竹内薫『素数はなぜ人を惹きつけるのか』

2月19日(木)晴れ後曇り
 竹内薫『素数はなぜ人を惹きつけるのか』(朝日新書)を読み終える。数学の本を読むのは久しぶりである。私にとって数学は理解できる範囲では好きな領域なのだが、理解できる範囲が限られているのが問題である。

 素数とは自然数の積の形に分解できない自然数で、2を除いてすべて奇数である。「自然数の中でも特殊な存在でありながら、…数の究極の単位」(19ページ)であるのが素数であるという(そういえば、19も素数である)。素数には2,3,5といった身近な数から、「2の5788万5101乗から1を引いた数」(21ページ)という今のところわかっている最大の数まで膨大な数が確認されているが、その出没はまさに神出鬼没というべきで、現在のところでは素数が現われる完全な法則は知られていない。

 というわけでは身近な一面はあるものの、謎に満ちた数が素数である。この素数をめぐって多くの数学者がいろいろな考えをめぐらしてきた。例えば、この本の「コラム2」で取り上げられているゴールドバッハ予想=「2よりも大きいすべての偶数は(少なくとも1通りの)素数の和であらわすことができる」。4=2+2,6=3+3,8=3+5,10=3+7=5+5、現在のところ、4000000000000000000(4×10の18乗)まではこの予想が成立していることはわかっているが、ある日、突然これに反する数が出てこないとも限らないという。「ときに予期せぬ結末が待っているのが数学の面白いところ。ゴールドバッハ予想に、いつ、どんな形で決着がつくのか、楽しみですね」(51ページ)と著者は結ぶ。

 3と5,11と13、41と43、857と859のように「差が2の素数」を「双子素数」という。こういう素数の組は無限にあるのだろうか。実はこの問題は未解決なので、やはり予想と呼ばれている。
 ところで素数の逆数を足していくとその和は無限になる。一方、双子素数の逆数の和は有限で、ある決まった数(ブルンの定数)になることが分かっている。そのもっとも精度の高い値は1.902160583104だという(双子素数の逆数をどんどん足していくと精度が高まる)。そのくせ、双子素数が無限にあるのか、有限なのかはまだわかっていない。
 「三つ子素数」というのもある。もっとも差が2ということに限定してしまうと、3と5と7の1組しかなくなるので、5,7,11とか13,17,19のように間隔が2か4である三つ子と定義されている。三つ子素数も無限に存在すると予想されている。
 また3,7とか97,101のように差が4の「いとこ素数」というのもあるし、5,11とか131,137のように差が6の「セクシー素数」というのもある。なぜ「セクシー」というかというと、ラテン語で6のことをsexというからである。

 このように素数を扱っていると、さまざまなことに気付いたり、こうではないかと考えを巡らしたりする。それだけでなく、こうした素数の研究は自然現象を解明するのに寄与したり、情報技術の開発に役だったりするのである。
 アメリカのある地域には17年周期で大量発生するセミと、13年周期で大量発生するセミの2種類しかいない。17も13も素数であり、このようなセミを周期ゼミあるいは素数ゼミという。素数は最小公倍数が大きくなり、他のセミと同時発生する間隔が大きくなるので、その結果、交雑をして発生周期が変化する可能性が少なるので、種の保存が有利になったのではないかという。
 あるいは「原子核のエネルギーがリーマン予想と関係している」(152ページ)という話も出て来る(このあたりになるとついていけない)。要するに素数を理解することは、宇宙の成り立ちを解明するのに役立ちうるということのようである。その一方で素数研究はさまざな情報を暗号化するのに役立てられている。

 最後に、印象に残った話を紹介する。フランスの神学者であり数学者でもあるマラン・メルセンヌ(1588-1648)はデカルトの親友であり、音楽の平均律の研究をするなど多彩な活動を展開した人物であるが、数学においてはすべての素数をみいだすことのできるような公式を探し続けていた。そして2のn乗から1を引いた数が素数であることが多いことに気付く。そこから「2のn乗引く1が素数ならば、nも素数である」(176ページ)ことを証明した。(ただし、nが素数であれば、2のn乗引く1が素数であるとは言えない。) 2の3乗から1を引いた数である7、5乗から1を引いた数である31、7乗から1を引いた数である127は素数である。しかし2の11乗から1を引いた数である2047は素数ではない(本には書いてないので、自分で計算してみたが23×89である)。メルセンヌ自身はnが2,3,5,7,13,17,19,31,67,127,257の場合2のn乗引く1は素数になると考えていたのであるが、61,89,107が欠けており、67と257は合成数であった。
 1903年、ニューヨークで開かれたアメリカ数学会で、フランク・ネルソン・コールが黒板にこう書き記した。
m(67)=193707721×761838257287
つまり、彼は素数だと思われていたm(67)が、合成数であることを証明したのである。黒板に書くだけで発表は終わっていまい、そのとき、会場はシーンと静まり返ったが、そのすぐ後に拍手喝さいに沸き立ったという。
 「たった一行のシンプルな式で、数学界が感動するという事実には、素数というものが秘めている美しさ、そして奥深さを感じずにはいられません」(179ページ)と著者は書いている。門外漢の私も同感である。

 わからない部分もあったのだが、わかった部分だけで十分に楽しみながら読むことができた。楽しく読めたということが、この書物の値打ちではないかと思う。
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こんばんは

数学、好きです。

素数、面白いですね。
双子素数、いとこ素数、セクシー素数、
知りませんでした。

ご本、読んでみたいです。
またいろいろ、教えてくださいませ♪
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