虹をわたって

11月21日(金)晴れ

 神保町シアターで「映画は歌うよ どこまでも♪」特集上映の中から『虹をわたって』(松竹、1972年作品、前田陽一監督)を見た。この映画、なぜか封切られたときに見逃していて、その後、見る機会がなく、40年以上がたってやっと見ることができた。

 横浜港の近くの運河に浮かぶ水上ホテル「れんげ荘」にある日、マリ(天地真理)という名の若い娘がやってくる。主人のおきん(武智豊子)はいったんは断るが、彼女が家出娘で金をあまりもっていないと知って、とめることにする。そして同じく運河に浮かぶ食堂船「末広」で働けるように世話をする。ホテルの他の宿泊人、マフィア(なべおさみ)たちはやくざの大津(財津一郎)に言われて、マリを誘拐して地方の芸者に売り飛ばすようにいわれるが、なんとなく気が咎めて競艇で大穴を当てて金を返そうとする。ところが怖いもの知らずのマリが競艇場についてきて、彼女だけが大穴を当てて80万円を儲ける。しかしその金は大津に巻き上げられてしまうが、彼女が笑って許したので、すっかり心服してしまう。宿泊人の1人で占いの名手?であるハッケはマリと他の宿泊人たちが白雪姫と小人たちの関係に見えるという。とすると、白馬に乗った王子様が現われるのであろうか。

 映画中劇でマリが白雪姫、マフィアたちが小人、ハッケが王子に扮して『白雪姫』を上演する。王子はマフィアたちが手に入れたがっている家をプレゼントするというが、果たしてその約束は果たされるのだろうか。そうこうするうちに「れんげ荘」の近くに白いヨットに乗った青年昭夫(沢田研二)が現われる。彼は太平洋横断をくわだてているという。ハッケはこの青年がアメリカにいるおばの莫大な遺産を相続し、マリと結婚して、ホテルの宿泊人たちに家をプレゼントするという卦を立てる。そんなにうまい話が実現するか、さすがに他の面々は信じる気にならないのだが…。マリは実は横浜の山手に住む金持の令嬢であり、ずっと父親と二人で生活してきたのが、父親(有島一郎)が恵子(日色ともゑ)という若い水商売の女と再婚するというのでショックを受けて家出をしたのである。偶然彼女を見つけたボーイフレンドの次郎(萩原健一)は親が心配しているから早く帰るようにというが、彼女は帰る気を起こさない。

 前田監督は横浜、とくに港の周辺が好きであったようであるが、そのような好みがよく出ていて、マリが食堂船で働く様子など生き生きと描いている。海は実際のところそれほどきれいではないのだが、それでも気分を引き立たせるところがある(かくいう私も、以前は横浜駅の東口から山下公園までのシーバスによく乗船したものである)。水上ホテルと食堂船での経験でマリは自分の世界を広げることになる。広がった世界が彼女を変えていくというところで、物語は『白雪姫』をなぞっているようで、決定的に違うのである。そういう物語の構成上の工夫の一方で、マリの父親が何をして豊かな暮らしをしているのか、マリ自身が何をしているのか(学生なのか)というようなことについて触れていないのは気になる点である。「水上生活者」たちの生活がかなり詳しく描かれている一方で、山手の住人達については描き方が粗いのである。

 そうはいっても、前田監督らしい喜劇性がふんだんに盛り込まれていて、楽しんでみることができた。ただしこれは私だけのことらしく、今回の客席からはあまり笑い声が聞こえなかった。例によって年配の客が多かったのだが、今回の特集上映の題名とも関連して、喜劇というよりも歌謡映画という受け取り方が一般的なのだろう。その点が私にとってはどうも残念である。主演の天地真理の周辺に前田作品の常連俳優たちが配されていて、それぞれの役どころで物語と主演者を支えている。前田作品では悪役に回ることが多い財津一郎がその役を楽しんでいるように見えるところが面白く、日色ともゑが鬘をかぶったりしていつもとは違う役どころに挑戦している点も見ものである。そしてなべおさみと岸部四郎がそれぞれの個性をよく出している。
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