ダンテ・アリギエリ『神曲 地獄篇』(16)

12月4日(木)雨

 第15歌で地獄の第7圏第3小圏において同性愛者の霊が受ける罰に苦しんでいる、かつての自分の師ブルネット・ラティーに出遭ったダンテは、劫罰として最後の審判の日まで走り続けるために去ってゆく師の姿を見送った後、自分が既に第8圏に近づいていることに気付かされる。

既に私は、次の円圏に落ちていく水のたてる、
まるで蜜蜂の巣がたてるあのブンと唸る音に似た、
轟きが聞こえる場所にいた。
(234ページ)

その時、またもや劫罰の雨の中を進んできた一群の霊の中から、3つの影が離れて近づいてきた。彼らはダンテの服装から、彼がフィレンツェの人間であることを察して近づいてきたのである。

哀れな。。何と凄まじい傷跡をその者達の体一面に見たことか。
真新しいものから古いものまであり、炎で焼かれていた。
それを思い出すだけで私は悲しみに沈む。
(234-235ページ)

ダンテを導いてきたウェルギリウスは、この無残な姿の霊たちが、フィレンツェの勃興期に活躍した3人の霊たちであることを告げる。

「この場所の在り方ゆえに射かけられている
この火がなければ、私は言うであろう、
あの者達よりもおまえの方が急いで出迎えるにふさわしいと」。
(235ページ)

 彼らの名を聞いてダンテは驚き、霊に話しかける。自分の出身地であるフィレンツェの歴史に名を残し、幼いころからその名になじんできた人々に地獄で出会るのは驚くべきこと、悲しいことである。それでも自分には地獄の中心まで見届ける使命があり、その旅路を急がなければならない。3人の霊は、ダンテがその使命を遂げた後、自分太刀の思い出を地上の人々に伝えることを望んで、去ってゆく。

 そしてダンテとウェルギリウスは切り立つ崖の上にたどりつく。その深い底には赤黒い水が轟いている。しかし、2人はその底へと降りていかなければならないのである。ダンテは身につけていた縄帯を解いて、ウェルギリウスに渡し、彼はその縄を断崖の深い底をめがけて投げいれる。何者かが呼びかけに応じて姿を現すとウェルギリウスは言う。

 ところで、フィレンツェの繁栄の基礎をつくった3人の政治家たちの霊はなぜ地獄で罰を受けているのだろうか。ダンテとウェルギリウスはまだ地獄の第7圏にいて、そこは生前の暴力を振るったものの霊が罰を受けている場所である。そしてフィレンツェの政治家たちは彼らが銀行家としてその利潤の追求のために他の地方の人々と暴力をもって争ったことの罰を受けているのであると翻訳者である原さんは解釈している。利潤の追求が悪なのではなくて、そのための手段として暴力を使ったことが問題とされているというのである。戦争の時代には戦闘の勇気が求められるが、商業的な繁栄のためには平和こそが望ましいとダンテは歌い、それはその当時にあって画期的な新しい思想であったのだと、原さんは解説している。

 ダンテとウェルギリウスの旅はさらに続き、さらに厳しいものとなっていく。
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