麗しのサブリナ

10月17日(木)晴れ後曇り

 横浜シネマ・ベティで10時から『麗しのサブリナ』、その後14:15から『ケセル大王』を観た。本日は、『麗しのサブリナ』(Sabrina)について取り上げる。ビリー・ワイルダー監督が1954年に製作・監督した作品でサミュエル・A・テイラーの舞台劇に基づいて、ワイルダー、テイラー、アーネスト・レーマンの3人が脚色した。

 10月10日の当ブログで取り上げた『パリの恋人』に続くオードリー・へプバーンの特集の中での上映。『ローマの休日』で一躍脚光を浴びて、アカデミー主演女優賞をとった直後のオードリーの出演作。日本での反応はあまりよくなかったが、アメリカでの評価は『ローマの休日』よりもよくできているというものが少なくないようである。脚本と演出は周到に組み立てられていて、物語のあちこちにその後の展開の伏線が張り巡らされている。それにハンフリー・ボガート、オードリー・へプバーン、ウィリアム・ホールデンという3人の主演者の脇を固める助演陣がなかなかの顔ぶれである。

 ロング・アイルランドに邸宅を構える富豪のララビー一族には仕事一筋のライナスと、プレイボーイのデーヴィッドの2人の兄弟がいる。邸宅には多くの召使が雇われているが、その1人である運転手のトマス・フェアチャイルドにはサブリナという娘がいて、彼女はデーヴィッドに恋をしている。もともとイギリスからやってきたトーマスは身分違いの恋には反対で、彼女をパリの料理学校に留学させようとする。デーヴィッドが自分を無視していることに腹を立てたサブリナはガレージの中の自動車全部のエンジンをかけて排気ガスで自殺を図るが、ライナスに救われる。

 失意の中、パリに旅立ったサブリナは料理学校でサン・フォントネル男爵という老人に会っていろいろなことを教えられ、見違えるようなレディーになって帰国する。ララビー一族はプラスティックの開発を進めており、その原料となるサトウキビの生産に大きなシェアをもつタイソン家の令嬢エリザベスとデーヴィッドを結婚させることを計画する。デーヴィッドは駅でサブリナを見かけて彼女を車に乗せて家まで送りつけ、そこで初めて彼女が運転手の娘であったことに気づく。そしてその夜に邸宅で開かれるパーティーに彼女を招待する。

 パーティーではエリザベスの相手をしていたデーヴィッドであるが、サブリナが登場して気もそぞろとなる。デーヴィッドとサブリナの仲は兄弟の父母の知るところとなり、反対を受けるが、デーヴィッドは意に介さず、ライナスも弟をかばう。ところがサブリナのところにシャンパンを運ぼうとして尻ポケットにグラスを隠していたことを忘れて腰かけたデーヴィッドは尻を怪我してしまう。サブリナの待つテニスコートにはライナスが向かう。

 身動きができないデーヴィッドに替わって、ライナスがサブリナをヨットに誘う。サブリナは仕事に没頭して退屈で怖い人間だと思っていたライナスが見かけによらず親切で優しい人間であると思うようになり、さらに自分の気持ちが次第にデーヴィッドから離れて、ライナスに向かっていくことに気づいて苦しむ。

 そう書いてしまうと深刻な恋愛ドラマと誤解されるかもしれないが、デーヴィッドのけがの件でもわかるとおり、かなりふざけた部分の多いロマンティック・コメディ―である。身分制度の厳しいヨーロッパとデモクラシーの国であるはずのアメリカという紋切り型の対比が、ロング・アイランドの富豪の一族の貴族的な性格を描くことで論駁される。アメリカにも階級や身分の違いはあることを指摘しておいて、さらにその壁を乗り越えて成功するロマンスを描く――というところに、オーストリア生まれで、アメリカに定住したビリー・ワイルダーなりの社会的な主張が見られる。『パリの恋人』でも触れたが、目立たなかった女の子が目を見張るような美女に変貌するというストーリーはオードリーの主演作によく見られるパターンであるが、ここではそれに加えて変貌した彼女が今度は男を見る目を変化させていくという二段構えの構成になっているのが特徴的である。

 クレジット・タイトル順に出演者を観ていくと、ハンフリー・ボガートはそういえば、この後『アフリカの女王』でキャサリン・へプバーンと共演し、両へプバーンと共演しているなぁ、この2人と共演した男優は他に誰がいるだろうかなどと、考えていた。ライナスがどこからサブリナに惹かれていくのか・・・というのが今ひとつわからないのだが、分からないのもこの作品の面白さかもしれない。まだ若かったオードリー・へプバーンがボガートと一緒にいる場面で、時として妖艶に見える表情をするのが印象的であった。そういう表情を見かけた記憶はないが、あるいは彼女の映画を見た時のわたしの年齢が若かったから見逃していたということだけかもしれない。ウィリアム・ホールデンの紋切り型にも見えるプレイボーイ演技がこの作品の雰囲気に合っている。彼がアカデミー主演男優賞を得たのがワイルダー監督の『第十七捕虜収容所』であったことからも、監督との相性の良さが感じられる。

 以下、わき役について一言、二言:エリザベスを演じているマーサ・ハイヤーは死んだという話を聞いていないので、まだ生きているはずである。終わり近くの取締役会の場面で何度もWho's Sabrina?と叫ぶのが印象的。あまり得ではない役回りながら、一時期はグレース・ケリーの後継者と目されたという美貌でオードリーを向こうに回して頑張っている。サブリナがパリで親切にされる男爵を演じているマルセロ・ダリオ(1900-85)は、実際の年齢よりもだいぶ老けた役を演じていたことになる。古くは『望郷』(1937)、『大いなる幻影』(1937)、『ゲームの規則』(1939)などに出演した俳優で、この後も『フレンチ・カンカン』(1960)、『レディL』(1965)、『おしゃれ泥棒』(1966)、『25時』(1967)、『アレクサンドリア物語』(1969)、『キャッチ22』(1970)などの作品に出演しているようである。これらの作品の多くを観ているのだが、一向に出演していることに気づかなかった。世の中、知らないこと、気づかないことは多いのである。同じく、ライナスの秘書を演じているエレン・コービー(1911-99)も『素晴らしき哉、人生』(1946)、『ママの思い出』(1948)、『若草物語』(1949)、『シェーン』(1953)、『めまい』(1958)、『ふるえて眠れ』(1964)などに出演している。これまた見たのに気付かなかったことが多い。
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