語学放浪記(18)

10月30日(水)晴れ後曇り

 本日の毎日新聞朝刊「万能川柳」の秀逸に選ばれていた横浜市在住のワトルさんの句:
 原爆は化学兵器じゃないのかね
 うーん、原爆は化学じゃなくて物理兵器というべきではなかろうか。化学兵器よりも物理兵器の方がよほどたちが悪い。
 それは高校時代に化学よりも物理の成績が悪かったから言っているんじゃないだろうね。

 さて、本題に入って今朝のNHKまいにちイタリア語の時間は、10月23日放送分の再放送であったが、その終わり頃に番組パートナーのヴァレンティーナ・ポンピーりさんがRoma non fu fatta in un giorno. と口にしたのが聞き取れた。

 「ローマは一日にしてならず」と訳されるこのことわざ、中世フランスで言いだされたものが、その後その他の言語圏にも広がったものだそうである。現代フランス語ではRome ne s'est pas faite en un jour.というようである。ヨーロッパの言語にはローマにかかわることわざが多い。やはり「永遠の都」だからであろうか。Tutte le strade portano a Roma. は「すべての道はローマに通ず」。フランス語では、Tous les chemins mènent à Rome. 同じくフランス語でÀ Rome il faut vivre comme à Rome.は「郷に入っては郷に従え」である。イタリア語についてはそういう言い方を見つけられなかった。あるいはそうは言わないのだろうか。

 以前にその一部を紹介したことがある『ほんの話』(現代教養文庫、1980)の著者白上謙一はローマの遺跡を見て「イタリーはまだ戦災から立ち直っておらんのー」といった日本の代議士の話を書きとめ、おそらくフィクションであろうと注記している。そのあとに書かれていることが大事である。「しかし、同じ廃墟に立って、いつの日か巨大なローマ帝国が亡びていったあとの歴史を書こうと決心した」(252ページ)ギボンの決意がシュリーマンの決意と並んで称えられているからである。ローマについてのいくつかのことわざが欧米人の教養の一部を支えているに違いないと推測することもできる。

 さて、ある言語をどの程度勉強し、なじんできたかを知る目印として、ことわざをその言語でいくつ言えるかというのはかなり有効ではないかと思っている。ただし、他の勉強をそっちのけにしてことわざだけを記憶する場合もあるから、万能とは言い難い。特にラテン語のような古典語の場合、その言語の勉強をしなくても、他の勉強のついでにラテン語のことわざを覚える(デカルトに関連してCogito ergo sum.とかホッブズに関連してBellum omnium contra omnes.とか)から、実力以上にことわざを知っていることは起こりうる。

 そういえば、まだ10代のころに渡辺紳一郎の『西洋古典語典』という雑学書を父親の書架から持ち出して読んでいた。これはことわざというよりも名文句を集めた本で、今でもこの本の中に出てくる語句のかなりの部分を思い出すことができる。その結果として語学の実力以上に名文句を知っているということはあるかもしれない。なお、この本には「すべての道はローマに通ず」はセルバンテスの『ドン・キホーテ』の中に出てくる言葉であると書かれていたと記憶するが、なかなか確認することができないままでいる。

 夜、寝つかれないときなど英語のことわざを20思い出そうとしてみることにしている。20思い出す前に眠ってしまうことが多いが、20思い出しても眠れないときは、ラテン語のことわざを思い出す。実は英語の次に多くことわざを思い出せるのはラテン語なのである。それでも20のことわざを思い出すことはできないから、20というのは目印としてはかなり有効なのだろうと思う。フランス語のことわざで思い出すことができるのはほんの少し、ドイツ語は皆無。困ったことである。

 フランス語のことわざについては旺文社の『プチ・ロワイヤル仏和辞典』、イタリア語のことわざについては白水社の『プリーモ伊和辞典』と張あさ子『イタリア語で手帳をつけてみる』(ベレ出版、2010)を参考にした。張さんの本にはRoma non è stata fatta in un giorno.と少し変わった形が示されている。英語のRome was not built in a day.についてもwasn't とかin one dayとするいい方もあり、どれが正しいというものでもないだろう。ただし、ここでの表記に誤りがあればこちらの責任である。
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