ぼくたちの家族

6月19日(木)晴れたり曇ったり

 ヒューマントラストシネマ渋谷で、『ぼくたちの家族』、続いて『オー! ファーザー』を見る。スクリーンの位置や大きさに問題はあるが、座席を指定する際にチケット売り場でそれらの点について触れた説明をしてくれたのが有難かった。本日は最初に見た『ぼくたちの家族』について取り上げる。

 吉祥寺駅の近くであろうか、主婦の玲子が友人たちとおしゃべりをしている。友人の一人がしてきたばかりのハワイ旅行の話題で盛り上がっていたのだが、突然、関係のない話題を持ち出す。今、何を話していたんだっけ? 他人から教えられて初めて気づく。どうも最近、物忘れがひどくなってきている。

 かなり長い道のりの電車に乗って帰宅する。自宅は都心からかなり離れたところにある。帰ってすぐに座り込んでしまい、何もしないまま時間がたっているのに気付かない。小さな会社を経営している夫の克明が帰宅する。駅まで迎えに来てくれと頼んでおいたのに忘れてしまっていること、夕食の準備が出てきたいないことに機嫌を損ねる。それでも少しずつ夕食をこしらえているときに電話がある。長男の浩介から妻が妊娠したという知らせが入る。克明も喜んで、長男の嫁の一家との食事会を開こうと言い出す。

 夫婦にはもう一人、まだ大学でうろうろしている次男坊の俊平がいる。玲子はなぜか俊平のほうが心を許せるようである。3万円ばかり都合してほしいという彼の電話に、あれこれ思案した末に3万円をもって飯田橋駅の近くまで出かける。近頃物忘れがひどくなっているのだけれども、どうしたものだろうという彼女の相談に、俊平は齢のせいだよと軽く受け流す。

 浩介の妻の両親との食事会の席で、玲子は長男の嫁の名前を間違えるだけでなく、家族がバラバラになっているとその席にふさわしくない発言を繰り返す。心配した京三が、浩介とともに地域の病院に連れていき、検査の結果、脳腫瘍であと1週間が生死の山場だと告げられる。どこか内臓から転移したのではないかと検査が繰り返されるが、内臓に異変は認められない。なかなか連絡がつかなかった俊平がやってきておっとりと構えているので、京三や浩介と摩擦が起きる。

 父親の京三は事業の不振と家のローンを抱え、家にあまり金を入れなかったために、玲子はサラ金から300万円ほどの借金をしていた。母親の治療費の大部分を浩介が負担しなければならないが、浩介の妻は生まれてくる子どものために自分たちがこれまで積み上げてきた預金は取り崩せないと主張する。京三は浩介を保証人に1200万円を借りているために、自己破産することもできないという。家族のそれぞれの利害関係がぶつかり合う。病院の側では、回復の見込みのない病人はできれば自分の一番安らぐことのできる自宅で最期を迎えてほしいと言いたいらしい。

 脳の障害のために本音しか語らなくなった母親に引きずられるように、家族の一人一人が自分の本心を語り始める。浩介は母親を治療する手立てはないものかと、俊平と手分けしてセカンド・オピニオンを探し回る。探索の中で少しずつ家族が結びつきを取り戻し始める…。俊平は大学をやめて父親の会社で働くことも考え始める・・・

 家族といったが、京三と玲子の夫婦、それぞれが2人の息子の浩介と俊平との間に持つ親子、浩介と俊平の兄弟、玲子が浩介の嫁との間に持つ嫁姑など単純には整理できない様々な関係が入り乱れている。映画ではほとんど描かれていないが、嫁の実家との関係まで考えるとさらに複雑になる。浩介は引きこもりだったという過去をもっている。玲子は郊外に家をもつことが不満だったらしい。さらに、自分の周囲の家族に比べると自分たちの家族が変だという意識は、俊平にもあったようである。

 登場人物の主張は部分的にはそれぞれもっともである。問題はそれぞれの主張からどのように家族を再建するかである。登場人物たちの努力が家族の再建を軌道に乗せるか、あるいは崩壊をもたらすかという結末は、映画を実際に見てほしいが、おそらくエンド・マークが出た後からも新しい問題が生まれるだろうし、そうやって家族の歴史が刻まれていくのであろうと思った。家族を維持していくためにはなりふり構わない努力が必要だということを実感させられる。玲子が大事にしているサボテンなど、小道具が今一つ生かしきれないままであったのが残念であるが、これはむしろなりふりへのこだわりの一例として理解すべきなのかもしれない。
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