言語放浪記(24)

3月3日(月)朝のうちは雨が残っていたが、その後晴れ間が広がる

 以前にも書いたことであるが、小学校4年生の時に英語を勉強しはじめたので、その後60年近く英語との付き合いを続けている。それに比べると他の言語の勉強を始めたのは遅いし、勉強時間もずっと少なく、しかも人生のある時点において勉強を中断したりしたので、付き合いの程度は浅い。どちらにしても、もっと勉強しておけばと後悔することしきりである。ある言語を習得するには、一定期間集中的に勉強するのが効果的だといわれるが、学校の授業の枠内で勉強する場合、他の教科・科目も勉強しながら外国語も学ぶことになるので、それだけに依存して上達をはかることの効果は限られている。

 現在、NHKのラジオ放送でフランス語とイタリア語の時間を聴いている。それぞれのテキストの巻末に聴取者(読者)の声が掲載されているが、長年勉強し続けているがなかなか上達しないという感想を述べているものが少なくない。しかし、番組の放送時間は大学での授業時間に比べてかなり短い。放送を聴くだけで外国語の上達をはかるというのも虫がよすぎる。フランス語については語学学校に習いに通ったことがあるが、2学期でやめてしまったので十分な効果が得られなかった。英語についても会話教室に通ったが、これまた1学期で他の用事が出来て辞めてしまったのでそれほどの上達はしなかった。一定期間、集中的にというのとはどちらも程遠い学習の仕方である。

 大学入試センターの統計によると、センター試験の受験生のうち、外国語のなかで英語を受験するものが50万人くらい、中国語が400人くらい、韓国語が150人から200人くらい、フランス語がそれよりも少し少なく、ドイツ語はさらに少なくて100人を少し超えるくらいだそうである。この数字でわかるように日本の中学・高校生はほとんどが外国語として英語を勉強している。中には高校時代に第二外国語を勉強する例もあるし、課外活動で英語以外の言語を勉強する例もあるとはいうものの、たいていの場合、大学に入って初めて英語以外の外国語を勉強することになる。センター試験ができる前もそうだったし、その時代の新入生として私も大学に入ってはじめて第二外国語としてドイツ語を勉強することになった。その頃は、現在に比べて履修する外国語の幅が狭かった。つまりフランス語かドイツ語かという選択しかなかった。中国語とロシア語はわたしの所属する学部の場合、追加単位でしかなかったのである。韓国語とかスペイン語は当時の教養部では開設されていなかった。

 しかし世界には数え方にもよるが、5,000から7,000の言語があるとされることを考えると、どうも選択の幅が狭すぎる。外国語の選択を迫る前に、世界の言語状況についての大まかな見通しを知らせる必要がありそうである。(本日のフジテレビ『特ダネ』で、菊川怜さんだったかが、「インド語」ということを言っていたようだが、インドの言語状況はきわめて複雑で、20以上の「公用語」があることくらいは知っておいてほしいと思う。) 江戸時代に前野良沢がオランダ語の書物を見て、まったく理解できない文字で書かれているが、人間の書いたものなのだから分からない訳はないだろうと思ってオランダ語の勉強を始めたという話がある。そういう闘志も外国語の勉強には必要な場合がある。若いうちに未知のちょっとやそっとでは理解できそうもない文字と言語とに出会うのも悪いことではない。だから、小学校から高校までの国語や英語(社会科でもいい)の時間のなかで、世界の言語について(古代の言語や未解読の言語についても)ふれる単元を設けてもいいのではないかと考えている。

 大学で第二外国語としてある言語を勉強する場合、既に述べた理由によってその上達はかなり限定的なものである。外国語を勉強する理由として実用的な理由と教養的な理由とがあり(その他に言語学者になるというような学術的な理由もあるだろうが、これは例外的なものとして省くことにする)、学習者と第3者は外国語の実用的な側面に期待を寄せる傾向があるが、大学の学習だけで実用的なレヴェルの外国語を習得するのは無理である(大学の授業以外の場所での学習も含めて個人で努力する必要がある)。だからこそ、選択の幅を広げ、初歩的なものでもいいから学習者の好奇心に応えていくことの方が望ましいのではなかろうか。

 すべての学生に第二外国語を課すというやり方をやめて、やる気のある学生だけに徹底的に学ばせていくというやり方の方が実効性が大きいように思うが、それが難しいというのであれば、大多数の学生に向けては、外国の文化の紹介を主眼とする楽しい授業を開設していくというのが当面の打開策として考えられるのではなかろうか。たとえばイタリア語の授業であれば美術系、音楽系、料理系、スポーツ系、映画系などのコースを設けて授業の内容を構成してみてはどうかということである。 
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はじめまして

ブログを拝読いたしました.私も入試はドイツ語で受験した一人です.当時は英語,仏語,独語からの選択だったように思います.30年以上の空白の後,最近再びNHKのラジオ講座のドイツ語を聞いております.たんめんさんも英語,仏語をNHKで学ばれていると知り励みになりました.

Re: はじめまして

コメントを有難うございます。貴兄のブログ、時々拝読、理科系の記事は苦手なのですが、それでもできるだけ食いついていくつもりです。ミュンヒハウゼン男爵の冒険は翻訳を何度か読みましたし、映画『バロン』を観たりしたので、懐かしく思いました。語学は集中的に学習する方がいいというようなことを書きながら、興味が拡散する自分の癖を止めることができず、4月からは15年ぶりにドイツ語も勉強しなおそうかと考えております。今後ともよろしくお付き合いください。
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