ロベレ将軍

4月16日(晴れ)

 シネマヴェーラ渋谷の特集上映「ナチスと映画Ⅱ」からジャン・ルノワールがアメリカで撮った『自由への戦い』(This Land Is Mine, 1943)と、ロッセリーニの『ロベレ将軍』(Il Generale Della Rovere, 1959)を見る。ともに第二次世界大戦でナチス・ドイツに占領された地域の人々の暮らしと戦いを描いた作品であり、改めていろいろなことを考えさせられた。特に強い印象が残ったのは『ロベレ将軍』のほうである。

 1943年に連合軍にシチリアを占領されたイタリアは無条件降伏して、バドリオ政権が成立したが、ナチス・ドイツはムッソリーニを首班とする傀儡政権をイタリアに樹立してさらに抗戦をつづけていた。そのドイツ軍が支配するジェノヴァの町、エマヌエーレ・バルドーネという初老の男が、ゲシュタポに連行された男性の家族を相手に、何とか話をつけて釈放してもらうようにするといって金をだまし取ったり、知り合った人々に怪しげな宝石を売りつけたりして、稼いだ金を賭博に使って無一文になってはまた詐欺を働くという生活を続けている。

 悪いことは続かず、とうとうその正体がばれてゲシュタポに連行されるが、そのミュラー大佐は以前にバルドーネと会ったことがあり、彼の才能を利用することを思いつく。ジェノヴァの町ではファブリツィオという名の男性が率いるレジスタンスが活動していて、ドイツ軍にとって目障りな存在になっている。連合国軍はバドリオ政権のロベレ将軍を送り込んでレジスタンスをテコ入れしようとするのだが、この計画はドイツ軍の知るところとなり、将軍を捕虜にする計画が立てられていた。ところが手違いで将軍は移動中に射殺されてしまう。そこで、バルドーネをロベレ将軍の替え玉として刑務所に送り込み、レジスタンスについての情報を探り出そうというのである。

 ところが同じ刑務所に入れられた政治犯たちの言動や、ドイツ軍の残酷で手段を選ばないやり方を見るにつれて、さらには自分のもとに会いに来たが(当然のことながら)ミュラー大佐によって阻まれた本物の将軍の夫人からの手紙などによりバルドーネは次第に、その気持ちを変化させていく。詐欺師としてだれからも相手にされなくなってしまっていた人物が獄中では英雄となるのだろうか?

 実話に基づいた小説が原作だというが、本物のロベレ将軍が単身敵地に乗り込むのはどう考えても無謀に思われる。そういう「個人技」に頼るところがイタリアらしいということであろうか。レジスタンスがロベレの奪回計画を立てる場面が挿入されているのは、抵抗運動の実際を再現しているのであろうが、それがどうなったのかが語られていないので不満が残る。バルドーネを演じているのはロッセリーニとともにイタリアのネオレアリスモを代表する映画監督であったヴィットリオ・デ・シーカで、軍隊では大佐にまで昇進しながら身を持ち崩してしまった人間の、狡猾に立ち回るかと思えば、他人のために無私の献身をいとわないこともあるという様々な面を巧みに表現している。映画撮影中にロッセリーニとデ・シーカがどのように意思を疎通させていたのか、気になるところである。

 1959年にヴェネツィア国際映画祭に出品された際のフィルムを復元しており、この年にイタリアで公開されたものより6分ほど上映時間が長くなっているという。字幕を岡本太郎さんが担当されているので、信頼感がある。本日がこの作品の上映の最終日であるというのは残念だが、平日であるにもかかわらず、映画館のかなりの席が埋まっていた。また、機会があれば見てみたいと思う。
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