秋梨惟喬『天空の少年探偵団』

2月12日(火)曇り

 このところなかなか新しく本を読み終えることがないので、読書ノートを繰り直して、昨年読んだ本について書いてみることにした。秋梨惟喬『天空の少年探偵団』(創元推理文庫、2012)は同じ著者の短編集『憧れの少年探偵団』に続くシリーズ第2作、長編としては第1作である。

 東京都の西部にある桃霞(とうか)市で活動している桃霞少年探偵団はメンバー5人、補欠が1人から構成され、その全員が同じ小学校の6年生である。夏休みの終わり近く、市の一部である山奥に建築家の西大寺さんが建てたお屋敷である天空館に招かれた。少年探偵団の活動に興味を抱く西大寺夫妻の仲間の老人たちも駆けつけ、みんなで騒がしくも楽しい夕食の時間を過ごす。翌朝、車いすに乗っていた老人仲間の1人下津井さんが亡くなっていた! 事故でも自殺でもない、紛れもない殺人と考えられるが、100キロを超える巨体を移動させられそうな人はいない。しかも屋敷は厳重にロックされていて、外部からの侵入者の犯行とは考えられない。少年探偵団のエースである月岡君は<殺人事件NG>で頭脳がフリーズした状態になっている。残りのメンバーはヘリコプターで駈けつけた喜多川刑事とともに事件を推理するが・・・

 乱歩の少年探偵団を中心としたおたく趣味の雑知識の開陳でページ数を稼ぎながら、死んだふり(眠ったふりの方が適当か)をしながら推理を巡らせている名探偵の動きをそれとなく示唆して物語は進む。外れているように見える推理が実は正しい――かもしれない。月岡君以外のメンバーの推理は的外れに見えて、どこかで真相に迫っている。トリックがどのように解明されるかもさることながら、篇中に大人と子どもの関係をめぐる鋭い洞察がちりばめられている点が見逃せない。

「“子供の世界〟なんて大人の勝手な思い込みよ」
 姫こと頚城さんが突っ込む。キャラ的には未菜美に似ている。
「そんなものはどこにもないのよ。大人も子供も同じ世界を生きてるんだもの。大人の世界にいないものは子どもの世界にもいない」
「夢がないねえ」
「何でも“夢〟だと言って逃げるのはろくなやつじゃないわ、UFOでも超能力でも」
 テレビ超能力なんか単なる手品だとか、UFOなんかたいてい星だって言うと、夢がないなあ、っていうやつはクラスにもいる。そんなの夢でも何でもないと思うけど。単なる思考停止だって司馬君は言うし、僕もそう思う。(79ページ)

 「そのへんは子供の方がまともだし、ちゃんと地に足をつけてるわよ。子供がふわふわしてると思っているのは大人だけ。大人はそう思いたいのよ」(80ページ)

 話を全然聞かずに暴走する大人が多い気がする。(104ページ)

 確かに、友達って作ろうと思ってできるもんじゃないと思うな。たまにこの子と友達になりたいと思って努力することもあるけど、そういう友達って疲れる気がする。(138ページ)

 本筋とは別のところでも楽しめる本であり、求めていないのに教訓が得られる書物であるというのは、意地悪な評価であろうか。
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