パリの恋人

10月10日(木)晴れ

 10月8日に横浜シネマ・ベティで『パリの恋人』(Funny Face, 1957)を観た。TVで見たことはあるが、映画館のスクリーンで見るのは初めてである。明日(11日)までの上映で、明後日(12日)からは『麗しのサブリナ』(Sabrina,1954)が上映される。『パリの恋人』の上映時間は11:50~13:40と17:50~19:40、『麗しのサブリナ』の上映時間は12日から14日までは10:00~11:55と16:45から18:40、15日から18日までは10:00~11:55と16:20~18:15である。1950年代のアメリカ映画の素晴らしさ、そしてオードリー・へプバーンの魅力を感じるためにぜひ映画館に足を運んでいただきたい(川崎のチネチッタなど他の映画館でも上映がされているので、都合をつけて見に出かけてください)。

 ニューヨークに本拠を構えるファッション雑誌『クォリティー』のボスであるマギーが新しい流行のコンセプトを考え、その中心となるモデルとしてミス・クォリティーを選んで売り出すことを思いつく。ファッション写真家のディックが撮影にあたるが、なかなか気に入った写真が撮れない。グリニッジ・ヴィレッジのごく地味な書店を撮影場所に選んだ彼らはそこで気まじめな若い女店員ジョー・ストックトンにであう。哲学少女の彼女は一行が店を散らかしたことに怒るが、ディックは彼女に普通とは違った魅力があることを認め、彼女をミス・クォリティーに選んでパリに連れていくことを提案する。彼女は共感主義という哲学に熱中しており、その主唱者であるフロストル教授に逢いたがっている。ドタバタ騒ぎの末に、どうやらマギーとディック、そのスタッフはジョーを連れてパリに乗り込むことになる。

 マギーもディックも、もちろんジョーもパリがすっかり気に入るが、その気に入り方は違っている。行き違いはあるが、デザイナーのポール・デュヴァルの手でジョーは美しく変身し、パリとその郊外のあちこちで彼女の写真が撮影されるが、次第にディックとジョーは惹かれあうようになる。その一方で、ジョーはフロストル教授と会う夢をあきらめてはいない。

 1927年にジョージ・ガーシュウィンが作曲したミュージカル『ファニー・フェース』を、ミュージカル映画を得意とするスタンリー・ドーネンが映画化。この後ドーネンは『シャレード』(Charade, 1963)、『いつも2人で』(Two for the road, 1967)とオードリーの映画を合計3本監督している(彼女の映画を3本監督しているのは他にウィリアム・ワイラーだけである)。彼女の作品はロマンティック・コメディが多く、まじめな映画もないわけではないが、ドーネンは前者に傾き、ワイラーは両方の傾向の作品を取り、フレッド・ジンネマンが1本だけ監督したのが、まじめ派の代表作『尼僧物語』(The Nun's Story, 1959)であるというのがそれぞれの監督の性格を表していて面白い。

 ロマンティック・コメディと書いたが、地味に暮らしていたあまり冴えない娘が美しく変身して男(たち)を手玉に取るというのは『麗しのサブリナ』、『昼下がりの情事』(Love in the Afternoon, 1957)からこの作品を経て、『マイ・フェア・レディ』(My Fair Lady, 1964)に至るオードリーの主要な性格表現であった。そしてそれは女性の観客の心に強く訴えるものであった。『麗しのサブリナ』ではニューヨークからパリに渡ったヒロインがそこで変身して、ニューヨークに戻って物語が展開するが、この作品ではニューヨークから渡ったパリで主要な物語が進行する。『昼下がりの情事』、『パリで一緒に』(Paris When It Sizzles, 1964)、『シャレード』とオードリーにとってパリはおなじみの都市である。(変身と書いたが、もちろん、はじめから他を圧して美しいヒロインとして登場する作品もあるし、『尼僧物語』や『暗くなるまで待って』(Wait Until Dark, 1967)の熱演も見落とす訳にはいかない。)

 ストーリーとしてはやや工夫に欠けるところがあるが、当時の風俗を巧みに織り込み、タイトルバックからラスト・シーンに至るまで凝った画面の構成で観客の目を楽しませてくれる。それに、これはオードリーが歌って踊った唯一のミュージカル作品である(『マイ・フェア・レディ』の歌は吹き替え)ということでも貴重である。オードリーの相手役を務めているフレッド・アステアの歌と踊りに文句はないが、彼女と年が離れすぎているのではないかと気にならないでもない。マギーを演じているケイ・トンプソンもなかなか見事なパフォーマンスを見せている。衣装デザインはイーディス・ヘッド。古いハリウッドの確立された技術の中で、ドーネンの才気とオードリーの魅力が存分に発揮されている。
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