FC2ブログ

トンマーゾ・カンパネッラ『太陽の都』(13)

8月22日(木)曇りのち晴れたり曇ったり

 世界一周の航海をしてヨーロッパに戻ってきたジェノヴァ人の航海士が、マルタ騎士団の団員の質問に答えて、航海中に訪問した「太陽の都」の様子を語る。
 それはある島の中心部に広がる草原のまんなかにある丘を同心円状の城壁で7重に囲んだ都市で、人々は私有財産というものを持たず、市民が一つの家族として暮らしている。
 最高指導者は「太陽」と呼ばれる形而上学者で、軍事を司る「権力」、科学を司る「知識」、生殖・教育・医療を司る「愛」という3人の高官によって補佐されている。かれら4人を含まて、この都市の役人たちは、教育を通じてその仕事に一番適していると思われる人々が選ばれている。
 生殖はすぐれた子どもを生み出すのにふさわしいと考えられる男女同士の計画的な結合によってなされ、子どもは離乳すると教師に預けられて教育を受ける。城壁の周囲に描かれたさまざまな事物の画や、展示された標本は子どもの教育を助ける。
 かれらは全員がそれぞれの能力・適性に応じて働き、必要なものを受け取る。住居は割り当て制であり、衣料は定期的に配給され、食事は共同で行われている。
 「太陽の都」を取り巻く4つの国は、この都市の裕福さをねたんでしばしば戦争を仕掛けてくる。そのため「太陽の都」は十分な武器を装備し、また市民たちは子どものころから男女の別なく軍事教練を受けている。戦争に勝利した後は、敗者である敵に公正な態度をとり、善政を施すのをむねとしている。

 マルタ騎士団の団員は、「太陽の都」の制度が「祖国を破滅に導くような政党派閥の発生を防ぎ、ローマやアテネにおけるごとき暴君出現のもととなる内乱を遠ざけるすべは見あげたものだ」(坂本訳、44ページ)と賞賛する〔戦争について質問していたのに、ジェノヴァ人の回答に対して、このように対応するというのも奇妙で、議論がかみ合っていない。坂本さんが「暴君」と訳している後は、英訳ではtyrantとなっており、「僭主」とするほうが適切かもしれない。この時代、イタリア、特に北イタリアでは都市国家が分立し、武力や民衆の「支持」を背景に独裁政治を行うものが少なくなく、古代の地中海世界を思わせる状態であったことも視野に入れておく必要があるだろう。〕

 そして次に、かれらの仕事(「太陽の都」における様々な産業)について質問する。
 ジェノヴァ人は、すべての市民が軍務、農耕、牧畜に従事する共同の義務を持っているか、それだけでなくそれらの仕事がもっとも貴いものとされ、仕事がよくできる人こそもっとも高貴な人であると考えられていること、各人が各人に最も適した仕事に配置されるようになっていることは、すでに述べたとおりであるという。骨が折れ、しかも有益な仕事、例えば鍛冶屋や石工などはもっとも人々の賞賛を受ける仕事であるという。
 仕事は適性に応じて決められるが、その際、健康に対しても十分な配慮が払われ、健康を害するような仕事には誰もつくことはない。骨の折れない仕事は女子に割り当てられる。

 すべての人々が思索的な仕事をするが、そのなかでもっともすぐれたものは講師になるという。講師は手仕事にたずさわる者より尊敬され神官になる。〔この個所は、坂本訳にはあるが、プロジェクト・グーテンベルクにおさめられた英訳にはない。頭脳労働が肉体労働頼も敬意を払われているという点に注目する必要がある。〕
 すべての人々が泳げるようになることを求められており、都市の壕の外にはいくつものプールが、都市の内部には泉水が作られているという。〔この部分は、英訳でも省略されていない。なお、モアの『ユートピア』でも軍事上の理由から国民の総てが泳げることが求められていた。〕

 次に、ジェノヴァ人はなぜか商業について語りはじめる:
「商業は都の人たちには余り役立ちませんが、貨幣の価値は認識されており、外交使節が、自分で運べない食料品をお金で買えるように貨幣が鋳造されています。また、世界各地から商人を招き、余分の品物を処分しますが、貨幣は受け取らずに自分たちがもっていない品物と取引します。」(坂本訳、45ページ)
 「太陽の都」は一種の計画経済をとっているから、市場は限られた範囲でしか開かれない。しかも自分たちで貨幣を鋳造しておきながら、海外からやって来た商人たちとは物々交換で取引するという。私は経済学には素人だが、その素人目に見ても、この辺りのやり方はおかしい。一方で、金や宝石を徹底的に軽蔑した取り扱いをしながら、その一方で外国との取引の際には活用するというモアの『ユートピア』のやり方の方が現実的である。

 いずれにしても、外交官や外国の商人たちとの交流はきわめて限定的である。それだけでなく、奴隷や外国人のために都市が悪い習慣に染まるのを恐れて、戦争で捕虜になったものは売り渡したり、市民と接触する機会の少ない作業に従事させることになる。「都の外では常に四隊の兵士が四つの城門から出て領土とそこで働く人々を見張っています。」(坂本訳、45ページ、市民が常に監視のもとに置かれているということである。) 
 その一方で、「外国人は大歓迎され、三日間、食事を供されたり、足を洗ってもらったり、都とその組織について説明を受けたり、大会議場や食堂に通されたりします。外国人を保護する役目の人々もおり、もし外国人が都の市民になることを希望すると、1か月は田舎で、もう1か月は都のなかで試験され、この結果市民に迎えられることが決まると、儀式と宣誓により市民として受け入れられます。」(坂本訳、45‐46ページ、上記英訳には「足を洗ってもらった後で、都とその組織について…」という風に記されている。この方がわかりやすい。)
 「太陽の都」は、この後で取り上げるつもりであるベーコンの「ニュー・アトランティス」と同様に、半鎖国状態を保っているように思われる。当時の国際社会において、このような半鎖国政策はそれほど珍しいものではなかったことも留意する必要があるだろう。
 次に、農業について語られることになるが、それはまた次回に。

 このブログを開始して以来、これが2500件目の記事ということになるようです。約7年にわたるご愛読ありがとうございます。これからも一日、一日、頑張っていきたいと思っておりますので、よろしくご支援ください。
 
スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

tangmianlaoren

Author:tangmianlaoren
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR