わしらは怪しい雑魚釣り隊―マグロなんかが釣れちゃった篇―

12月1日(土)晴れ
 椎名誠『わしらは怪しい雑魚釣り隊―マグロなんかが釣れちゃった篇―』{新潮文庫、2012}を読み終える。このところ椎名さんの本をあまり見かけないと思ったら(もっとも、仕事を退職して以来、文庫本でしか買わないことにしている)、年末が近づいて『アザラシのひげじまん』(文春文庫)、『新宿遊牧民』(講談社文庫)、それにこの本と立て続けである。
 私は釣りの趣味がないので、その方面からこの書物を批評しようとは思わない。エビを釣ろうとタイを釣ろうと、マグロを釣ろうと、カワハギを釣ろうと、それは私の関心外である。これまで椎名さんの本は彼が自分の周辺に結集してきた個性的な面々の銘銘伝として読んできた。この本もそうした読書の延長上で手にとった。
 「雑魚釣り隊」は「怪しい探検隊」の延長線上にあり、椎名さんが「文庫版あとがき」で書いているように「新宿の我々の昔からのアジトである数軒の居酒屋に集まってくる仲のいい連中」(313ページ)という集団であり、居酒屋―というところが、高田公理氏が『酒場の社会学』(PHP文庫、1988)で展開した酒縁社会の議論を思い出させる。そういえば、この書物の中で高田は、「酔っ払い同士の『オモロイ奴や』という相互の友好的了解は…一瞬のうちに成立する。しかもその際の迅速な判断は・・・その後のつきあいを安定的に持続する契機となる」(41ページ)と書いていた。
 様々な個性をもった仲間とのばか騒ぎの様子が、適度に粉飾されデフォルメされて再現される。ふざけて騒いでいるだけのように見えて、自然破壊や環境の汚染についての観察が折に触れて挿入される。こういうメリハリもこの著者ならではのものである。
 それでも写真を見ていると椎名さんも年をとったなあという印象をもってしまう。それでも『新宿遊牧民』に比べてこの書物は死の影のようなものが振り払われているように感じられ、それだけ安心して読むことができる。
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