椎名誠『ごっくん青空ビール雲』

10月13日(日)晴れ

 椎名誠『ごっくん青空ビール雲』(文春文庫)を読み終える。『週刊文春』の2009年2月19日号から2010年3月18日号までに掲載されたエッセーをまとめて、2011年に『ごっくん青空』として文芸春秋から発行されたものを改題し、文庫化したものである。ビールをごっくんと飲み、青空に浮かぶ雲を見上げるというのではなくて、青空を飲んで、ビール雲を見上げようということであろうか。ビール雲というのがどういう雲を言うのか、こちらの想像力が及ばないのが残念に思われる。

 相変わらず椎名さんはビールが好きであり、「あとがき」によると現在もほとんど毎日飲んでいるようである。尿酸値が高いことを警告されたが、「飲みたいビールをセーブするストレスよりもガンガンいってもし発症したら本望だい」(297ページ)と開き直っているという。それはそれで尊敬すべき態度であるが、わたしはビールはあまり飲まないようにしている。

 取材や講演、趣味と実益のための旅行の経験が多く綴られているのもこれまでと同じであるが、旅先で飲みに出かけることもなく、「コンビニのビールと焼きそばを買ってホテルの部屋で飲んでいた」(236ページ)というあたりを読むと、椎名さんも少し年をとってきたかなと思ったりする。
 
 とはいうものの椎名さんの好奇心と冒険心、そして批判精神はそれほど衰えているように思えない。楽しみが多い分、怒りも少なくない。「長崎は今日もレインだった」とか、「タフでドジな航海記」とか、「むかし椰子。今はごみの南島」といったエッセーにそういう椎名さんの個性がよくあらわれている。

 ある意味で感心しているのが、椎名さんがまだワープロを使い続けていること。わたしもかなり後までワープロを使い続けていたが、さすがに今は使っていない。それでも、外国では名品と呼ばれる道具や機械は同じ製品をつくり続けているのに、日本ではそうではない。「日本の最新機器のめまぐるしい多機能猛進、ハイテクかけのぼり思考はもう少し何とかならないのだろうか」(232ページ)というのには同感である。

 最後に、文庫版の「解説」を椎名さんの長年の友人である沢野ひとしさんが書いていて、高校時代に仲間内ではじめてビールを飲んだ経験を思い出している(そういえば、田村正和さんがむかしCMでビール歴○○年…とやっているのを観ては、「嘘つけ~」と思っていたものである)のが、『哀愁の街に霧が降るのだ』とつながる世界を感じさせて、配合の妙を見せていることを書き添えておく。 
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