海と大陸

7月16日(火)曇り

 シネマ・ジャックでイタリア映画『海と大陸』(Terraferma、2011年製作、2013年日本公開)を見る。シチリア島のさらに沖合、アフリカ大陸に近い地中海上の島を舞台にするエマヌエ―レ・クリアレーゼ監督のこの作品は第68回ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞している。

 映画の中では島の名前は出てこないが、リノーザ島が舞台だという。最近、難民たちの実態を知るためにローマ教皇が訪れたというランぺドゥ―ザ島の北にあるとはいうものの北アフリカに近い場所にあるため、多くの難民たちが海を渡って押し寄せている。その少なからぬ部分が海上で命を落としているのも見落とせない現実である。

 かつてとは違って漁獲量が激減しているこの島で漁師を続けている祖父とともに海に出ている20歳のフィリッポは20歳にしては少し頼りない。父親は海で死に、母親は本土にわたって新しい人生を築こうと計画している。父親の兄弟である伯父は観光業で生計を立てており、祖父にも仕事をやめるように勧めているが祖父は耳を貸さない。

 母親は自分たちの住まいを改造して夏のあいだ観光客に貸しだす商売を始める。自分たちと同世代の若者たちとの交流が始まろうとする。ところが海に出た祖父とフィリッポは海上で出逢った難民たちを助ける。その中にまだ小さな男の子を連れた出産間近の母親がいて、彼らは母子を助けざるをえなくなる。違法難民を助けるのは法律違反で、フィリッポたちの船は当局に差し押さえられる。母子を見殺しにはできないが、自分たちが生きることさえも難しい状況が迫ってきている。

 祖父の世代の人々は海に生きる者には海の掟があると主張し、父母の世代は現実と法律に従わなければ生きていけないと考えている。では若い世代はどのように自分の目の前の問題と取り組むか。フィリッポは標準語を話さず、母親の考え、いらだちを十分に斟酌できない。それでも、住まいを借りにやってきた観光客との交流を通じて、また難民の母子との接触を通じて少しずつ世界を広げているようにも思われる。ただ、それがどのような結果をもたらすかについては、予測不可能な部分が残されている。

 難民の船と、観光客の船がそれぞれ鈴なりの乗客を乗せているために似て見えるという視覚的な効果が印象的である。一方が違法とされ、他方が合法というのはいかにも不条理であり、そのような映像の中にイタリア政府の難民政策への告発が込められている。光と影を対照させながら島と海の自然を写しだすカメラワークには風景描写以上の意味があると考えるべきであろう。 
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