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ジェイン・オースティン『高慢と偏見』(20)

11月24日(日)朝のうちは雨が残っていたが、その後は曇り空が続く。

 19世紀の初めのイングランド、ロンドンの北にあるハートフォードシャーのロングボーンの村の地主であるベネット氏にはジェイン、エリザベス(エライザ、リジー)、メアリ、キャサリン(キティー)、リディアという5人の娘がいた。この一族は男系相続の仕来りであったので、一家の財産は5人の娘ではなく、遠縁のコリンズ氏に相続されることになっていた。それで、娘たちのうちの1人でも、裕福な紳士に嫁いでくれることが、ベネット夫人の切なる願いであった。
 ロングボーンの近くのネザーフィールド・パークを北イングランド出身のビングリーという裕福な青年が借りることになり、近くのメリトンの町で開かれた舞踏会でジェインを見初める。ジェインもビングリーに好意以上の感情を持つ。一方、ビングリーの親友でそれ以上の富豪だというダーシーという青年は、ビングリーからエリザベスと踊るように勧められて、それほどの美人ではないといって断り、それを聞いていたエリザベスの気持ちを傷つける。高慢な男性(ダーシー)と、それによって彼に偏見を抱いた女性(エリザベス)がこの物語の主人公である。
 ダーシーの叔母であるレディー・キャサリン・ド・バーグの恩顧によってケントのハンズフォードの教区牧師となったコリンズ氏がロングボーンを訪問し、エリザベスに求婚する。しかし、尊大さと卑屈さとが入り混じったこの人物を好きになれないエリザベスは、その申し出を拒否し、コリンズ氏は、ベネット家の隣のルーカス家の長女シャーロットに今度は求婚して承諾を得る。
 順調に交際を続けていたはずのビングリーとジェインであったが、ある日突然、ビングリーはロンドンに移動する。一旦は、エリザベスのことを軽んじる発言をしたダーシーであるが、その後で次第に彼女の魅力にひかれ始める。一方、エリザベスは、メリトンの町に赴任してきたウィッカムという国民軍の士官と意気投合し、近づきになる。彼はダーシーを子どもものころから知っているという。ロンドンに住んでいるベネット夫人の弟のガードナー氏がその妻とともにロングボーンを訪問する。ガードナー夫人は、ジェインをロンドンの自宅に招待してしばらく滞在させる配慮を見せる。彼女はダービーシャーに住んでいたことがあり、その点でウィッカムと共通の話題を持っていた。(以上第2巻第2章=25章までのあらすじ)

 ガードナー夫人はエリザベスと2人きりになる機会を見つけると、彼女に向かって、ウィッカムは好青年かもしれないが、財産をもっていないことが問題で、あまり深入りしない方がいい相手であると忠告する。これに対し、エリザベスは早まった真似をするつもりはないから安心してほしいと答える。〔コリンズ氏は自分に財産があり、エリザベスにはないことを強調して結婚を迫ったが、エリザベスは彼の人間的な魅力の乏しさから求婚を断った。ウィッカムの場合は人間的な魅力に惹かれながらも、相手の財産のなさがブレーキとして働いているようである。〕
 「叔母はそれなら安心だと明言し、エリザベスは叔母の親切な忠告に感謝して、二人は別れた。――このような問題で忠告がなされて、恨まれずに済んだ、驚くべき稀有な一例である。」(大島訳、255ページ) この――以下の個所は、意味がとりにくい。原文はa wonderful instance of advice being given such a point, without being resented. となっていて、中野康司訳では、
「恋愛問題について忠告すると、たいてい言い争いになるものだが、これは大変珍しい例である。」(251ページ)、また小尾訳では
「この種の忠告をして、相手が腹を立てなかったという、これは稀有な例である。」(260ページ)
 三者ともに、wonderfulを「稀有な」とか、「珍しい」とか訳しているが、『齋藤英和中辞典』にあるように「感心な、見あげた」という意味が含まれているように思う。作者は、ガードナー夫人とエリザベスの双方の分別を貴重なものとして描いているのである。 

 ガードナー夫妻は、ジェインを連れてロンドンに戻り、それと入れ替わるように、コリンズ氏がシャーロットと結婚式を挙げるためにやって来た。結婚式の前日に、シャーロットはベネット家を訪問し、その際の母親の対応があまりに不躾なので、エリザベスはシャーロットの後を追って言葉を交わすことになった。その際に、シャーロットは、自分は結婚後しばらくハンズフォードを離れることはできないと思うので、訪ねてきてほしいという。訪問しても楽しいことはないと思ったものの、エリザベスはこの願いを断ることはできなかった。シャーロットによると、彼女の父(サー・ウィリアム・ルーカス)と妹のマライアが3月に訪問の予定なので、その時に同行してほしいというのである。

 コリンズ氏とシャーロットの結婚式が行われ、2人はケントへと旅立っていった。その後、シャーロットからエリザベスにこれまでと同じように規則正しく手紙が届き、エリザベスもそれにきちんきちんと返事を出したが、「手紙を出すたびに、あの楽しかった親密な心の交わりはもう終わったのだと思わずにはいられなかった。」(大島訳、256ページ) シャーロットがどんな生活を送り、何を考えているのかは、自分の目で確かめないとわからないと、エリザベスは思った。

 一方、ジェインからは無事ロンドンについたという手紙があった。エリザベスは次の手紙では、姉がビングリー兄妹について何か書いてくるだろうと期待をもって第二信を待っていた。しかし、ジェインの次の手紙には、ロンドンに到着して2週間になるが、キャロライン(ビングリーの妹)にはまだ会っていないと記されていた。それで、機会を見つけて、ビングリーの一家が寄寓しているグロウヴナー・ストリートを訪問してみるつもりだと記されていた。
 ガードナー夫妻が住んでいるのはシティーのグレイスチャーチ・ストリートであり、グロウヴナー・ストリートはウェスト・エンドにある。鈴木博之『ロンドン』(ちくま新書)によれば(別によらなくてもいいが)、パリや東京と同様にロンドンも東の方が下町で、西の方がお屋敷町である(まあ、そうはっきりと分かれているわけではないが…)。そのことは、この小説でも、ジェインには外面よくしているけれども、底意地が悪そうなキャロラインが、ダーシーに向かっていったことでもある。

 ジェインはその次の手紙で、キャロラインには会ったが、彼女がロンドンに来ているとは知らなかったといわれる。ビングリーはダーシーと一緒にいることが多いので、姉妹でさえも会うことはあまりないのだという。
 何度か、ビングリーの姉妹を訪問しているうちに、さすがのジェインも彼女たちが口実を設けては、彼女から遠ざかろうとしていることに気づく。そのことを知らされて、エリザベスはほっとしただけでなく、ビングリー(のジェインに対する愛情)を信じる気持ちも消え去ったように思った。

 ガードナー夫人からは、エリザベスとウィッカムのその後の様子をたずねる手紙が届いたが、ウィッカムは祖父の1万ポンドの遺産を相続したミス・キングに注目の対象をを移したようなので、心配は無用だと書き送った。〔ミス・キングは、第3章でベネット夫人がビングリーの踊った相手を列挙する中にすでに登場している。①シャーロット・ルーカス、②ジェイン、③ミス・キング、④マライア・ルーカス、⑤ジェイン、⑥エリザベス…ということである。ビングリーがそつのない社交家であることが、この列挙によってさりげなく示されている。〕 ウィッカムに対して気も狂わんばかりの恋をしなかったのは、今になってみると幸いであったと彼女は書き送った。キティーとリディアには、美男子であっても、他の男性と同様に食べる手だてを講じなければならないということがまだわかっていないとも書き添えたのである。〔以上、第2巻第3章=26章まで〕

 次回、エリザベスはシャーロットをたずねてケントへと旅立つ。その前に、ロンドンでジェインと会うのを忘れない。そしてケントでは思いがけない展開が待っている…。 
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