板越ジョージ『結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか?』

8月20日(火)晴れ後曇り

 8月19日、板越ジョージ『結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか?』(ディスカヴァー携書)を読む。

 海外で人気はあるが外貨を稼ぐ収益性の高いビジネスにはなっていないというのが結論である。アニメ、マンガ業界の現状を詳しく分析すると、それが日本の産業モデルの縮図であることがわかる。アニメやマンガはこれまでのところ、国内完結型の閉鎖的産業であったし、それでやっていけたが、これからはもっと開放的な産業となり、さらに国際的競争力も持たないと生き残れない時代になっていると著者は主張する。

 確かに日本のアニメは海外で人気を呼んでいるが、特にアメリカにおけるビジネスの構造が理解されていないこと、デジタル化の時代に対応できていないことのために十分な収益を上げていない。例えば、テレビアニメの多くは、テレビ放映によってだれでも無料で視聴できる。したがって二次的な派生事業で収入を得る必要があるという。

 日本のマンガビジネスが国内完結型であるのは、国内に成熟した市場がり、国内市場で十分採算が取れたからである。しかし日本の人口が減少に向かい、グローバル化、デジタル化が進んでくると、国内市場を優先させ、余力があれば国外進出を考えるという従来の姿勢ではやっていけなくなる。海外進出を図るに際して、特に必要なのはマーケティング戦略である。特にアメリカでは商品を使う前からその効用を説明するビジネス組み立てており、使ってみてその良さを理解してもらうという日本とは違いがあることを理解しなければならない。日本では知的財産ビジネスの専門家が少ないことも問題である。海賊行為や違法動画のアップロードという事態に対応できていないのはこのことと関連する。さらに実のところアニメDVDなどの映像パッケージを販売している店舗が減少しているという事態もある。文化経済におけるナショナリズムの台頭が追い打ちをかけている。

 日本のマンガとアメリカのコミックの違いは、アメリカでは知的財産権はすべてパブリッシャーがもっているということである。マンガを世界展開のビジネスとして考えるならば、アメリカモデルの方がやりやすいはずである。海外進出を考えるのであれば、戦略的パートナーシップを結べるようなプロデューサーが必要となる。作品がいいのに収益が上がらないのはビジネスの仕組みが悪いからである。従来のディレクター中心のシステムを、プロデューサー中心のシステムに切り替えていく必要がある。

 かなり簡単に内容を紹介してしまったが、この他にも著者は多くの議論と提案を行っている。知的財産権をめぐって、最近のTPPをめぐる日米間の動きについて触れてくれるとありがたかったのだが、その点についての言及がないのが残念である。ディズニーと手塚治虫の違いについて触れた140-1ページの記述が特に印象的。ディズニーと言えば、95-101ページで触れられている紅白歌合戦へのミッキーマウスの登場についての議論も見逃せない個所である。

 「今や、アニメやマンガ業界において、日本人が熱中しやすい『ものづくりの質にこだわる』ことは最高の美徳ではありません。国際競争力を持つためには、しっかりとした知的財産戦略とマーケティング戦略が必要なのです」(162ページ)と著者は説く。「日本は、システムをつくり、ルールをつくる立場にならないと、いつまでたっても『ものをつくるだけの国』になってしまいます」(165ページ)という危機感が著書全体を貫いている。日本の政府と企業が「クールジャパン戦略」を本気で展開するつもりであれば、広く読まれてよい本である。 
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