ダンテ・アリギエリ『神曲 地獄篇』(25)

2月24日(火)晴れたり曇ったり

 24歌の終わりでダンテはピストイアの盗賊であるヴァンニ・フッチの霊に出会い、不吉な予言を受けた挙句に、「俺がこれを話したのは貴様をどうあっても苦しませるためだ」(364ページ)と宣言される。第25歌に入っても、引き続き舞台は盗賊たちが閉じ込められている第7巣窟に設定され、フッチの言葉がいよいよ終わる。
己の言葉が終わると盗賊は
指を突き立て拳を固めて両手を高く上げた、
叫びながら「喰らえ、神、てめえのためにしてやってんだぜ」。
(366ページ)

 神の罰を受けているにもかかわらず、その神を悪罵する恐るべき言葉である。忽ち、彼は地獄の蛇によってその首を絞められる。
暗闇に沈む地獄のあらゆる圏を通じて
これほど神に対し高慢な霊を見たことはない、
(367ページ)とダンテは言う。そして蛇による罰のために言葉を失った、フッチの霊はダンテの視界から消えてゆく。

 次に現れたのはカークスという名のケンタウロス(第12歌でも登場した半人半馬の存在)である。彼は自分の兄弟たちの家畜を詐欺を働いて盗んだために、彼らよりも重い罰を受けているのである。「このケンタウロスをこの巣窟の悪魔と考えるか、罪人の一首と考えるかで議論は分かれている。基本的には悪魔も罪人も同じく神の罰を受け、底に近くなればなるほど区別がつかなくなる」(367ページ)と注記されている。

 カークスが通り過ぎた後、ダンテとウェルギリウスの前には3人の霊が現われる。彼らのうちの1人はダンテの妻の実家であるドナーティ一族のチャンファの行方を尋ねていたので、気がかりになったダンテは彼らの会話に耳を傾けようとする。ところが、彼らは六本の足をもつ蛇に襲われ、奇怪な変容を遂げていく。超自然的な現象が、ダンテのペンで生々しく描きだされていく。
・・・
変わり果てた姿は二つでありながら、そのどちらでもなく
みえた。こうしてその姿でゆっくりと歩き去った。
(373ページ) さらに別の蛇が現われて、残された別の2人を襲い、彼らもまた奇怪な変容を遂げる。
 ダンテが地獄でその罰を見届けた5人の人物はすべて彼の故郷であるフィレンツェの関係者であった。
獣と化してしまった魂は、
ヒューヒュー音を立てながら谷を逃げてゆく。
そして片方の者はその後ろから声を出そうとして唾を吐く。
(379ページ)

 (登場する)「各人物たちの来歴が不明なので、変身と彼らの罪との関係は不明だが、ここでも問題は党派間の争い、都市国家の戦争、内乱なのは明白であり、とくにフィレンツェの5人の罪は、分裂に分裂を重ねた市政の凄惨な内乱に深く関係したことにある」(589ページ)と翻訳者の原さんは注記している。ここではあまり詳しくは紹介しなかったが、罪人たちの霊が罰を受けている様子を描きだすダンテの筆致の生々しさは詩文学におけるリアリズムの1つの極致であろう。こうしてダンテとウェルギリウスの旅は、フィレンツェとトスカーナ地方との関係でも容易ならざるものになっていきそうである。
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