少女は自転車にのって

2月3日(月)晴れ、温暖

 岩波ホールでサウジアラビア映画『少女は自転車にのって』を見る。岩波ホールは入場料金が高いのだが、現在の仮住まいから地理的に近く、交通費を考えると割安になるかもしれないという思案もあったが、この作品、高く評価する意見をあちこちで眼にしていたので遅ればせながら見に出かけた次第。

 サウジアラビアの少女ワジダは一人娘で、男の子が欲しい父親と祖母はどうも彼女の母親以外にもう一人の妻を欲しがっているらしい。そういう大人たちの世界を知ってか、知らずにか、ワジダは近所の同年輩の男の子であるアブダラと自転車競走がしたくてたまらない。しかし母親は男の子と遊ぶことにも、自転車を買うことにもいい顔をしない。家庭でも、学校でもワジダは女性がしてはいけないという「決まり」にぶつかっている。しかし、彼女にいろいろな「決まり」を守らせようとする学校の校長先生(女性である)は自分の家にやってきたボーイフレンドを父親には「泥棒が入った」と言い訳しているらしいと生徒たちは噂している。

 ある日、きれいな緑色の自転車を見て、どうしても欲しくなったワジダは、自分で金をためて買おうとする。しかし、自転車代の800リヤルにはなかなか届かない。そんなときに、学校でコーランの暗誦コンテストが行われることになった。優勝賞金は1000リヤル。ワジダは「心がけを入れ替えて」宗教クラブに入部、コンテストに出場して1000リヤルの獲得を目指す…。

 初めて見るサウジアラビア映画である。イスラム教の国ではこれまでイランの映画がかなりの数日本に紹介されてきたし、その中には『オフサイド・ガールズ』のようにこの作品と同様、女性が男性と同じように社会のなかで行動できない不合理が描かれている作品もあった。とはいうものの、イランとサウジアラビアでは文化の違いがあるし(違っているということであって、どちらが優れているとかそういう問題ではない)、この作品はハイファ・アル=マンスール監督が女性としての視点からつくったという点で独自のものである。特に主人公のワジダを演じている少女の表情が自然で、これは演出者が女性だから引き出せた表情ではないかと思われる。さらに言えば、ロング・ショットの多い画面構成が物語の内容に合致しているように思われる。

 ワジダが自転車を買って乗り回したいというのは、見方によってはわがままであるが、男性のわがままは結構認められるのに、女性のわがままは抑圧されるという社会においては、女性がわがままを通そうとすることも社会的な意味を持つ可能性がある。サウジの人々の生活はまだまだコーランとイスラムの戒律によって規制されているようであるが、ある見方からすればわがままに過ぎないような素朴な疑問の蓄積が、そのような規制の根拠を相対化していくかもしれない。イスラムがきわめて多くの人々の導きの原理となっているのは偉大なことではあるが、どんな偉大な事柄にも負の側面はあるし、その点を認めて改善を図ることも必要であろう。そうした変革の可能性を感じさせる映画である。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

tangmianlaoren

Author:tangmianlaoren
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR