行け、想いよ、黄金の翼に乗って

2月16日(土)晴れ

 昨日(2月15日)のNHKラジオ『まいにちイタリア語』の「イタリア音楽への招待」は「作曲家ヴェルディが残した最高の“Opera"=人生の恩返し」として、彼がミラノに建てたCasa di Riposo per Musicisti (音楽家の憩いの家)について取り上げた。世界で最初で、唯一の音楽家たちのための老後の施設であるという。

 1月11日の「イタリアの作曲家ガルッピ」で述べたように、2009年に放送された番組の再再放送なので、特に言及はされていないが、今年2013年はヴェルディと彼の好敵手であったワーグナーが生まれてから200年にあたる。この2人は歌劇の改革者であったとともに、彼らの作品が一方はイタリア、他方はドイツの国家統一事業の中で国民の中に浸透していったという性格をもつことでも共通する。

 さて、番組の中で取り上げられていたことであるが、妻子を失って失意に沈み、創作意欲をなくしていたヴェルディを再起させた作品が彼の出世作となった『ナブッコ』(1842初演)である。その中で歌われるのが「行け、想いよ、黄金の翼に乗って」(Va, pensiero, sull'ali dorare)という歌。ミラノ・スカラ座の支配人であったメリッリからオペラの台本を渡された時は気乗りがしなかったヴェルディが、偶然この1行にであってやる気を出したという。それどころかオペラが上演されると、観客はこの歌に熱狂した。作者ばかりか観客もこの言葉に力づけられたのである。

 『ナブッコ』は旧約聖書に出てくる捕囚時代のユダヤ人たちを支配したバビュロンの王ナブコドノゾール(ネブカドネツァル)を題材にした作品。当時のミラノは外国の支配下にあったので、観客たちはユダヤ人たちの身の上を自らに重ね合わせて作品を受容したのだと言われる。

 音楽の歴史に名を残す数多くの作曲家が1809年から1813年の間に生まれているのは注目すべきことである。すなわち、メンデルスゾーン(1809-47)、シューマン(1810-56)、ショパン(1810-49)、リスト(1811-86)、ワグナー(1813-83)、そしてヴェルディ(1813-1901)、この中でヴェルディは特に長生きであり、『りゴレット』(1851)、『イル・トロヴァトーレ』(1852)、『椿姫』(1853)、『アイーダ』(1871)など彼の代表作が作られたのは、同年輩の作曲家たちの代表作に比べてかなり後のことであった。ワグナーもその主要な作品が書かれたのは1850年代に入ってからであるからこの点でも共通する。しかし、ヴェルディはこの好敵手よりもさらに20年近く活動を続けたのである。

 番組の最後に流れたのはヴェルディが文豪マンゾーニ(1785-1873)の葬儀のために作曲したレクイエムで、モーツァルト、フォーレの曲と並んで3大レクイエムと呼ばれているという。作曲者、葬送される人物ともに、イタリアの国家統一というよりも、国民の精神の形成に貢献した人物であるだけに、曲の魅力とともにこの曲にこめられている両者の結びつきの重みを感じさせられる。
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