ダンテ・アリギエリ『神曲 地獄篇』(18)

12月28日(日)晴れ後曇り、寒い

 ダンテとウェルギリウスは怪獣の姿をした悪魔ゲリュオーンの背にのって地獄の第8圏へと降りたつ。第17歌の最後に記されているように、彼らを下すとゲリュオーンはすぐに姿を消す。

その場所は地獄の中にあり、人呼んでマレボルジェ、
取り巻く囲いと同じく、
すべてが鋼の岩からなる。

その邪悪な平野のまさに中心に、
たっぷりと広く深い井戸が口を開けている。
その仕組みについてはその場所で話すことにしよう。
(262ページ) 注によると「マレボルジェ」とは直訳では<悪の詰まった袋>、つまり悪の巣窟を意味するという。全部で10のボルジャ(巣窟)に分かれていることがやがてわかる。

右手に奇怪な苦しみが、
奇怪な責めが、奇怪な鞭打つ族が見えた。
第1巣窟はそれらであふれかえっていた。
(264ページ) ここには金銭や権力の獲得のために女性を使った女衒・ポン引きと、女性の愛情を利用し仇で返したヒモという2種類の罪人が封じられている。

こちらでも、あちらでも、暗色の岩の上に
大きな鞭を手にした角のある悪魔どもが見え、
後ろから罪人どもを残忍に打ちすえていた。
(265ページ) そしてその鞭を浴びている罪人たちの中にダンテは自分の見知った顔を見出す。ボローニャの教皇党の有力者であったヴェネディコである。彼は自分の強欲のために自分の妹を利用し、その罪でここにいるのである。

 ボローニャ方言を話すものが地獄のこの場所に増えて、ボローニャにいる人々よりも多くなったなどと語る、どこか滑稽に見えるヴェネディコのもとを離れ、ダンテはウェルギリウスに導かれて先に進む。すると、悪魔に追い立てられて歩む亡者たちの列の中に、ギリシャ神話の英雄イアソーンが地獄に堕ちても王者の風格を保った姿でいるのを見かける。彼もまた自分の目的の達成のために女性たちを裏切った罪でここにいるのである。

 そして2人は第2の巣窟に達する。
両崖には黴に似たものがびっしりとこびりついていた。
というのも下方からの息がそこに粘りつくためで、
それが私の目や鼻と激しく戦っていた。
(272ページ)  地獄の底から吹き上げる風に悩まされながら、ダンテは糞尿の中にまみれている死者たちの中に旧知であるルッカのアレッショ・インテルミネーイの姿を認める。彼は生前にさまざまな甘言を弄して人々を欺いた罪でここに封じられているのである。

すると自分のかぼちゃを殴りつけながら、この時その者は、
「べんちゃらがおれをこの下界に沈めちまった。
どんだけ言ってもこの舌は疲れなかったからな」。
(274ページ)とユーモアさえかじられるような返事をする。かぼちゃは卑俗な表現で「頭」を意味していたそうである。

 さらにこの第2巣窟には、生前に娼婦であったものも閉じ込められている。ウェルギリウスはその中の1人をさしてターイスであるという。原さんはターイスがローマの喜劇作家であるテレンティウスの作品に登場するが、そこでの記述と一致が見られないと注記している。アナトール・フランスの小説に登場するタイスはまた別人なのであろうか。2人はさらに第3巣窟へと歩を進める。

 34歌まである『地獄篇』の第18歌まで来たところで、新しい年を迎えることになる。今のところ、ダンテは地獄の奥底に向かって下降を続けているが、その後は、上昇の旅に転じることになる。私もその足跡を追って、来年は地獄を脱出して『煉獄篇』に進み、うまくいけばそこも通り抜けられるかもしれない。前途の平安を祈るのみである。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

tangmianlaoren

Author:tangmianlaoren
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR