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ベーコン『ニュー・アトランティス』(4)

11月27日(水)雨が降ったりやんだり

 語り手の乗った船はペルーから中国・日本をめざして太平洋を西にむかおうとしたが、途中から風向きが変わって、予定から大きく外れ、太平洋の北の海域に押し流された。そして見知らぬ陸地に近づいたが、上陸しようとして、そこの住民たちに阻止される。彼らは、船に乗っている人々がキリスト教徒であり、海賊ではないことを確認して初めて、上陸を許可した。そして一行の主だったものは、上陸して異人館(the Strangers' House)に迎えられた。そしてこの土地の仕来りにより、船の乗員は全員荷物とともに上陸すること、その人、翌日、さらに3日間の間、異人館に留まるように言い渡される。

 翌日、船の乗員たちは全員、異人館に移ることができた。語り手は、乗員全員を集め、自分たちが幸運にも滞在を許されたとはいえ、これからのことはまだわからない。この土地の人々から言い渡された規則をきちんと守って、礼儀正しく行動するように申し渡す。その3日間を一行は異人館の中で快適に過ごし、その間に病人たちは速やかに健康を回復したのであった。

 3日たった次の朝に、これまで現れたことのない、別の新しい人物が一行を訪問した。彼は一行に礼儀正しく接し、一行の中の少数のものと話したいといったので、6人だけが残って話すことになった。彼はこの異人館の館長(office governor)であり、またキリスト教の司祭(Christian priest, 川西さんは「牧師」と訳しているが、イングランド国教会≂聖公会では「司祭」を使うので、こちらの方が適切だと思う)であるという。そして、この2つの職責から、一行が知りたいと思っていることを説明したいと思うという。

 まず、一行にはとりあえず6週間の滞在許可が与えられたが、事情によっては、彼自身の権限で期間を延長できるという。また、異人館は経済的に豊かで、十分な余裕がある。というのは、外国人の来訪がまれなため、今まで37年間も歳入を蓄えることができたのだという。したがって、一行の滞在費用は国が負担するし、一行が持ってきた品物については、適切に処理し、等価の物品、または金銀で返済するという。何事によらず、一行の要望には応えるつもりなので、遠慮なくいろいろと要望を出してほしい。しかし、特別の許可がない限り、市を取り巻く城壁から1カラン(約2.5キロメートル)以上離れてはいけないというのが彼の発言であった・〔ここで「カラン(Karan)」というのは、この土地で使われている尺度として、ベーコンが創作したものらしい。〕
 この寛大な申し出に対して、一行は感謝し、彼らの決まりに対する服従を誓う。そして、館長が去った後も、「天使の国に来たようだ」(川西訳、19ページ)と喜び合ったのであった。

 翌日の10時ごろにまた館長が現れ、彼らが「ベンサレムの島」と呼んでいるこの国では、海外に旅行する場合には自国の機密を保持する義務が課せられ、また外国人の訪問を受け入れることもないので、この国のことは外の世界ではほとんど知られていないのだという。そこで、自分たちの国のことで知りたいことがあれば、質問してほしいという。
 館長と対応したのは、一行の中の身分が高く、健康な10人ほどであったが、これまでの自分たちに対する扱いに感謝し、この国の人々が幸福そうに暮らしていることを賞賛しながら、どのようにしてこの国にキリスト教が広がったのかを教えてほしいと質問する。
 その答えは驚くべきものであったが、紹介は次回にゆずることにしよう。ベンサレムBensalemというのは、「エルサレムの子ども」(サレムはエルサレムの古い呼び名だそうである)という意味であるが、さらにこの語には「平和」とか「平安」という意味があるので、「平和の子ども」という意味にもなるとスーザン・ブルースは注記している。
 船の乗組員たちが全員無事に未知の島に漂着するというのは、『クリスティアノポリス』や『ロビンソン・クルーソー』の設定と大きく異なる点である。その一方で、乗員たちに、身分の差があって、そのことについてベーコンが当然のこととして記しているのも注目すべき点である(みんなが働くとか、平等だとか言う意識は全くないのである。この点はモアやカンパネッラと大きく異なるところである。) 
 住民たちが「ベンサレムの島」と自称している土地をなぜ「ニュー・アトランティス」と語り手は呼ぶのかという疑問を持つ方もいらっしゃるだろうが、その理由はおいおい明らかになるので、いましばらくご辛抱ください。
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