さよなら歌舞伎町

2月1日(日)晴れ、寒い

 1月31日、横浜シネマ・ベティで廣木隆一監督の『さよなら歌舞伎町』を見た。

 東京は多くの出会いと別れを内包している都市である。東京のそれぞれの部分に、それぞれの個性に応じた出会いと別れがある。日本有数の歓楽街であり、多国籍的な町でもある歌舞伎町には歌舞伎町なりの出会いと別れがあるはずである。

 主人公の高橋徹(染谷将太)は一流ホテルのフロントマンをしていると嘘をつきながら、実は歌舞伎町のラブホテルの店長をしている。彼とセックスレスの同棲をしている歌手志望の飯島沙耶(前田敦子)のカップルを含めて、徹のホテルを利用する5組の男女とその周辺で展開される人間模様を2日弱の時間帯の中で描いた作品である。後の4組であるが、ホテルを利用しているデリヘル嬢の韓国人女性イ・ヘナ(イ・ウンウ)と韓国料理店で働いているアン・チョンス(ロイ(5tion))、ホテルで働いている中年女性の鈴木里美(南果歩)とそのアパートの部屋でひっそりと暮らす池沢康夫(松重徹)、不倫中の警察関係者である藤田理香子(河井青葉)と新城竜平(宮崎吐夢)、そして行きずりでホテルに飛び込んできた家出娘の福本雛子(我妻美輪子)とスカウトマンの早瀬正也(忍成修吾)という組み合わせ。それに、ホテルでAVの撮影をしている一団の中の女優が徹の妹の美優(樋井明日香)であったり、ヘナにほれ込んでしまう客(村上淳)が現われたりするエピソードが絡まる。

 沙耶は大手のレコード会社のオーディションを受けることになっている。ヘナは韓国で母親と店を出すのに十分な金を貯めたので、帰国しようと考えている。彼女がホステスをして短期間のうちに金を貯めたことに不審を抱くチョンスは彼女がデリヘルに務めていることを知る。いよいよその仕事の最後の日を迎えたヘナであるが、最後まで波乱が付きまとう。そして鈴木里美には思いがけない過去があり、雛子の身の上話に正也が同情してしまうことで、別の波乱が起きる。

 と、書いてみたが、新宿歌舞伎町にはこの30年ばかり足を踏み入れたことがない。とりあえず、映画を見ることが目的で出歩くので、近くまでは出かけるのだが、足が向かないのである。だから、この映画が歌舞伎町の現在をどの程度的確にとらえているのかを論評するだけの経験は持ち合わせていない。ただ、映画全体を通して、多く描かれているのは、出会いも別れも、なんとなくそうなった、別れても、また元の鞘に収まるということもありそうな関係であるように思われる。出会いと別れを通じてそれぞれの登場人物の中で何かが変わり、新しい人生に向かっていくというような展開ではない。確かに登場人物の中で何かが変わっているのだが、先行き不安という思いが付きまとう。詳しく書くわけにはいかないが、最後の方で題名通り、踏んだり蹴ったりの経験をした後、歌舞伎町に別れを告げて(あるいはまた戻ってくるのかもしれないが)徹が高速バスに乗って郷里へと戻っていく場面には、リアリティーを感じた。ただ、車外の風景をもう少し取り上げてみてもよかったのではないか。

 映画の進行に連れて、登場人物が過ごしている時刻をテロップで示すなど、観客に分かりやすいような工夫を凝らしながら丁寧につくられてはいるが、やはりいろいろな材料を詰め込み過ぎたという気がする。その割に沙耶のオーディションがどのような結果になったのかなど、描かれていない部分もあり、もう少し脚本を練ったほうがよかったのではないかと思う。そういえば、最初のほうで徹と沙耶が自転車で目的地に向かう場面があるが、ホテルマンがかなり遠くの職場まで自転車で向かうというのは不自然で、その不自然さに登場人物が気づかないというのが奇妙である。あるいは若いカップルが自転車を走らせるという映像の魅力に執着して、映像以外のことが目に入らなくなっていたのかもしれない。

 出演者では南果歩が物語の進行を支える役どころをしっかりと演じきっていて、実力を示している。この映画、5組の行く末を最後の最後まで追い続けているので、途中で席を立たないようにしてみてください。
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