『伊勢佐木町ブルース』と『上を向いて歩こう』

11月14日(金)晴れ

 神保町シアターで『映画は歌うよどこまでも♪」特集上映から『夜の歌謡シリーズ 伊勢佐木町ブルース』(1968、東映、村山新治監督)と『上を向いて歩こう』(1962、日活、舛田利雄監督)を見た。本当は、『上を向いて歩こう』だけを見るつもりだったのだが、上映時間を間違えて出かけてしまい、『伊勢佐木町ブルース』も見ておくことにしたのである。

 『伊勢佐木町ブルース』は青江三奈の同名のヒット曲をもとに横浜・伊勢佐木町の夜の歓楽街に生きる男と女の人間模様を描いた作品で、東映で連作された「夜の歌謡シリーズ」の第4作にあたる。実は、今年になって初めて見る東映映画である(というほど東映映画とは縁がない)。伊勢佐木町通りには長く(青江三奈の死後も)この歌の看板が立っていた。私などは横浜シネマジャック&ベティに出かけるときの目印に使っていたが、今ではほかの歌の看板に変わっている。

 土地成金の大倉(伴淳三郎)から新しいバーを開設する資金を提供するから、そこのママを自分の愛人に世話してほしいという話を持ち掛けられたオープン屋の宮田(梅宮辰夫)は、愛人の話をうやむやにしたまま、仲の良いホステスのれい子(宮園純子)をママにして新しい店を開業させる。れい子は裏の事情をうすうす気づいているが、とにかく利用できるものは利用して、夜の世界の華やかな生活を楽しみたいというのが本音らしい。宮田にはその一方で房子(清水まゆみ)というホステスが熱を上げており、れい子の元の情夫であった暴力団員の竹村(吉田輝雄)が刑務所から出所してきて、話は複雑になる。

 物語は陳腐であるし、当時としても新しい趣向があったわけではないが、横浜に住む人間としての目から見れば、昔の横浜の姿、もう少し活気があったころの伊勢佐木町や横浜のその他の風景を見ることができて、その点が魅力になっている。青江三奈がフロアで歌う場面もあるし、山口洋子が特別出演的に顔を見せている。さらに言えば、助監督がこの後間もなく監督に昇格する伊藤俊也であるのも注目しておいてよい点かもしれない。

 『上を向いて歩こう』は坂本九の名曲の映画化。鑑別所を脱走した九(坂本九)と良二(浜田光夫)は運送屋をしながら非行少年の更生事業に取り組んでいる永井(芦田伸介)に出会い、九は彼のもとでまじめに働くことになるのだが、良二はドラマーのジェシー牧(梅野泰靖)を慕って彼のもとでバンドボーイをしながらノミヤに出入りをしている。そのノミヤのボスである松本健(高橋英樹)はむかし永井のもとにいたことがあるらしい。

 永井の娘で大学生の紀子(吉永小百合)が九の面倒をいろいろとみているのだが、その妹でポリオのために車いすの生活をしている光子(渡辺トモコ)に出会ったことで、九は彼女のリハビリを助けようとし、ますます一生懸命に働くようになっていく。紀子には同じ大学に通うボーイフレンドがいるのだが、健がその異母弟であることを知る。健は家族からのけ者にされて、チンピラの仲間に身を投じる一方で、受験勉強をして異母兄と同じ大学に入学しようとする。紀子は健が家族とよりを戻すことを望む。技量の衰えに苦しんでいる牧は麻薬に手を出し、そのことで生活があれていく。良二は彼のために何とかしようとするのだが、必要な金額が多すぎる。そのことで九とも仲たがいしてしまう。

 いろいろな境遇にある若者たちが出会い、その生き方が交錯する。その中で「上を向いて歩こう」、つらいことがあっても、向上心をもって頑張ろうというメッセージを発しつづけるのは永井であり、その娘の紀子である。実際、映画全体を通じて、紀子は常に正しいことを言い続けている。しかし、興味深いのは九が本当に立ち直っていくのは、そういうメッセージによってではなくて、自分よりも弱い、自分の助けを必要としている存在の光子に出会ったことを通じてである。このことが、同じ時期にアメリカで作られたジョン・フランケンハイマーやフランク・ペリーの映画と共通するものを感じさせて興味深かった。

 ラスト・シーンで健、紀子、九、良二、光子(自力で歩けるようになっている)を先頭に登場人物たちが『上を向いて歩こう』を歌いながら歩いていく。歩いているのは国立競技場のように見えるのだが、あるいは違うのかもしれない。なかなか感動的なラスト・シーンなのだが、歩いている場所がどうも気になってしまった。 
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