椎名誠『さらば新宿赤マント』

10月29日(火)雨後曇り

 椎名誠『さらば新宿赤マント』(文藝春秋)を読み終える。『週刊文春』に連載されてきたエッセイをまとめたシリーズの最終冊、1990年から続いてきた『赤マント』シリーズ、この3月に終止符を打った。このところ椎名さんの本は文庫本になってから買うようにしてきたのだが、これはシリーズ最終冊だというので特別に購入したのである。シリーズの前作『ガス燈酒場によろしく』はまだ文庫本になっていないので、購入しておらず、1作追いぬいて読み終えたことになる。

 最後だからというわけではないのだろうが、短いエッセイをまとめた本としてはかなりの厚さである。もう少し連載を延ばして2冊にした方がよかったのではないかと思わないでもない。その方が長くシリーズを楽しむことができたはずである・・・。それはさておき、1つ1つのエッセイについていちいち感想を書いていくと、きりがなくなりそうなので、特に印象に残ったことを選んで書いておく。

 「大腸探検隊」は椎名さん夫妻が人間ドックを受けた次第を書いたもの。白金の北里研究所病院というのは広尾の方にある病院らしい。宝くじで10万円くらい当たったら、少し豪華な人間ドックを受けてみようと思っていて、そういうことが実現したらこの病院で人間ドックを受診するのも悪くなさそうである。

 「話は転々三遊間」で出版者系週刊誌がセ・リーグ、新聞社系週刊誌がパ・リーグと書いているのは面白い比喩だが、歴史的にみれば新聞社系週刊誌のほうが古い。『週刊サンケイ』が『SPA!』になったことに触れているが、昔、東京新聞が『週刊東京』という週刊誌を出していたのを椎名さんはご存知ないようである。わたし歯椎名さんよりも1歳年下のはずだが、椎名さんが記憶していないというのは、この雑誌よほど売れていなかったということであろうか。

 「距離の暴虐」はオーストラリアの歴史を語る時によく使われる言葉であるが、椎名さんにはオーストラリアが似合うところがある。若者が海外旅行に出かけなくなったことを嘆く口ぶりが練達の旅行者らしい実感に満ちている。「目的を持てば旅立てる国にいるのにこれはもったいない話である」(121ページ)。まだまだ日本は相対的に豊かであることをどう受け止めるかという問いであろう。

 電気製品の取扱説明書の難解さについて語っている「リモコンの秘密主義に負けた」には同感(「問題なトリセツ」でも同じテーマが繰り返されている)。「馬耳東風」では『東京スポーツ』に「けんかえれじい」という連載を書いていることが紹介されているが、鈴木隆原作の小説、この小説の鈴木清順監督による映画化の両方を知っているので、同じ題名を掲げることには抵抗を感じる。体力の衰えについて記した「店じまいの準備」には同感の部分が少なくなかった。しかし、戦線を縮小するのはなかなか大変だ。「中国のヘンな底力」は実際に出かけた人でないと感じられない印象が語られている。

 最終回「地球の平和を守るため」は半分くらいは照れながらの幕引きではないかと思うが、椎名さんの人生の幕が下ろされた訳ではない。衰えを実感しているのはよくわかるが、まだまだ余力があることも感じられるので、これまでの20年を超える連載にご苦労さまと言いながらも、これからのまた新しい仕事への期待も託しておきたい。
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