100分de名著『遠野物語』(3)

6月18日(水)晴れ後曇り

 NHKEテレの『100分de名著『遠野物語』』は第2回まで放送が終わり、今夜第3回の放送を聴くつもりであるが、その前に第2回の内容をまだ紹介していないので、大急ぎで取り上げておこうと思う。

 第2回は「神とつながる者たち」と題されている。昔の日本ではいたるところに神様がいると思われていた、「神様はどこか遠くではなく、生活のごく身近なところに存在していた」(40ページ)というところから話が始まる。日本の固有の進行について、あるいは柳田の固有信仰観を考えるときに、これは少し独断的な決めつけではないかと思う。確かに、神はいたるところにいた。あらゆるものが生命をもち、成長すると考えられた。しかし、その一方で遠くにいる神や、遠くからやってくる神が信じられていたことも否定できないのではないか。

 柳田が佐々木の語る昔話を「遠野物語」にまとめた時代は、社会の価値観の転換期であったが、伝統的な神々が生活習慣の中にまだ生き残っている姿を伝えていると番組は述べている。まず、遠野三山(早池峰、六角牛、石上)をめぐる神話的な伝説が語られる。山の神が女神であるから長く女人禁制が守られ、その一方で(柳田は触れていないが)男性にとって山に登ることは成人儀礼としての意味をもっていたという。神々が生活と結びついて存在していたのである。

 遠野三山の神々は女神であるが、一般の山の神は男性の姿で現れることが多く、異様な姿をしていると信じられていた。彼らは一方で恐ろしい存在であり、他方で豊かさに結びつくような両義的な存在と考えられていた。出産を司る場合もあり、下手をするとたたられて命をとられるかもしれない存在でもあった。

 『遠野物語』によって広く知られるようになったザシキワラシは家の繁栄と没落を支配する「神」として信仰されていた。『遠野物語』第18話には、山口の孫左衛門という旧家二は2人の童女の神がいると言い伝えられていたが、ある年、同じ村の男が路で2人の娘にである。どこからから来たかと問うと、山口の孫左衛門のところから来たといい、これから別の村の○○のところに行くと答える。間もなく孫左衛門の家ではキノコ中毒で、7歳の女の子1人を除く全員が死亡してしまった。童女が行き先として答えた○○は今でも立派に暮らしている豪農である。

 物語は第19話でキノコ中毒による事件が起きた経緯、第20話で事件の前兆となる使用人たちによる蛇殺しの説話(蛇は先祖の生まれ変わりであり、さらに殺された蛇は毒キノコになるという俗信がある)、第21話では孫左衛門が村の伝統信仰を捨てて、京都の伏見稲荷を信仰していたことが語られる。一方で主人のいうことを使用人が聞かなくなっている家の中の様子から、この家が内部から崩壊し始めていたことが語られ、その一方で中央の偉い神様よりも地元のざしきわらしの方が大切なのだということも示されている。

 このような生活をする人々の中で特に神秘的な力を見につけたり、その恩恵に浴したりする人々がいた。そのような人々は多くは現在であれば、精神的な病を抱えていると考えられるような人々であったが、不思議な力を山の神から授かったと考えられていた。また、山の中にはマヨイガという不思議な異界があると信じられ、そこにたどり着くことができる人物は幸運を手に入れることができると考えられていた。第63話は「少しく魯鈍」だと思われていた女がマヨイガにたどり着き、そこから何も持ち去らなかったが、彼女が洗濯をしていると椀が上流から流れてきて、その椀が富をもたらしたという話である。彼女は魯鈍であるために迷って異界のマヨイガにたどり着くことができ、しかも無欲であったので幸運をつかんだのである。「遠野は、こうしたいわゆる『魯鈍』な人、『馬鹿』と呼ばれた人、あるいは心の病をもつ人の神秘的な力を信じて、共生してきた社会だった」(60ページ)と番組では指摘されている。そして「神や先祖への畏敬の気持ちや、生活の中で不思議なものを感じ取る力を尊重し、心を病んだ人たちとの共生を実現してきた『遠野物語』にある世界は、私たちの現代社会が失っていったものを見つめるための、鏡にもなるのではないでしょうか」(同上)と結んでいる。

 番組中でも個人情報の問題などが議論されていたが、心を病んだ人々との共生をめぐっては、遠野が外部に対して閉ざされた地域ではないにせよ、村の人々がお互いを知り尽くしているだけでなく、欠点や問題を含めても仲間として団結するだけの相互理解をもっていたことが指摘されてよいだろう。番組が『遠野物語』からさらにどのような意味を読み取るか、今後の展開に注目することにしよう。
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