語学放浪記(31)

5月11日(日)晴れ

 外国語の教育に力を入れるよりも、自動翻訳機械のようなものを開発すべきではないかという意見を聞いたことがある。それも一つの考え方で、翻訳をめぐる機械技術が向上すればいろいろ便利になることは多いと思うが、すべてが解決できるわけではない。地球上で話されている言語は6,000とか7,000とかいわれ、それぞれが相当数の語彙をもち、固有の文法体系を備えている。翻訳機械といっても、とりあえずは使用人口が多い言語を優先して開発されることになるだろうが、これは仕方のないことである。

 科学技術関係の用語などで意味がはっきり限定されているものは、他の言語で言い換えることは容易なはずである。だから特定の領域に限定された多言語の用語集や辞典は現在でもかなり出回っている。このような用語集を電子化したり、自動翻訳に利用することは既になされているはずである。(それ以前の問題として、国によっては、大学などでの理工系の授業は語彙の関係で英語でやっているところがあるそうである。)

 それから、日常の会話でこういう場合にはこういうのだと決まっているというような言い方についても、うるさいことは言わなければ他の言語に置き換えることは可能である。5月6日の「まいにちフランス語」入門編で
Comment dit-on: ≪ I-ta-da-ki-ma-su≫, en français?
On dit: ≪Bon appétit≫.               
(「いただきます」をフランス語でどういうんですか?――Bon appétit.といいます)という会話が出てきたが、「いただきます」と≪Bon appetit≫は厳密にいえば違う心持を表している。しかし、そんなうるさいことを言うのは現実的ではないということである。

 もっともこのような場合でも、気持ちを伝えるのはそれほど容易ではない。英語のtake careには「用心する」、「気をつける」という意味で、別れる際にTake care!(気を付けて)ということもある。昔、英国の地方都市のスーパーで買い物をしたら、レジのおばさんに「タイク!」といわれて、一瞬、何のことかと思ったのだが、Take care!というのをさらに簡単に言ったのである。おばさんにとってみると変な東洋人に対する最大限の好意の表明だったのであろう。(こちらの年齢を棚に上げて、心の中で思っていただけではあるが「おばさん」などと失礼な言い方をしてしまったことをお詫びしておく。)

 この話には続きがある。その後、日本で観光客を引率して京都の二条城に出かけたところ、背の高い外国人が鴨居に頭をぶつける場面に出会ったので、気を付けてくださいという意味でTake care!といったのだが、怪訝な顔をされた。どうもイントネーションがおかしかったようである。日本語でもそういうことがあるが、イントネーションによって意味が違ってくる表現というのはあるのである。それを翻訳機械がどの程度聞き分けるか、表現し分けるかというのも1つの問題であろう。
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