ウィルキー・コリンズ『月長石』(5)

7月24日(水)雨が降ったりやんだり

 フランクリンは1848年の5月24日に、予定よりも1日早くヨークシャーのヴェリンダー家に到着した。伯父であるハーンカスル大佐の遺言により<月長石>を従妹のレイチェルの誕生祝いに贈るためである。しかしレイチェルの誕生日は6月21日であって、また1カ月近い期間が残されている。5月29日にフランクリンはレイチェルとともに屋敷の中の扉の装飾作業に取り掛かる。ベタレッジはその作業が無意味だと思うが、2人は仲睦まじく作業に取り組んでおり、このまま2人が結婚するのではないかと推測する使用人もいる。

 レイチェルは誕生日がくると18歳を迎える美しい娘であり、自分の意見をはっきり持ち、自分のことは自分で決めるという性格である。そのため母親に大事な相談事をするということもない。19世紀の前半の英国の小説には強い自己主張をもった女性がしばしば登場し、コリンズの作品でも『白衣の女』のマリアン・ハルコムもその1人と考えられるが、レイチェルは彼女ほど強烈な個性をもっていないけれども、芯の強い女性であると理解しておいてよかろう。

 6月12日にレイチェルの母のヴェリンダー夫人は彼女の2番目の姉の次男であるゴドフリー・エーブルホワイトに招待状を送る。夫人はレイチェルがゴドフリーをひそかに恋していると考えているとベタレッジは記す。あるいはフランクリンよりもゴドフリーの方が娘にふさわしいという自分の考えを押し付けようとしているということかもしれない。

 ベタレッジの見るところでも、ゴドフリーの方がフランクリンに比べてレイチェルの好意を得るのに有利な立場にあった。ゴドフリーのほうが背が高く、風采も見栄えがする。職業は法廷弁護士(barrister)であり(中村訳では「高等法院の弁護士」となっている)、女性たちが運営するさまざまな慈善団体の援助者である。イングランドでは法廷弁護士と事務弁護士(solicitor)という2種類の弁護士がいて、法廷での弁論にあたるのは後者なのだが、実際には資格だけもっていて法廷には立たない人も少なくなかったようである。ゴドフリーの場合も、慈善活動家としての活動の方が目覚ましいものであったと推測される。

 6月20日にゴドフリーが彼の2人の妹とともに近くの町までやってきて、21日には訪問すると伝える。伝言とともに届けられた誕生日の贈り物もゴドフリーの方が心がこもって立派なものである。ゴドフリーの方が社会のしきたりには通じているが、フランクリンの方は何かにつけて率直にふるまっている。

 ところが6月21日を迎えてみると、フランクリンも、この日到着したゴドフリーもあまり元気がない。フランクリンは預けてあったダイヤモンドを人々に披露する。感嘆する人々の中でゴドフリーだけが冷静である。

 ベタレッジのところに娘のペネロープがやってきて、ゴドフリーがレイチェルに求婚し、拒否されたと報告する。ペネロープは父親と違って、フランクリンびいきで彼の方がレイチェルの伴侶にふさわしいと考えている。また、下働きの召使であるロザンナ・スピアマンがフランクリンに対して奇妙なそぶりをすると記されている(恋心を抱いているのだが、ベタレッジも他の人々もまさかそんなことはないと思っている)。

 そしてレイチェルの誕生日を祝うパーティーが開かれることになる。
 
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