語学放浪記(37)

7月11日(金)晴れたり曇ったり、一時小雨がぱらつく。

 最近、出会った2つの事柄について感想と意見を書いておく。

 7月9日のラジオまいにちフランス語の時間で講師の大木充先生が「往年の名女優ジャンヌ・モローのような」という表現をされた。これはまずいでしょう‼ ジャンヌ・モローは86歳の今日も現役で、最近も出演作である『家族の灯り』が上映されていた(残念ながら物語が暗すぎてつまらなかった)。「往年の」ではなくて、「今なお元気な」というべきだろうと思う。

 若いころは語学の勉強を名目にして、映画を見るという人が少なくない。わたしもそうで、京都の日仏学館で上映されるフランス映画を都合がつくと必ず見に行ったものである。これは以前にも書いたはずだが、字幕が英語なので、英語の勉強にもなった。ジャン・ルノワールの『コルドリエ博士の遺言』(ジキルとハイドもの)とか、ロベルト・ロッセリーニの『ルイ14世の執権』のような日本未公開作を見る機会があったのはよかったが、同じルノワールの『恋多き女』を上映する際に、『エレーナと男たち』と現代の直訳で紹介したりするような不親切なところが玉に瑕であった。『ルイ14世』はイタリア語の会話にフランス語字幕だったので歯が立たなかったのを記憶している(これも以前に書いたのではないか)。

 さて、このように若いころは映画に親しんでいても、就職してしまうとなかなか時間が取れず、学生時代ほどに映画を見ることができなくなる。それでも都合をつけて映画を見に出かけたり、多少金銭的な余裕ができれば、ビデオやDVDを活用して映画に親しむという手もあるが、映画界の情報を手に入れるということになるとどうしても不利になる。大木先生の場合も、若いころはジャンヌ・モローの映画をよくご覧になったのであろうが、最近の彼女の動静についてはあまり情報を得ていないということではないか。

 1970年の大阪万博のフランス館でフランス映画の特集回顧上映がなされた際に来日したジャンヌ・モローに出会った、昔のアルバイト仲間の弟さんが、フランス語で話しかけたら、喜んで相手をしてくれて、サインをもらったという話をアルバイト仲間から聞かされてうらやましく思ったこともある。万年初級を脱出すべく発奮させるようなエピソードであったが、その後の努力が続かず、今に至っている。

 この記事を書くために調べてみたところ、私はジャンヌ・モローの出演作品をこれまで17本みていることが分かった。これは外国の女優としては多分、最高の本数で、日本の女優でも17本映画を見ているという人はいないのではないか。男優ではフランキー堺の出演作品を25本は見ているので、国内外の男優・女優を通じてトップというわけではないが、かなりよく見てきたといえるそうである。

 さて、映画の話ではなくて、語学の話である。本日、ある大規模な書店の語学書コーナーを覗いていて、ドイツ語の本よりも、イタリア語の本のほうが広いスペースをとっていることに気付いた。もちろん、この書店でたまたまそうなっているというだけのことかもしれないが、大学ではドイツ語を履修する学生のほうが、イタリア語を履修する学生よりも多いと思われるだけに、注目すべきことである。つまり生涯学習という見地からすると、イタリア語の人気がドイツ語に追いつき、追い越そうとしているようなのである。

 ドイツ語のほうがイタリア語よりも使用する人口は多いし、政治・経済の面から見てもドイツのほうがイタリアよりも重要な地位を占めている。今回のサッカーのW杯でもドイツは決勝に進もうとしている。確かにドイツ人には英語がよくできる人が多いし、ビジネス上の会話など、英語で事足りることが多いのであろう。実は私も、ドイツ人とは日本語か英語で話してきた。もっとも、それを言うならば、イタリア人とだって英語で会話してきた。

 イタリア語の魅力はどこにあるのか? イタリア語を勉強するのは、音楽、料理、観光、映画、ファッション…何が動機になるのだろうか。私の場合は、須賀敦子さんの本を読んだのが大きなきっかけになっていて、イタリアの小説をイタリア語で読みたいという気持ちが強い。実は英語でも、小説やエッセー、それから旅行記を読みたいという気持ちが強く、空港内の書店をうろうろすることがあった。そうすると、その言語による文学作品の優れた紹介者がいるかどうかが勝負になるような気もする。ドイツには伝統的に推理小説がみられず、イタリアにはあるというようなことも影響しているのかもしれない(最近は、ドイツでもネレ・ノイハウスのような作家が出てきたので、これからが楽しみである)。

 以上は、私の個人的な事情について述べてみたのだが、より一般的に視野を広げて考えてみても、英語以外の言語の学習においては、結局のところ、実用よりも趣味・教養のほうが強い動機になっているのではないか・・・と改めて考えている次第である(もちろん、そういう人のほうが多いのではないかということであって、すべての人がそうだというわけではない。)
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