エイヴリー・エイムズ『チーズ専門店④ ブルーベリー・チーズは大誤算』

7月27日(日)晴れ

 7月26日、エイヴリー・エイムズ『チーズ専門店④ ブルーベリー・チーズは大誤算』(原書房:コージーブックス)を読み終える。アメリカ(中西部?)の田舎町プロヴィデンスでチーズ&ワイン専門店を経営するシャーロット・べセットが物語の語り手であり、この町で起きたいくつかの事件を解決してきた素人探偵でもある。店の共同経営者であるマシューはシャーロットの従兄で、彼女の親友のメレディス・ヴァンスと結婚することになっている。店の従業員の1人であるティアンは町はずれのハーヴェスト・ムーン牧場を買い取り、そこで様々なイベントを行おうと計画している。マシューとメレディスの結婚式がその第1号になるはずである。マシューには前の妻のシルヴィとの間に双子の娘がいるが、シルヴィがこの町に戻ってきてブティックを開き、よりを戻そうと画策してきた。

 シャーロットの祖母のバーナデットはこの町の町長であるが、町の観光業の発展を目指して様々な企画を展開している。たとえば、動物の保護活動と提携したランニング大会の”ぶどうを踏もう〟の開催であり、さらに自分の主宰する劇団で『ハムレット』の上演を準備している。この小説の原題”To Brie or Not to Brie"が『ハムレット』のなかの有名な台詞のもじりであることはいうまでもない(Brieはチーズの一種だそうである)。物語を通じて、これらの行事の準備の様子が語られている。

 シャーロットにはジョーダンという恋人がいて、結婚の約束もしており、あとは結婚式の日取りを決めるというところまで来ているのだが、ジョーダンは証人保護プログラムのもとでこの町で暮らす人間であり、彼の妹であるジャッキーは暴力的な夫から逃れて、やはりこの町で暮らすことになった。

 プロヴィデンスの町で人気を博しているアイスクリーム・パーラーの<イグルー>の冷蔵室で男性の死体が発見される。殺されたのはジャッキーの元夫であるジャコモであり、彼は弟のヴィニーとともに少し前にこの町にやってきて、ジャッキーのことを心配している何人かの人々に警戒心を抱かせていたのである。店の経営者であるヒューゴ・ハンターは姿を消し、他にも何人かの容疑者が捜査線上に浮かぶが、みなシャーロットの身近な人物ばかりである。小さな町で、子ども時代からの顔見知りが多いのだから仕方のないことではあるが、シャーロットはいやいやながら、また町の警察署長であるアーソとぶつかり合いながら、捜査を進めていくことになる。TVの犯罪捜査ドラマで余計な知識を詰め込んだ従業員のレベッカが彼女を手伝ったり、足を引っ張ったりする。

 シャーロットは「ナンシー・ドルーにでもなったつもり?」(311ページ)と詰問されたりするが、確かにこの作品はグルメ、おしゃれ、ロマンスと少女探偵ナンシー・ドルーの世界が大人の女性の世界に移行したような内容満載である。「≪サウンド・オブ・ミュージック≫のマリアさながら」(138ページ)とか、「サンドラ・ブロックどころではない名女優だ」(309ページ)というような映画やTV番組への言及もしきりになされていて読む楽しみの多い書物に出来上がっている。田舎町を舞台としているわりに、牧場や農場の描写はあまりなく、その点ではナンシー・ドルーの世界からは遠い。田舎町の生活のいろいろな面が多彩に描き出されている一方で、ある登場人物の意外な素性が明らかになる場面はあるものの、謎解きの面白さは語り手の身の回りの出来事の複雑さに隠されてしまっているようにも思える。もっともその分、最後まで犯人が分からないということにもなるのであるが。

 グルメということになると、比較的凝った料理が多く登場するこの作品よりも、素材の良さが強調されることが多いモンタルバーノ警部物のほうが料理をうまそうに感じるのは私の勝手であろうか。警察官がほとんどいない、署長の母親が臨時の受付をするようなアメリカの田舎町の警察と、田舎であっても官僚機構の一端として機能しているイタリアの警察のどちらがいいかということまでも考えさせられた。

 事件は解決しても、ジョーダンはシャーロットにとって謎の男であり続けそうである。次回作では彼らの身辺にどのような事件が起きるのだろうか。
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