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日記抄(1月15日~21日)

1月21日(火)晴れ、三ツ沢グランドの陸橋付近からかすかに富士山が見えた。

 1月15日から本日までのあいだに経験したこと、考えたこと、これまでの記事の補遺・訂正等:

1月15日
 NHKラジオ『遠山顕の英会話楽習』では「クッキーの裏と表」と題して、クッキー(cookie)にかかわる様々な表現が取り上げられた。
 この菓子は、cookie dough (クッキー生地)を伸ばし、cookie cutter (クッキーの抜型)で切り取り、cookie sheet (天板)に乗せて焼いてこしらえる。ふつう、多めに数日分を作り、cookie jarという入れ物に入れておく。そんなところから、さまざまなゲームや表現が生まれた。
 「うまくいくと思ったんだけれど邪魔が入って」という話を聞いて、
 That's the way the cookie crumbles.
(クッキーはそうやってボロボロになる)
というと、「世の中、そういうことなんだよね」「仕方ないよ」といったあきらめをこめた日常表現となる。
 このことわざとか、smart cookie (賢い奴)、、tough cookie (タフで侮れない奴)といった表現は『ロングマン英和辞典』(2007)には出ているが、『齋藤英和中辞典』(初版1933)には出ていないどころか、そもそもcookieという語が出てこないのだから、時代の変化というものを感じさせられる。

1月16日
 来年度から始まる大学入試における英語の4技能をめぐる新しい試験についての検討会議の記事が『朝日』、『日経』両紙に出ていた(他紙にも出ていたはずである)。民間試験の活用の問題などをめぐり、もう一度白紙の状態から出発するのか、これまでの議論を踏まえて(継承して)議論するのかというところで、すでに議論が分かれていたようである。そのあたりのことも含めて、徹底的に議論をしてもらいたいものだ。

 『日経』に吉野彰さんがノーベル賞を受賞されたことを祝う、同じく企業内の研究者でノーベル賞受賞者である田中耕一さん、それに池上彰さんと3人での座談の様子が掲載されていた。「問題意識を持ち続ける」など、当たり前のことでも大きな研究成果をあげた人の発言だと、説得力が増すから面白いものである。

1月17日
 NHKラジオ『実践ビジネス英語』では、1月8日から6回にわたって、”Overprotective Parents"(過保護な親たち)という話題を取り上げてきたのだが、アメリカで最近問題になったthe college bribery scandal (贈収賄スキャンダル)について意見を聞かれた番組パートナーのヘザー・ハワードさんが
I fumed. Ifumed and fumed and fumed. I mean, it just boils my blood to think of these wealthy parents trying to steal a place from kids like me and my high school friends We workd our butts off to get into college..(非常に腹が立ちましたね。怒り心頭に発しました。つまり、こうしたお金持ちの親たちが、私や私の高校の友人たちのような子供たちから席を奪おうとしていると考えるだけで、とても腹立たしいのです。私たちは大学に入るために猛勉強したのですから。)と怒りをあらわにする発言をしていたのが印象に残った。よく、アメリカでは大学に入学するのは容易だが、卒業するのは難しいといわれてきたが、実際のところ、入学するのが難しい大学も少なくないようである。〔ヘザーさんはアイヴィー・リーガーズに数えられるコーネル大学の卒業生である。〕

1月18日
 神楽坂のThe Gleeで別府葉子さんのシャンソン・ライヴを聴いた。今回は、「歌うピアニスト」江口純子さんがピアノを担当ということである。「花」を主題にした楽曲を中心に構成するということで、そのなかでも「百万本のバラ」をはじめ、バラを取り上げた歌が多いのが特色であった。そういえば、江口さんとのデュエットで歌った江口さんのオリジナル曲は「ここには バラが」と題されていたし、アンコール曲も、「バラはあこがれ」であった。
 当然のことながらヨーロッパの曲が多かったのだが、そのなかでアフリカで医療活動に従事する日本人を歌ったさだまさしさんの「風に立つライオン」は異色ではあったが、聞きごたえがあった。そういえば、今回取り上げられた別府さんのオリジナル曲「月虹」をめぐり、月虹がよくみられるのはエチオピアであること、エチオピアでは「アフリカの桜」と呼ばれるジャカランダという花が咲くことなどが語られた。霙交じりで寒い外とは対照的に明るく、温かい雰囲気で進んだライヴであった。

 『NHK高校講座 古典』は『枕草子』の4回目。「すさまじきもの」の2回目で、除目で地方官に任命されることを期待していたのに、選から外れた貴族の喜悲劇を描く章段。地方官に任命されれば、莫大な収入が期待されるのだが、それは裏を返せば、地方で過酷な収奪を行うということでもある。『今昔物語集』にはそういう収奪者としての地方官の姿を描いた説話がいくつもあって、物事をどちらの方向から見るかによって、描き方が違ってくる例として取り上げてもよいと思った。
 別府葉子さんのライヴを聴いたばかりのところなので、ちょっと書いておくと、平安時代から鎌倉時代にかけての地方政治のなかで、「別府」というのはどういう意味かをめぐって私の知る限り2説、郡衙の所在地という意味と、別符=国司などの特別の許可を得て私的領有が認められた土地という意味だとする見解とがあり、それぞれの場合に即して考えていくべき問題ではないかと思う。

 望月麻衣『京都寺町三条のホームズ⑬ 麗しの上海楼』(双葉文庫)を読み終える。主人公の家頭清貴、その「ライバル」の円生(なんでこの名前を付けたのか不審に思うことがある)、探偵事務所の所長である小松の3人が今回は美術・工芸品の鑑定士として上海に出かけるが、そこで事件に巻き込まれる。作者はあとがきで、上海とニューヨークに行く機会があったので、その経験を盛り込ませていただきましたと書いているが、そういう張り切った感じがよく出ている作品である。

1月19日
 『朝日』朝刊の「日曜に想う」で福島申二さんが「無類の人間好きが潤した荒野」という文章を書いている。アフガニスタンで凶弾に倒れた医師の中村哲さんが「無類の人間好き」だったという話の一方で、抽象的には人類愛を説くけれども、実際には周囲の人間と折り合いが悪い「人類を愛する人間嫌い」(フェルナンド・ペソア)が少なくないという指摘が心に突き刺さった。
 昔、教えた(制度的にはそうなっていたけれども、こちらが教えようとすることは何一つ学ぼうとしなかったから、『教えた』とは言えないのが真相である)学生でシュヴァイツァーのようにアフリカで医療活動に従事したいという夢を手放さないのがいた。小学生や中学生がそういう夢を持つのはかまわないが、大学入学の時点で医学部に入れなかった人間はもっとほかのことを考えるほうが現実的である。それに開発途上国における医療支援の形態や内容もシュヴァイツァーの時代とは変わっている。何よりもご本人が医師になるための、外国に出かけるための準備らしいものを何一つしていない。やる気だけでは何も実現できないと、周囲の人間がもっと「身の丈にあった」将来の計画を立てるように言って聞かせても、考えを変えなかったことを思い出す。教師の方は、彼が医学部を受験するために大学をやめてくれれば大いに助かると思っていたが、たぶん、親が必死になって説得したのであろう、そうせずに教職に就いた。福島さんの文章を読んで気づいたのだが、彼は周囲の人間との折り合いがあまりよくなくて、そのために意地になって人類愛の夢にしがみついていたのではないかということである。
 さて、この文章で、福島さんがペソアのことを「ポルトガルの文人」と書いているのは、この人物について誤解しているなと思った。ペソアはビジネスマンとして勤務しながら、いくつもの人格を背負った筆名を使い分けて、文学活動を展開した人物である。そうやって多数の仮面の陰に自分を隠すような文筆活動の中には新しい文学の可能性が潜んでいたのではないかと思う。あるいは、そんなペソアの人物像について詳しく書いていたら、本題の中村さんのことがかすんでしまうと思ってわざと簡単に触れるだけで終わらせたのかもしれない。

1月20日
 『日経』の「月曜経済観察」でMITのデービッド・ホーター教授が「巨大ITが生む格差」がますます拡大し、商社が労働の成果を独り占めし、敗者は仕事には就くことができるものの、彼らに与えられる仕事は高齢者介護・製造・整備、交通、修理など、高度な技術を必要としない仕事に偏るだろうと予測している。「社会的に問題なのは仕事が不足することではなく、比較的スキルの低い仕事の割合が増えていることだ。」というのはあまり明るい見通しではない。

 同じく『日経』の文化欄で、「装いがまとう意 十選」という連載が始まり、第1回として中宮寺に伝わる(奈良国立博物館寄託)「天寿国曼荼羅繍帳」の一部の写真が掲載されていた。聖徳太子の没後、妃である橘大郎女は、太子のいる天寿国をこの目で見たいと願い、それを聞いた推古天皇が天寿国の有様を刺繍で描かせたと伝えられている。〔太子の最も古い伝記とされる『上宮聖徳法王帝説』によると、橘大郎女が作らせたとのことである。〕
 この写真の「中央右の男子像が目立つ。太子の姿ではないかと想像できよう。しかしこの人物は、われわれが一般的に思い起こす太子の姿とは、まったく異なる衣服を身につけている。」 ということは、いろいろなことを考えさせる。あるいは、この繍帳をめぐる由来から疑い直した方がいいのかもしれない。

 本間順治『日本刀』(岩波新書)を読んでいて、『日本書紀』の推古天皇のところに、「太刀ならば呉の真鋤(まさび)」という歌が記されていることから、古代中国南方、特に呉と呼ばれた地方の鉄剣と、その技術がわが国にも輸入されていたことが推測されているのが興味深かった。『太平記』にも登場する呉の「干将莫邪」の説話を思い出したからである。著者が日中両国の刀鍛冶をめぐる交流史の可能性を示唆しているのは当を得たことであろう。

1月21日
 『朝日』の朝刊の「揺れる大学入試」という連続記事に、英語民間試験活用の見直しに関連して、「高校生は英語で自己表現したいんです」という東進ハイスクール講師の安河内哲也さんのインタビューが掲載されていた。英語で自己表現したいと思う高校生は、安河内さんの周辺には多くいるかもしれないが、みんながみんなそう思っているわけでないだろう。どのくらいの割合の高校生がそのように思っているのかを実証的に提示しないと、議論は始まらないのである。

 このブログを書いている最中に、宍戸錠さんの訃報が飛び込んできた。86歳。長く日活映画で活躍され、『探偵事務所23』シリーズなど主演作もあるが、小林旭さんの『渡り鳥』シリーズに登場する「エースのジョー」など、悪役(と云い切れない、独特の役柄)での演技が印象に残る。ざっと数えたところで私が見たことのある出演作は20本をくだらない。それでもコアなファンの方から見れば少ないだろうと思う。確か『仁義なき戦い 完結編』であったかと思うが、東映映画の撮影を見学した際に、直接の姿に接したことがある。また、ラジオで私の中学の先輩である赤木圭一郎を偲ぶ番組に出演されて思い出を語っていたことを懐かしく思いだす。謹んでご冥福をお祈りする。 
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