シャレード

11月28日(木)曇り後晴れ

 昨日の当ブログでも書いたが、11月25日(月)、NHKBSプレミアムでスタンリー・ド―ネン監督、オードリー・へプバーン主演の『シャレード』(Charade, 1963)を見た。途中で放送画面が乱れたりしたが、久しぶりに見て、この映画についての記憶を修正するのには十分であった。

 20代の前半に一度だけアルバイトで一緒に仕事をした青年が、自分にとってのベスト・ワンの映画は『シャレード』だといっていたのをなぜか今だに記憶している。そういう映画の見方もあるのだと教えられたのである。『映画評論』的な見方ではなく、『スクリーン』的な見方とでもいおうか。そんなことを思い出しながら、今回は、映画について論評するよりも、映画に関連した余談を並べてみようと思う。

 ヒロインのレジーナはぜいたくな暮らしをしているが、なにひとつ本当の姿が見えない夫と離婚しようと思っている。決心を固めたスキー場からパリの自宅に戻ると、家財道具はすべて持ち去られている。そこへ現れた司法警察の警部から夫は列車から突き落とされて殺されたと知らされる。スキー場であった男性であるピーターが力になろうと言っていくる一方で、夫の葬儀には3人の怪しげな男が姿を見せる。アメリカ大使館から呼び出されたレジーナは死んだ夫が第二次世界大戦中に情報活動に携わり、その過程で4人の仲間と25万ドルの金塊を横領し、戦争中のどさくさで独り占めして逃げていたのだと知る。葬儀の席に現れた3人の男はその時の仲間であったのである。25万ドルはどこに隠されているのか、レジーナは謎と恐怖の中を切り抜けなければならない。頼りになるはずのピーターは名前や境遇を二転三転させるし、3人の男たちとも連絡を持っているようでもある。25万ドルの謎とレジーナとピーターのロマンスはどのような展開を遂げるのか。

 「シャレード」はジェスチャーによってあることばを思い出させるゲームである。登場人物の何人かは自分の正体を隠しながらレジーナに接している。そのことが彼女の不安を増幅させているのであるが、映画にゲーム性を与えてもいる。なお、レジーナはラテン語で「女王」を意味する。

 この映画を魅力的にしているのはジヴァンシ―がデザインしたオードリー・へプバーンの衣装と、その衣装を身につけた彼女が動き回るパリの市街地の描写であり、それに配役の妙が加わる。どちらかというと年齢が離れた男優を相手にすることが多いオードリーにとってケーリー・グラントはもっともふさわしい共演者であるし、ウォルター・マッソー、ジェームズ・コバーン、ジョージ・ケネディ、ネッド・グラスと一癖も二癖もある男優陣が脇を固めていることも見逃せない。さらにヘンリー・マンシー二の音楽も効果的である。

 ところで、この作品のあとにオードリーは『マイ・フェア・レディ』(1964)に出演しているが、その際の共演者であったレックス・ハリソンが主演した『三人の女性への招待状』(The Honey Pot, 1967)という映画があり、この中でハリソンが演じているフォックスが執事に雇ったマクフリーに、自分はこれから過去に付き合っていた3人の女性を招待するが、これは一種の「シャラード」であるという。最近では「シャレード」という発音が一般的になったが、昔は「シャラード」とフランス語のままに呼ぶ方が一般的だったのである。ヴェネツィアが舞台になっており、エリザベス時代の英国の劇作家ベン・ジョンソンの戯曲『ヴォルポーネ』が下敷きになっている。3人の女性を演じているのがスーザン・ヘイワード、キャプシーヌ、エディ・アダムズ。執事をクリフ・ロバートソンが演じ、スーザン・ヘイワードの秘書をマギー・スミスが演じていた。この後、『まごころを君に(アルジャーノンに花束を)』でオスカーをとることになるクリフ・ロバートソン、『ミス・ブロディの青春』でこれもオスカーをとるマギー・スミスという2人の上り坂の俳優の演技が印象に残った(アカデミー主演賞をとった=とることになる俳優が4人出演している映画はあまりないのではないか)。また、モデル上がりのキャプシーヌはオードリーの親友の一人であった。

 もう一つ『シャレード』という映画に絡んで思い出すのは、スタンリー・ド―ネンがこの後『アラベスク』(1966)をいう映画を作っており、こちらもロマンスがらみのスパイ映画でグレゴリー・ペックとソフィア・ローレンが主演していた。1960年代にエリザベス・テイラー、オードリー・へプバーン、ソフィア・ローレンが100万ドル女優として競い合っていた。この3人が共演していたかもしれない映画があったという話を最後に書いておこう。

 オードリー・へプバーンは『ローマの休日』(1953)で脚光を浴びる前に英国で何本かの映画に出演しているが、その中にイーリング・コメディの傑作に数えられる『ラヴェンダー・ヒル・モッブ』という作品がある。この作品に主演していたアレック・ギネスはオードリーの可能性に着目し、当時企画中だった『クォ・ヴァディス』のリジア役に彼女を推薦したのだが、実現せず、結局この役はデボラ・カーが演じることになった。デボラ・カーは美人で演技の幅も広かったが、リジア役にはそれほど演技力は要求されないと思うし、年齢的にいっても、持ち味からいってもデボラ・カーよりもオードリーの方が適役ではなかったか。なお主人公のマーカス・ヴィシニウスはロバート・テイラーが演じたが、もともとグレゴリー・ペックが予定されていたという。『ローマの休日』の2年前にペックとオードリーが共演していたかもしれないというのも仮定法過去完了の問題として面白い。さらに、出来上がった『クォ・ヴァディス』では女奴隷の役でエリザベス・テイラーがカメオ出演し、これも女奴隷の役でソフィア・ローレンがエキストラとして姿を見せていたそうである。もし、デボラ・カーではなくオードリーがリジアを演じていれば、映画の歴史が変わっていたかもしれない・・・と思う。
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