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東川篤哉『かがやき荘西荻探偵局』

7月25日(木)晴れ、暑し。

6月26日、東川篤哉『かがやき荘西荻探偵局』(新潮文庫)を読み終える。
 
 商事会社で経理を担当していたミステリ・マニアの推理オタク小野寺葵、31歳;家電量販店の販売部につとめていた茶髪ショート・ヘア、方言女子の占部美緒、30歳;銀行に勤めていた黒髪・ツインテールでいまだに高校の制服を着る趣味がある関礼菜、29歳。3人のアラサー女子は、それぞれに趣味が高じて職場にいづらくなり(あるいは追い出され)、就職先の寮やアパートも追い出され、アルバイトを掛け持ちして食つなぐ(というよりも、趣味をあきらめていないので、出費が多いのである)日々、最終的に西荻窪のかがやき荘という一軒家をシェアハウスして生活している。

 このかがやき荘の持主というのが、中央線沿線で絶大な権勢を誇る法界院財閥の会長である法界院法子、この家はもともと法界院家の別邸で彼女が女子大に通っていたころに住んでいたのを貸に出したのである。かがやき荘の3人が家賃を滞納しはじめたので、自分の遠い親戚にあたる成瀬啓介という29歳の人物を見習い秘書に登用して、家賃の取り立てに出向かせる。ところが、出かけようとするその朝、法界院邸の離れに居候していたこれまた法界院家の遠い親戚だという真柴晋作という人物が謎の死を遂げるという事件が起きる。3人組は名探偵である葵の力で事件を解決して、それで家賃と相殺してもらえればと言い出す。意外にも法子女史は3人の申し出を受け入れ、3人は捜査に取り掛かる…というのが第1話:「かがやきそうな女たちと法界院家殺人事件」である。

 ある夜、美緒が見つけて持ち帰った洗濯機が夜になると動きだして、ぞうきんを洗っているという事件が起きる。その一方で、法子夫人の家庭教師をしていた女性の住んでいるマンションの一室で、怪しげな男の死体が発見される。この殺人事件を解決したら、当月分の家賃をタダにするということになるが、実はこの2つの事件は…というのが第2話:「洗濯機は深夜に回る」である。

 法界院グループに属する広告社の女性社長の、父親が週末になると出かけていくが、母親に隠れて浮気をしているのではないかという疑惑を解明することを3人組が頼まれ、3人が尾行を開始するが・・・というのが第3話:「週末だけの秘密のミッション」である。第1話、第2話が殺人事件だったのに対して、第3話は日常の謎と言っていい話になる。この父親が自動車の中のラジオでプロ野球の交流戦のタイガースとライオンズの試合の実況を聞いていて、ライオンズが中村選手の本塁打で同点に追いついたものの、延長戦の結果惜敗したなどという細かい話が出てくる。あるいは作者はライオンズは好きではないが、(おかわり君というあだ名こそ出していないものの)中村選手が好きなのかもしれないなどと勝手な想像をかきたてられている(実は私がそうである)。

 第3話までは3人組が(時には成瀬の助けを借りて)事件を解決するのだが、今回は、事件の当事者になる。
 葵がアルバイト先のコンビニから帰る途中で、《西荻向上委員会》の活動に身を投じているという中年の紳士に声をかけられる。会の発行する雑誌の表紙を飾ってほしいというのである。「男性経験の極端に少ない」(345ページ)葵を毒牙にかけようとする結婚詐欺師のたくらみでは…と残る2人は心配して…ということで第4話:「委員会からきた男」のストーリーが展開する。これまで探偵役として活躍していた葵が今度は探偵される側にまわる。どこかで読んだような話(解説の香山二三郎さんはカトリーヌ・アルレーなんて余計なことを書いている)の展開ではあるが、これまでの3話で刷り込まれている登場人物の個性がその中にうまくはめ込まれている。

 「類稀(たぐいまれ)な探偵力と、信じがたいほどの詰めの甘さ」(217ページ)を持つ3人組の活躍は、どうもこれからも続きそうである。この作者の作品としては、瀬戸内海の島で起きた事件を女性探偵が解決する『館島』(創元推理文庫)を読んでいるが、ここではまた別の面白さが感じられた。余計なことを書いているといったが、香山さんの言うように、この短編集は順を追って読んだ方が面白いし、登場人物への理解も深まる。続編も既に出ているようなので、文庫本になったらまた読んでみるつもりであるし、この作者の代表作らしい『謎解きはディナーの後で』も読もうと思っている。

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No title

相変わらず推理ものがお好きなようですね。

私の方はこの時期は、汗をかきかき撮影に出かけています。今年の高校野球は母校の非力さが極まっていて、早々にコールド負けしてしまいました。楽しみが早々と消えてしまいました。まさか、横浜高校が公立校に大逆転負けを喫するとは。予想外の展開でした。そういえば、湘南高校も結構強かったようです。う~~ん。

Re: No title

コメントを有難うございました。
今週は、週のうち3回、神保町シアターに足を運んで、野村芳太郎監督の特集上映を見たので、なかなか時間のやりくりが大変で、返事が遅れてしまいました。
1月に10冊本を読むと決めておりますと、比較的簡単に読める本を何冊か読む必要に駆られ、ミステリー、特にコージー・ミステリーに手を出すことが多くなります。そのほか読みやすいと思うのは、旅行記類と食べ物関係の本でしょうか。
硬式野球の神奈川県大会は、番狂わせが多く、波乱の展開でしたが、日大藤沢と東海大相模という西のほうの学校の決勝となったのは、東のほうに住んでいる人間としてはあまり面白いことではありません。慶応高校は硬式では早めに敗退しましたが、軟式は県大会の決勝まで進みました。三浦学苑に敗れて春夏連覇はなりませんでしたが、まずまずの健闘ではないかと思います。三浦学苑の松原投手は準決勝で完全試合を達成しましたが、サウスポーで、高校生だとやはり左腕の投手は打ちにくいのだろうなあと改めて実感しているところです。南関東大会を勝ち抜いて、全国に出場できるか、気になるところです。実はうちの母校も三浦学苑に3回戦で16-5(6回コールド)で敗れております。
それではまた、お元気でお過ごしください。
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