はじまりは5つ星ホテルから

2月13日(木)曇り

 渋谷BUNKAMURAル・シネマ1でマリア・トーレ・トニャッツィ監督の『はじまりは5つ星ホテルから」を見る。イタリア映画で、字幕を担当している岡本太郎さんはラジオのまいにちイタリア語・応用編で何度かイタリア映画を紹介する特集の講師をされている。もっとも、映画のなかの実際の会話ではフランス語も英語も使われていた。

 ヒロインのイレーネは5つ星ホテルの"覆面調査員"である。私生活では40歳の独身、家庭も子どももなし。仕事では豪華な部屋に泊まり、一流の食事を楽しんでいるが、アパートはガラガラ、冷凍食品を食べている。元婚約者である親友はいるのだが、彼は別の女性を妊娠させて今後の身の振り方を考えている。ベルリンのホテルで知り合った独身女性の文化人類学者と意気投合し、翌日食事を共にすることを約束するのだが、翌朝彼女が急死したことを知り、人生について考え直しはじめる。

 人生は落丁の多い本に似ていると芥川龍之介はいった。この映画に登場する人物は主人公を含めてどこか大きな欠点を抱えていたり、ものの見方に死角があるように思われる。したがって失敗も目立つ(その代わり、失敗をそれほど気にしないところがあって、そこがイタリア的なのかもしれない)。独身のヒロインは結婚して2人の子どものいる姉妹に老後の面倒を見てもらおうと思い、姉妹が死んだら姪たちを頼ろうとするが、果たしてうまくいくだろうか。姉妹もその家族も問題だらけである。

 物語に大きな起伏はなく、むしろ調査員としての活動と日常生活のなかでの問題を一つ一つ取り上げていく展開になっている。ヒロインと周囲の人間たちはさまざまなトラブルを起こし、それを何となく(時間の流れのなかで)克服している。だから、映画の展開が舞台になっているホテルの様子を眺めることを邪魔していないのである。当方、5つ星ホテルに泊まったことはなく、テレビの海外旅行の番組でお目にかかるだけであるから、その意味では眼を楽しませてもらえる。そのうえ、大都市と観光地のホテルの配合が絶妙に思われる。

 それでも、ゆっくりホテルでの朝食や夜の時間を楽しめずに、いちいちサーヴィスを点検しているのは心が休まらないだろうなぁとヒロインに同情してしまうところがある。安いホテルに泊まってものんびり過ごせる方がいいと思うのは、私が貧乏性だからであろうか。そういう意味では映画の幕切れはヒロインへのいたわりと解釈できる(どういう結末になっているのかは、見てのお楽しみである)。
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