Let's 豪徳寺!

6月1日(日)晴れ

 5月31日、神保町シアターで「麗しき美少女伝説」の特集上映の中から『Let's 豪徳寺!』(1987、松竹、前田陽一監督)を見た。女ばかりで暮らす大富豪の邸宅でお手伝いのアルバイトをする女子大生が経験する恋愛騒動を描く喜劇である。豪徳寺といっても世田谷にある招き猫で有名な寺の名前でも、その付近の地名でもない。物語の中心になる大富豪一族の姓である。もっとも一族は世田谷区に住んでいるらしい。庄司陽子の同名漫画の映画化だそうであるが、原作は読んでいない。監督の前田陽一の作品を1970年代に多く観たことを思い出すのだが、それらに比べるとからっとした出来上がりで、純粋な喜劇性を感じることができる。現実ばなれのした要素を多く含むこの作品が監督の個性に合っているということであろうか。

 狛江百合、豪徳寺咲姫、大蔵利通は幼馴染で同じ大学に通っている。咲姫は大蔵に熱を挙げているが、大蔵は百合の方が好きで、百合はというと考古学の海老名助教授にあこがれている。咲姫は百合の行動を監視するために、彼女が自分の家のお手伝いとして働くことを提案する。彼女の家=豪徳寺家は祖母の香、母親の雅、長姉の美姫、次姉の舞姫、それに咲姫の5人が、お手伝いさんたちと暮らしており、商社のキャリア・ウーマンとして働いている美姫の夫がお手伝いさんの1人と不倫の末に離婚することになり、百合は出ていったお手伝いさんの後釜ということになるらしい。それでも大学に通い、都合によっては休み、立派な個室を与えられということで、かなり優雅なアルバイトである。

 「大奥様」と呼ばれる祖母の香はジグソー・パズルに熱中しており、これを仕上げたらこの世に未練はないと公言している。「奥様」と呼ばれる雅は園芸にいそしむ一方で、仲間を集めてオートバイで暴走している。舞姫は夜な夜な男を求めて遊び歩いているが、その職業は幼稚園の先生で、同僚の風祭という男性から思いがけず告白を受ける。一家がそろって同じテーブルで食事をするが、そのメニューは一人一人違う。それぞれの個性が突出しているが、いざという時には結構団結するのである。お手伝いの仕事に慣れてきた百合は何かと海老名助教授の世話を焼くが、離婚したばかりの彼には別れた妻以外に忘れられない女性がいるらしい。彼は大学をやめてカイロに旅立つと学生たちに宣言する。咲姫は大蔵とホテルに出かけるが、事態は思ったようには進まない。

 原作漫画のほんの一部だけを適当に切り取って映画化したもののようであるが、思い切って現実ばなれのした個性を際立たされている登場人物が、現実ばなれのした自由奔放な行動を繰り広げる。その一方で豪徳寺家の邸宅、3人が通う大学、舞姫と風祭の務める幼稚園など、セットではなく現実の場所にロケーションを行って撮影されている。そうした場面の現実感が物語を支えていることも否定できない。

 考古学というと思いだすのは、大学時代に空き地でソフトボールをやっていて大きなフライを打ち上げ、考古学の小林行雄先生の研究室の埴輪を壊したことである。埴輪といっても大したものではなかったらしく、研究室にいた女性に謝っただけで、古墳時代の研究家として有名な先生のご尊顔に接したことはなかったが、かなり広大なスペースが利用されていたことを覚えている。海老名助教授はエジプト考古学の研究家ということであるが、それらしい出土品や写真、コピー文書が並んでいなかったのは手抜きといわれても仕方のないところである。それに考古学をネタにした笑いがもっと工夫されてもよかったように思われる。

 本来であれば続編が作られてもよいはずの作品であるが、なぜかそれは実現しなかった。6月6日まで神保町シアターでの上映は続いているので、上映時間を調べて見に出かけてほしいと思う。他の作品についても同じことが言えるだろうとは思うが、この作品を見ることで改めて、映画の作られた時代を振り返ることができるし、それは無益な経験にはならないと思うからである。私の知る限りで、この映画の関係者のうち、前田監督、祖母役の南美江、、母親役の岸田今日子、古参のお手伝いさんを演じている初井言栄はこの世を去っている。この映画の喜劇性を深めている老練な演技者たちの冥福を改めて祈りたいと思う。 
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