コリン・ホルト・ソーヤー『年寄り工場の秘密』

5月2日(土)晴れ

 家の中でのそのそしているのがもったいないような好天。しかし、特に出かけたいと思うような催しもない。窓を開けて、5月の風を呼び込むだけで我慢する。これからの連休をどうやって過ごすか。とりあえず、推理小説を読もう。

 ということで、コリン・ホルト・ソーヤー『年寄り工場の秘密』(創元推理文庫)を読み終える。

 カリフォルニア州にある高級老人ホーム<海の上のカムデン>の近くの丘の上に、<黄金の日々(ゴールデン・イヤーズ)>という名の新しい高級老人ホームが開設される。建物がモダンだからか、価格設定のためか、ペットを連れての入居が認められるためか、この新しいホームは侮れない相手になり、<海の上のカムデン>の住人達の中にも、引っ越していくものが出る。このシリーズの主人公アンジェラ・ベンボウとキャレドニア・ウィンゲイトの友人であるトッツィ・アームストロングも<黄金の日々>に引っ越した1人であったが、ある日、<海の上のカムデン>を訪れて、転居先には幽霊が出る出るらしく、正体を見極めてほしいと2人に依頼してくる。幽霊などというものを信じない2人ではあったが、好奇心も手伝い、入居希望者を装って<黄金の日々>を偵察する。トッツィの不安は他愛のないものであり、<黄金の日々>のサーヴィスは<海の上のカムデン>に全体として劣ることがわかっただけでなく、<海の上のカムデン>に住まいを移そうと考えている住民が少なくないことが分かる。

 新規入居者を増やしたい一心で<海の上のカムデン>の支配人であるトゥーガソンはこれまで認められてこなかったペットの飼育を試験的に認めることを提案する。そして、住人達の激論の結果、犬は認めないが、ネコだけを認めることになる。<黄金の日々>で「事故」が起きたことも影響したのか、<海の上のカムデン>へと転居を希望する老人たちが現われる。一旦、<黄金の日々>に移ったトッツィもまた<海の上のカムデン>に戻ってくる。ホームの空室がほとんどなくなったことで、トゥーガソンは悦に入っていたが、<海の上のカムデン>でまたもや殺人事件が起きる。これまでに起きた事件を担当して、住民たちにも読者にもおなじみのマーティネス警部補とスワンソン刑事が出動。アンジェラとキャレドニアもまた独自の捜査を開始する。

 『老人たちの生活と推理』、『氷の女王が死んだ』、『フクロウは夜ふかしをする』、『ピーナッツバター殺人事件』、『殺しはノンカロリー』、『メリー殺しマス』に続いての、高級老人ホーム<海の上のカムデン>を舞台とするユーモアたっぷりのミステリ・シリーズ第7作。第1作と第2作は当ブログで紹介し、第3~第6作が抜けて、第7作を紹介することになった。第3~第6作、それに第8作もおっつけ紹介していくつもりである。原題はThe Geezer Factory Murdersで、直訳すれば『変人を作る場所の殺人事件』ということになるだろうか。作中で料理はまずく、規則でしばりつけられる<黄金の日々>を「老人工場」と呼ぶ場面があるが、2つの高級老人ホームを股にかけて「活躍」する変人たちが物語に数々の起伏をつける。これまでに比べて、男性の老人の出番が増えているようにも思える。物語の後半はほとんど<海の上のカムデン>が舞台となるので、問題のFactoryはどちらのホームともいえないのではなかろうか。

 推理小説を読みなれた読者ならば、物語の展開の中で犯人の候補者を絞るのは比較的簡単ではあるはずだが、作中人物たちは老人ならではの先入観に取り付かれて推理・行動するので、物語は読者の予想を裏切って思いがけない展開をしていく。新しい入居者は猫を連れてくるし、なぜか警察は麻薬捜索犬を連れて<海の上のカムデン>にやってくる。犬と猫の動きが物語の展開を皿に見えにくくする。特にこの犬が模範生とはいいがたく、とんでもないことをして物語を混乱させるのも一興であるが、最後にはちゃんと事件の解決に貢献することになる(と書くと、結末の一端を明かすことになるが、犯人が誰だというわけではなし、この程度ならいいだろう)。

 アンジェラとキャレドニアのこれまでとは違った一面が垣間見えて、その点もシリーズを読み進んでいる読者にとっては面白いだろうと思う。連休中に、シリーズのまた別の作品を読んでみようかと思っているところである。
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