ウィルキー・コリンズ『月長石』(11)

10月2日(水)台風22号の影響による雨、午後になってやむ

 ヴェリンダー家の令嬢レイチェルの誕生祝いに贈られた月長石という名前のダイヤモンドが、誕生日のパーティーの夜が明けると紛失していた。事件の解明が進まぬ中、レイチェルの従兄で宝石をもちこんだフランクリンは、ロンドンの警察のカッフ部長刑事に捜索を依頼する。カッフはレイチェルの部屋に塗られたペンキが手掛かりになるのではないかと考える。ヴェリンダー夫人との会見を終え、洗濯物の帳簿を調べたカッフは帳簿をもってきた召使のロザンナ・スピアマンの顔に見覚えがあるという。カッフは執事のベタレッジと庭で話をするが、その様子をロザンナが盗み見ている。カッフは背中のリューマチの痛みが出たと言って彼女の関心をそらそうとする(後にシャーロック・ホームズが使うことになる術策である)。

 カッフは召使たちを集め、1人ずつベタレッジの部屋に招き入れて、知っていることを聴こうとする。1人1人と話した時間は違い、部屋から出てきた彼らの様子も違っている。彼らはカッフについてそれぞれの勝手な感想を述べたりするが、一番時間をかけて聴取されたロザンナは無言である。取り調べが終わった後でカッフはベタレッジに「ロザンナ・スピアマンが外出させてくれと言ったら、行かせたまえ・・・しかしまずわたしにしらせてくれ」(190ページ)という。

 ロザンナ以外で最も長い間話を聞かれたのは、「奥さま付きの女中」(my lady's own maid)と「一番女中」(the first housemaid)の2人であった。この2人は日ごろからロザンナのことをよく思わず、いじめていたたのである。ロザンナに同情的なベタレッジは2人とお茶を飲んでカッフが彼女たちから何を聞き出したのかを確かめる。2人はロザンナの病気を本気にしていずに、彼女の様子をうかがっていたのである。2人はロザンナが部屋で何かを燃やしていたらしいという。

 平静を装って2人と別れたベタレッジはロザンナに同情的な気持ちと不安から植え込みのほうに歩いていくと、フランクリンにであう。フランクリンはヴェリンダー夫人と話をした後で、かなり気がめいっている様子であった。「ねえ、ベタレッジ。いま、ぼくたちが渦中に巻き込まれている謎や疑惑の空気に、おまえは馴じめるのかい? ぼくが月長石を持ってここへはじめて来た日の朝のことおぼえているだろう。あのとき、月長石を流砂の中に投げすてておけばよかったよ!」(193ページ)と弱気な感想を漏らす。

 ベタレッジからこれまでの経緯を聴いたフランクリンはロザンナが犯人にちがいないと言って、それをヴェリンダー夫人に知らせようとする。しかし、カッフが現れてそれを制止する。カッフはフランクリンと言い合いになるが、それぞれが表だって口に出しては言わないが、レイチェルの問題が絡んでいるらしいこと、しかも言い合いながらお互いの腹のうちは理解し合っていることをベタレッジは感じ取る。カッフはベタレッジが探偵のまねをして事件を探ろうとしたことを非難する。それでも、これからは自分の仕事を手伝うことに専念してほしいという。海岸を案内してほしいというのである。

 海岸を歩きながら、カッフはロザンナは犯人ではないという彼の推理の一端を述べる。ロザンナはヴェリンダー夫人からリンネルの服をもらったのだが、それをペンキで汚してしまった。そこで町でリンネルの生地を買って新しい服を仕立て、アイロンをかけた(2人の女中は何かを燃やしたと推測した)。ペンキのついた服をどうやって隠すかを考えているところであろうという。

 砂丘にはロザンナの足跡が記されているが、彼女の姿が見えないので、カッフは近くのコブズホールの漁村に向かおうとする。この村のヨーランドという漁師の家の娘とロザンナは仲よくしているのである。娘はいあわせなかったが、漁師のおかみさんとカッフはいろいろな世間話をする(これもシャーロック・ホームズの例えば『四つの署名』の中の川船の持ち主モーディケアイ・スミスのおかみさんとのやりとりを思い出させる)。彼女はロザンナがヴェリンダー家をやめるつもりでいたこと、彼女のなけなしの蓄えをはたいて錫で出来た箱を買いとったことなどを語る。その箱の中に彼女は何かを隠そうとしていたらしい。

 ヴェリンダー邸に戻ると既にロザンナは帰宅しているとの話である。その一方でレイチェルは邸を離れるつもりであるらしい。ヴェリンダー夫人はカッフが帰るのを待ち受けていたという。

 事件はこれで一気に解決しそうな雰囲気であるが、実はまだ半分にも達していない。解決が長引くことになるのはどのような事情からであろうか。それは次回以後のお楽しみにしておこう。(つづく)
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