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トンマーゾ・カンパネッラ『太陽の都』(14)

8月28日(水)雨が降ったりやんだり

 新世界に到達したのち、地球を1周してヨーロッパに戻ってきたジェノヴァ人の船乗りが、その航海中に訪問した「太陽の都」の様子をマルタ騎士団の団員に語る。
 「太陽の都」は太平洋中の島の中心部に広がる平原の中央の丘の上に、七重の城壁を同心円状に巡らせて建設された都市である。この都市は「太陽」と呼ばれる神官君主によって統治され、その「太陽」は軍事を司る「権力」、科学を司る「知識」、生殖・教育・医療を司る「愛」という3人の高官によって補佐されている。これらの高官を含めてすべての役人は、教育によりその能力・適性を見出された人々が任命されている。教育はすべての男女を対象として、男女別に集団で行われ、神殿の外壁と城壁に描かれた絵画が、子どもたちだけでなく大人たちに様々な知識を与えることに役立っている。
 この都市の人々は私有財産を持たず、全体として1つの家族として暮らしている。衣類は配給制であり、食事は共同で行われ、住居は割り当て制である。すべての人々がそれぞれの能力に応じて働き、そのため都市全体としては豊かであるが、人々は質素な暮らしを送っている。
 この都市の周辺の国々は、その豊かさをねたんでしばしば戦争を仕掛けてくるので、「太陽の都」の住人たちは、男女の別なく子どものころから軍事教練を受け、軍備を整えて常に戦争のために準備をしている。
 マルタ騎士団員の産業についての質問に答えて、ジェノヴァ人はまず商業について語る。商業はあまり盛んではなく、貨幣は外国からの訪問客のためのものであり、外国との交易は物々交換でなされるという。

 ジェノヴァ人は次に、「太陽の都」における農業について語る。
 「農業は大へん尊ばれ、耕されていない地面は手のひらほどもありません。」(坂本訳、46ページ、このように書かれているが、すぐ後で、放牧地がとっておかれていることが語られる。) モアの「ユートピア」におけるのと同様に、都市の住民たちが、農繁期には農村の人々に合流して農作業を行う。このようにすべての人々が働くことに加え、機械化と農耕方法の改善により、農業は豊かな収穫をもたらしているという。農業をめぐる技術としては、風力によって動く帆掛け車の使用(風がないときは家畜を使用する)が挙げられる。また彼らは大地を肥沃にするためにはその方がいいということで、肥料を使用しない(運動ではなく化粧によって自分を美しく見せている女性は虚弱な子どもを産むという怪しげな理由を取り上げて、こじつけている)。かれらには肥料を使わなくても豊かな収穫を生み出す秘法があるのだという(まさに怪しげな論法である)。風力の使用というのであれば、帆掛け車よりも、風車の建造の方が現実的ではないかと思う。

 「領土は一部が必要なだけ耕され、他は放牧に使われています。」(坂本訳、46ページ、前段で述べたように、耕されていない地面はほとんどないという記述と、この記述は矛盾する。) 牧畜もまた高い尊敬を払われているのだという。「馬、牛、羊、犬その他あらゆる家畜を飼育するこの貴い仕事は、アブラハムの時代のように極めて重んぜられています。」(坂本訳、46ページ) 「太陽の都」の住民はキリスト教徒ではないが、「アブラハムの時代」というようにキリスト教的な価値観がジェノヴァ人の発言には見られる。ユダヤ教の原型となる旧約聖書の根底に遊牧民の価値観が流れているのは、しばしば指摘されてきたことである。しかし、ここで「太陽の都」の人々が展開しているのは遊牧ではなく、定住民による放牧というヨーロッパ的な牧畜である。
 既に述べられたことの繰り返しになるが、この国には山や狩場があって、人々はそこで狩猟などの訓練を行う。

 航海術も大いに貴ばれている。かれらは「風も櫂も使わずに走る船」(坂本訳、48ページ)も持っているという。カンパネッラは自分はこのような船をつくることができるといっていたそうであるが、では、どのように走るのかというのは明かされていない。本当に秘密なのか、実ははったりなのか、それはわからない。もちろん、普通の帆船や手漕ぎの舟も使われている。
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