椎名誠『あやしい探検隊 北海道乱入』

10月26日(日)曇り

 椎名誠『あやしい探検隊 北海道乱入』(角川文庫)を読む。2011年に角川書店から刊行された『あやしい探検隊 北海道物乞い旅』を改題し、加筆修正の上文庫本化したものである。椎名さんの書下ろしで、『北海道物乞い旅』が出版されたのは2011年であるが、その題材となった旅行は2010年に行われ、この年に開かれたサッカーのW杯のことが書物の中でもいろいろに取り上げられている。この本の中でも旅の最終目的地として出てくるが、椎名さんは北海道(余市)に別荘をもっていて、日本全国を旅行している中でも、この土地にはより以上の愛着があるように見受けられる。

 このシリーズは当初、椎名さんが『哀愁の町に霧が降るのだ』で描いた下宿仲間や職場の同僚たちと結成した「東日本何でもけとばす会=東ケト会」の離れ島でのキャンプ行を辿るものであったのが、その後、椎名さんが知り合ったアウトドアの一芸に秀でた人々を結集した「いやはや隊」の冒険物語に変わり、さらに「第三次」は「雑魚釣り隊」ということであちこちで怪しげな釣りをしてその釣果を見せびらかすエッセーが続いた。それまでの「あやしい探検隊」の行状をつづった書物は、ほぼ角川文庫に収められていたのだが、「第三次」については新潮文庫に入っており、なんとなく角川に済まない気分があった。加えて、他の出版社は椎名さんの担当が男性の記者であるのに対し、角川は女性が続いてきたこともあって、昔のことをいろいろと思いだし、かつてのバカ旅の再現も面白いのではないかと考えて、この旅行と書物が企画された次第だという。

 「・・・最低予算でとにかく8人ぐらいで北海道に渡る。1週間から10日間で一回りするけれど、毎日のめしは自給自足。海と川の魚釣り班と山の山菜さがし。残ったものはそこらの道端にすわって、『物乞い』をする」(21ページ)というのがもともとのプランである。予定通りに8人の隊員を集め、2台の車に分乗して大洗からフェリーで北海道に向かうのだが、濃霧が北海道への乱入を阻む。ようやく上陸した北海道では…椎名さんはじめ隊員がこれまでに築いてきた人間関係がものを言って、「物乞い」の成果に目覚ましいものがある。このくらい豪華な「物乞い」ならば、やってみたいと思う読者もいるだろうが、すでに書いたように、これはあくまでも積年の努力の結果であって、一朝一夕に可能になるものではない。さらに言えば、椎名さんは「書き下ろし」のためだけでなく、他の連載原稿のための取材もこなしながら、北海道の各地に車を走らせている。

 「物乞い」の成果が上がりすぎて、なかなか[自給自足]とはいかないのだが、尾岱沼漁港で釣り糸を垂れるとギスカジカとクロガシラカレイが連れてまずは豊漁である。ところが、隊員の1人がドジを踏んでカラスに魚を食い荒らされてしまう。このあたり、これまでもあった話だが、それが繰り返されるところ、まだまだ経験が足りないというところであろうか。さらに挑戦したウトロ港から知床半島沿いに舟を進めての漁では高級魚アオゾイを大量に釣り上げる。余った魚はメンバーの1人が東京で経営する店に送り、「椎名誠が知床で釣りました」と黒板に書いたところ、あっという間に売り切れたという。どこまで本当のことかは、知る人だけが知っていることであろう(知床だからね)。

 ということで、比較的波乱のない北海道道中記であるが、椎名さんの外の『あやしい探検隊』ものや、その他のエッセーを思い出しながら読むと面白さが倍増するだけでなく、波乱がないだけにすらすらと読めるので、椎名ワールドへの入門書としても適当かもしれない。道中で撮影された写真が多数掲載されているのも毎度のことであるが、椎名さんが一段と年をとったという印象がしてしまうのが気になるところである(椎名さんとは1歳違いなので、ひょっとして他人の目には私も相当に老け込んで見えているのではないかと、そういうことまで考えてしまうのである)。 
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No title

こんにちは。私もあやしい探検隊大好きですが、北海道乱入は読んでません。 かなり前に椎名さんの講演会に行きましたが、
あがるので、チンタオビールを飲んでから出てきたそうです。
楽しいかったですよ

Re: No title

コメントを有難うごっざいました。『あやしい探検隊』シリーズでは特に最初の2冊が好きです。講演で上がらないためにチンタオビールをのむというところにこだわりが感じられますね。チンタオがドイツの支配下にあった時に造られた工場と製法が今でも続いているようです。わたしも英国の中華料理店に出かけると、だいたいチンタオビールを頼みます。変なところに共通点があるものです。
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