カミ『三銃士の息子』

5月5日(月)曇り

 朝の地震にはびっくりした。連休は人出が多くなるし、体調が十分とは言えないので、本日は外出せず。

 カミ『三銃士の息子(Le fils des trois mousquetaires)』(ハヤカワ・ミステリ)を読み終える。3月30日付の当ブログで同じ作者の『機械探偵クリク・ロボット』を取り上げた際に、この作品が間もなく刊行されるという情報を書いておいたが、これほど早く実現するとは思わなかった。うれしい誤算である。

 1680年、太陽王と呼ばれたルイ14世治下のフランス。ルイ13世時代からルイ14世の治世の初期にかけて活躍した三銃士たち(本来、アトス、ポルトス、アラミスの3人のはずだが、この作品ではなぜかダルタニャン、アトス、ポルトスになっている)はこの世を去り、物語の登場人物で存命中なのはダルタニャンの従者だったプランシェだけとなった。60歳を過ぎた彼はパリのトンバール通りで食料品の店を開き、その商才と人柄とで店は繁盛している。

 プランシェは彼の店を突然訪ねてきて、赤ん坊を彼に託して死んでいった女性との約束を守り、18歳を迎えて美しい娘に成長した昔の赤ん坊、ブランシュ=ミニョンヌに母親の遺言を知らせようとしている。18歳の誕生日を明日に控えたブランシュ=ミニョンヌは教会に出かけるが、そこで聖人を装った悪漢たちに誘拐されそうになったところを1人の勇敢な若者にすくわれる。その若者こそ「三銃士の息子」である。出会った瞬間から二人はお互いに惹かれあう。

 1658年に三銃士は国王のお供をしてベアルン地方を訪れた際に、若く、美しく、金持の未亡人たちとの間に契りを結び、こどもを儲けた。知らせを受けた三銃士は一心同体であるから、誰の息子かなどという言い争いをして仲間割れなどしない。そのこどもに「三銃士の息子」という名をつけて、20歳まで養育してほしいと頼んだ。こどもがパリに出てくれば自分たちの力で一人前の重視にするつもりだったのである。もし、3人が3人とも世を去っている場合はプランシェを頼れとも言い送った。こうして「三銃士の息子」はプランシェを訪ねてパリにやってきたのである。彼はダルタニャンのように知略に富み、アトスのように気品にあふれ、ポルトスのように背が高く、力持ちである。まさに「三銃士の息子」である(3人の父親のDNAを受け継いだ!? そんなことがあるのか!?)

 ブランシュ=ミニョンヌの母親が若いころにある貴族から辱めを受けたことを知り、「三銃士の息子」はその復讐を企てる。それだけでなく、ブランシュ=ミニョンヌの誘拐の企ての背後には、何者かの存在がありそうである。そしてその何者かというのは、ルイ14世の側近の1人であるトリスタン・ド・マカブルー公爵らしい。≪牢獄に邪魔者送ればこの世は天国≫と嘯く彼はこれまで多くの若い娘をその毒牙にかけ、今またブランシュ=ミニョンヌに狙いを定めて、配下の悪漢たちに誘拐を命じているのである。

 ブランシュ=ミニョンヌの母親をめぐる事件のカギを握るのは、スペインのキュウリモミータ(戯訳であろう)という闘牛士で、謎の解明を求めて、またブランシュ=ミニョンヌの安全を図るために「三銃士の息子」は彼女を連れてスペインへと向かうが、公爵の手下たちが執拗に追いかけてくる。ブランシュ=ミニョンヌは母親の無念を晴らすことができるのか。「三銃士の息子」は銃士になれるのか。彼と彼女にはどんな将来が待ち受けているのか。

 善悪の境界のはっきりした型どおりの勧善懲悪喜劇と見せかけて、人情の機微も垣間見せている。しかし何といっても物語を魅力的なものにしているのは、『機械探偵クリク・ロボット』について取り上げたときにも述べた、どこから湧いてくるのかわからないほどに奇想天外なカミの発想である。『三銃士の息子』と聞けば、3人か4人の若者が登場するという予想を裏切って、3人の性格を併せ持つ1人の活躍を描いている。その属性ばかりでなく、活躍ぶりも超人的である。最初に登場する場面で、稲妻を一刀両断に切り分ける。引き立て役として主人公の周囲にはきわめて個性的な従者たちが配されている。その他にも羊と犬の間に生まれた番羊のように科学を超越したフィクショナルな存在が登場したりする。作り話の連続かと思うと、時々歴史的な事実が顔を出すので油断できない。『寓話』の作者ラ・フォンテーヌが「特別出演」し、「鉄仮面」が重要な役割を演じる。煙突掃除夫ならぬ火山掃除夫という奇妙な職業の一団が姿を見せる。

 『機械探偵クリク・ロボット』と同じ高野優さんによる翻訳は、「訳者あとがき」によると、原文のダジャレを日本語に移すことができない場合には意味を優先させるなどの苦労があったそうだが、その分、日本語でダジャレができるところでは訳者自身がダジャレを付け加えたそうで、楽しみのほうが多かったような様子もうかがわれる。どうしても気になる向きは、フランス語で読むことを考えればよいのだろう。いや、フランス語で読んでみたいのだが、私の場合それはいつのことになるだろうか??
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