東海林さだお『ショージ君の「料理大好き!」』

12月7日(日)晴れ

 当ブログの発足以来2年と少し経ちましたが、この間に読者の皆さんからいただいた拍手が4,000を超えました。今後ともさらに努力と工夫を重ねて紙面を充実させていくつもりなので、お引き立てのほどよろしくお願いします。

 東海林さだお『ショージ君の「料理大好き!」』(文春文庫)を読み終える。文庫本の帯に「名著復刊」と記されている。1981年に平凡社から単行本として刊行され、1984年に新潮文庫に収められたものが、30年経って今度は文春文庫から再刊されることになった。近頃、こういう例がほかにもあるようで、なぜ、同じ版元から継続して発行されないのか、気にはなるが深く詮索はしないことにしよう。

 この本は題名通り、東海林さんが編集者たちをとともに、時にはプロの料理人の指導を仰ぎながら、さまざまな料理に挑戦した次第が語られている。成功もあるし、失敗もあって、それがこの人特有の語り口で面白おかしく記録されている。料理の多様性には、東海林さんのあくなき好奇心や探求心が反映されているとみるべきであろう。さらに注目すべきであるのは料理の過程の多くが東海林さんの漫画でわかりやすく描きだされていることである。つまり、単なるエッセーではなくて、料理の手引き本としても役立つ(はずなの)である。

 全部で24の経験が語られている。経験と書いたのは、1つの材料から多くの料理を作ったり、3分クッキングに挑戦したり、料理教室に参加したり、行楽弁当を作ってみたりと、1回1回が1料理で済んでいないからである。豆腐を作ってみたり、穴子を釣りに出かけたり、老舗料亭で「見習い修業」をしたりと、周辺的な経験もなかなか豊富である。

 成功例も失敗例もあると書いておいたが、やはり成功(だと東海林さんが書いている)例の方が面白い。たとえば「かき揚げ丼の巻」は次のように結ばれている。
 なんでも大きければいいというものではないが、丼にのっかった巨大かき揚げをしみじみ眺めると…しみじみと満ち足りた気持ちになる。
 味もけっこうおいっしかった。
 それよりも今回ほど、冒険とスリルとサスペンスに満ちた料理は今までなかったように思う。
 巨大かき揚げを丼の上にのせ終わったときは、
(何事かをなしとげた)
 という感激に胸がうちふるえたほどであった。
 ぜひ一度おためしになることをおすすめする。
(210-211ページ)

 こんなふうに、読者へのおすすめで終わっているのは「にぎり鮨の巻」(読者の方々も是非一度ためしてみてください。162ページ)、「豆腐の巻」(ああ、これが本当の豆腐だったんだナ、としみじみ思いました。ぜひ一度作ってみてください。258-259ページ)というところである。意外に少ない。こういうふうに分析的に読んでいくと、料理のむずかしさが実感できる書物であるかもしれない。

 東海林さんが雑誌にこの本のもとになるエッセーを連載していたころは、私も自炊生活を送っていたのだが、すっかり料理をするということからは離れてしまった。この本を読んでいても感じられることであるが、料理にはいろいろな情報や経験が付きまとうのである。そういうところから自分の世界を広げていくチャンスを、手放してしまったことを改めて感じるのであるが、その分、別のところで頑張ろうと思っているわけである。最後に付け加えておきたいが、解説がついていないのがやや物足りない。

 
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