると説かれている)。地震も、マグニチュード6を超える大地震の22%もが日本に集中しているという。日本の地形のほとんどは火山活動の所産であるが、それだけでなく日本の季節や気候も、これらの地形と大きく関連している。もし地球温暖化がこのまま進むと、これまでの季節の変化の原因となっていた構図が狂い、梅雨の期間や降水量を始めとして、季節の変化が狂うのではないかと思われる。

 第2章は「日本を脅かしてきた噴火と火山災害」が歴史的に語られる。といっても、古い火山災害についてはあまり史料がないので、比較的最近の出来事が多く紹介されている。

 第3章では「どんな大噴火がこれから日本を襲うのか」をめぐり著者の考えが述べられる。火山ごとにマグマの性質は違うし、マグマが出てこなくても噴火することはある。噴火は5つのタイプに分けることができるが、その中で特に大きな災害を引き起こすのはイタリアのストロンボリ火山でよく見られるので、「ストロンボリ式噴火」と名付けられた噴火(日本では2014年に阿蘇山の中岳で起きたものがこれに当てはまる)、イタリアのブルカノ火山でよく見られる爆発に伴って溶岩流、火山灰、火山礫、火山岩塊を大量に噴出する噴火(桜島や浅間山の噴火にこのタイプが多いという)、巨大な火砕流を放出する「プリニー式噴火」(1707年の富士山の宝永噴火、1783年の浅間山の大噴火など)の3つのタイプである。日本では大噴火が何度も繰り返されてきたが、20世紀に入ってからは1914年の桜島の大噴火と1929年の駒ヶ岳の大噴火だけが大規模な噴火であり、その分、21世紀には大規模な噴火が何度か起きても伏木ではないと考える学者が少なくないという。
 
 これら以上の被害をもたらすのがカルデラ噴火であり、大規模なカルデラ噴火は日本では過去10万年間に12回起きたことが知られている。このうち、一番近年のものは7300年前に九州地方で起きた「鬼界カルデラ噴火」だった。カルデラ噴火がこの次いつ起きるかをめぐっては定説がない。ある試算によると、もしこの種の噴火が起きれば、最悪の場合1億2千万人の死者が出るという。ということは日本人のほとんどが死に絶えてしまうということっである。
 気をつける必要があるのはマグニチュード9の巨大地震後に近くの火山が噴火することである。東北地方太平洋土岐自身だけは不可が起きず、例外とされてきたが、2014年9月の御岳山噴火で例外ではなくなった。これまでの霊を見ると、近くにある火山一つだけが噴火するということはなく、すべての例で複数の火山が噴火している。なお、「近く」というのは600キロメートル以内ということで、日本国内のどこの火山がふかしても不思議はないのである。

 第4章では「危ない火山は意外に近くにある」として、とくに富士山と箱根山が挙げられている。「危ない」というのは単純に警戒レベルの問題ではなく、噴火をめぐる情報が少なく、予想が難しいとか、観光客が多いのに避難経路が少ないというような問題も関係している。さらに噴火と地震の予知のむずかしさ(少数だが予知が可能な事例もある)について論じられている。

 そして、第5章「火山とともに生きていく」ではこれまで述べてきたことを踏まえて、「火山国日本に住む覚悟を日本人はもっているべきなのであろう」(198ページ)と結んでいる。

 どうも暗い話が多くなってしまったが、火山の伏流水のおかげで成り立っている農業や工業も多く、鹿児島の桜島大根や群馬のキャベツも火山灰のおかげでできた土によりできる作物であるというプラスの面も考えなければならない。とりあえずこの書物に盛り込まれた知識をもとに、われわれの近くの自然について改めて考え直す時間をとっていくべきではなかろうか。
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