独立愚連隊西へ

8月4日(月)晴れ後曇り

 神保町シアターで「祝・喜寿! 加山雄三映画祭」の一環として上映されている『独立愚連隊西へ』を見る。1960年度の東宝映画。メガフォンをとっている岡本喜八監督の『独立愚連隊』の続編のような題名であるが、監督が同じで、日中戦争下の中国北方を舞台として、佐藤允が出演しているくらいしか共通点はない。舞台が中国であるから、「西へ」ということは「奥地へ」、「より危険な方角へ」ということを意味することになる。

 戦局が悪化し、日本軍は次第に点と線との支配から点だけの支配へと戦線を後退させているころ、ある隊が「玉砕」し、軍旗が行方不明となる。そこで軍の名誉をかけて捜索隊が派遣されることになる。しかし、その前途はきわめて危うい。軍に出入りしている怪人物の早川(中谷一郎)は、軍旗を見つけて持ち帰るためにはおそらく独立愚連隊の出番がくるだろうという。

 その独立愚連隊=左文字小隊は、手違いで戦死したことになっているが実は生きているという兵士たちの集まりで、左文字少尉(加山雄三)が戸山軍曹(佐藤允)の補佐を得て指揮している。小隊にはそろばん占いを得意とすると自称するが、仲間からは全く信頼されていない神谷一等兵など癖のありすぎる人物がそろっていて、上層部にとっては早く片付けたいお荷物なのだが、悪運強く生き延びている。新しい派遣先に向かう途中、川を渡ろうとして衣服を流されてしまった彼らは味方のトラックを襲って衣服を強奪して任地に到着するが、その悪事がばれて営倉に入れられる。任務と責任のなすりあいを続ける軍の指導部には軍旗を見つけ出し、取り戻す能力はないと見た早川は一計を案じて左文字小隊を救いだし、軍旗の捜索の任務に出発させる。

 左文字たちは軍の上層部とはそりが合わない一方で、敵であるはずの八路軍とはなぜか馬が合う。特に隊長の梁(フランキー堺)とは戸山軍曹の通訳のよろしきも手伝って、できるだけ全面対決を避けようとしあっている。小隊の中に敵に内通するものがいるかもしれず、さらに八路軍にいったん寝返った将校と従軍看護婦を一行に加える。物語はいよいよややこしくなる。

 ある特定の使命を達成するために少数精鋭が活躍するという戦争映画の筋書きに即してつくられているようで、アメリカ映画に見られるような周到な作戦計画はなく、出たとこ勝負の展開が続く。そのこととおそらくは関係して、敵は自分たちの内部にいるかもしれないという疑心暗鬼の展開がこの作品の特色である。というよりも、疲れ切ってしまった将兵には戦争の大義などなく、敵とか味方とかは一時的な関係にすぎなくなっているのかもしれない。

 暗くなりそうな話であるが、物語の展開はコミカルで、特に佐藤の個性的な表情が映画の雰囲気をなぜか明るくしている。戦闘・殺戮の場面を少なくしていることも手伝っているかもしれない。とはいうものの、物語の展開にかかわるから詳しくは述べないが、小隊から死者が出ることも避けられない成り行きである。とりあえず娯楽映画として楽しんでみることのできる作品ではあるが、その底には作者による別のメッセージを読み取ることができるかもしれない。

 平日の昼間の上映であったためであろうか、観客の大部分は高齢の男性であった。何か関心をもって映画を見に来るというよりも、時間を持て余してやってきているという雰囲気が感じられたのが残念である。この特集上映全体を通じて、どんな観客がどんな感想を持っていくのか、予測がつかないところがある。

 なお、登場するある中尉が旧制三高→京都大学を卒業したという話が出てきて、京都大学の東門近くの本屋という話題が飛び出すが、京大の東側は吉田山と吉田神社で、小規模な出入り口はあるが門というほど御大層なものは設けられていない。おそらく、戦前も同様だったと思われる。ある時代の京大関係者にとってなじみ深いナカニシヤ書店は旧制第三高等学校の東側(京都帝国大学から見れば東南)にあったとは言えるが、東門の近くという言い方はできない。どちらにしても正門の東側というべきである。
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失礼します。

初めてコメント致します。

『独立愚連隊』もそうですが、岡本喜八は集団よりも個人レベルでの意志と遂行を重視しているように感じます。
大映の『兵隊やくざ』でもそうですが、『独立愚連隊』タイプの作品に登場する主人公達は、体制的な軍隊より敵側である八路軍や満州の人々と密な関係になってしまう展開が散見されるのが興味深い所です。

ATG作品である『肉弾』はまさに岡本喜八の戦争映画の「極み」でしたが、反対に『日本のいちばん長い日』や『沖縄決戦』は職人監督的な面白さはあっても、喜八色は非常に薄いように感じました。
しかし、当時の東宝の戦争映画が円谷特撮を用いた大局的な作品ばかりな所をみると、『独立愚連隊』のようなタイプはむしろ異端なのでしょうか。

有り難う

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