黒田龍之助『もっとにぎやかな外国語の世界』

4月17日(木)曇り

 黒田龍之助『もっとにぎやかな外国語の世界』(白水社 白水uブックス)を読み終える。2007年に「地球のカタチ」シリーズの1冊として刊行された『にぎやかな外国語の世界』を増補、改題したものである。『にぎやかな外国語の世界』も読んでいるはずで、部分的にではあるが、記憶がよみがえってきた。

 黒田さんは外国語が好きで、「日本にいながら、外国語のある環境を自分で作る。それも1つや2つじゃなくて、たくさんの外国語がにぎやかに遊んでいるような、楽しい空間」(11ページ)を作ってきたという。この書物はそういうにぎやかな外国語の世界への案内書である。「本書では、世界の言語を少しずつ覗いて、その多様性をみなさんと一緒に楽しみたいと考えている」(同上)という。「世界の言語」といっても、黒田さんの主な関心からヨーロッパの言語、それもスラヴ系の言語が話題として取り上げられていることが多い。それでも、タイ語で書かれたスナック菓子のパッケージ(14-16ページ)、ハングル(25-28ページ)、ナーガリー文字で書かれたインドの小学校の教科書(30ページ)、ヘブライ文字で書かれたイスラエルの小学校の教科書(32ページ)などが紹介されている。文字について書かれた部分を読むだけでもこの調子である。できるだけ多くの言語を紹介しようとしている努力に頭が下がる。

 目で見る文字だけでなく、耳で聞く音も言語によってまことに多様である。「世界の言葉にはいろいろな音がある。日本語にも英語にもない音さえ珍しくない。いや、ないのではなくて、日本語や英語では意味の宇別に必要ないが、他の言葉ではこれを区別しないと混乱しちゃう音ということだ。性格を目指すと、まどろっこしくなってしまう」(55ページ)。特に印象に残るのは次の箇所:「南アフリカにコサ語ということばがあるのだが、これには舌を打ち鳴らしたり、喉の奥からポコンとやったり、日本語や英語にない音がたくさんあって、とてもにぎやかだ。わたしは暇があると、外国で出版されたコサ語の教科書を開いて、その付属CDに耳を耳を傾ける。すると憧れのポコンが聞こえる。/世の中は広いなあ。いろんな音があるなあ。それが全部出せるわけじゃないけど、世の中にたくさんの音があることを感じるだけで、とても豊かな気持ちになれる」(63ページ)。

 数の数え方や、名前の名乗り方も言語によって違う。単数、複数のほかに、2が特別扱いされる言語もある。ヨーロッパでは古代の英雄とか王様、宗教の聖人の名前など人気が集まるという。なお、「英語でジョンという名前も、キリストの弟子のヨハネが起源だ」(100ページ)というのは不正確。英語の辞書でJohnを引いていればわかるが、ヨハネというのはよくある名前だったようで、キリストの弟子で福音書の著者と呼ばれるヨハネよりも前に、イエスに洗礼を授けたJohn the Baptistがいたことを忘れてはいけない。地名についても、何語では問う言うかを知っておかないと、空港で困ることがあるというのはあちこちを旅行して身に着けた知恵であろう。

 では、世界の言葉はいくつあるのか。正確なところはわからない。「世界の言葉は本当にいろいろである。多くの国で話している言語もあれば、小さな地域だけで話している言語もある。同じ国の中でいくつもの言語があることは珍しくない。・・・言葉の世界はとてもにぎやかだ。これでは、全部でいくつの言葉があるのか、数えられないのも当然ではないか。/外国語を知ることは、世界の多様性を知ること、私はそう考えている。一つの外国語を熱心に勉強しなければならないこともあるけれど、いろんな世界を少しずつ覗くjことだって、視野を広げるためにはとても大切だ」(144ページ)。

 さらにこの後で、ラテン語やギリシア語についても触れて、「古典語も含めて、外国語をにぎやかに楽しみたい」(171ページ)としめくくるが、黒田さんの主な関心は生きている言語にあり、その意義を深く知るためにも古典が必要だという意見ではないかと思われる。というのは古代の言語の解読というような問題には触れていないからである。

 多少の意見の違いはあり、自分よりも多くの言語について習得の努力を重ね実績を積み上げたことへの妬みもあるが、外国語をたくさん勉強することの楽しみを味わうというところでは黒田さんに共感するところが多い。これからも黒田さんの本を読み、また自分でも時間と能力の許す限りいろいろな言語を勉強していきたいと思った次第である。
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