俺俺

7月14日(日)曇り、一時雨

 ヒューマントラストシネマ渋谷で『俺俺』(三木聡監督)を見る。映写機の故障のため10:20に上映開始の予定が45分も遅れた。主演の亀梨和也くん目当てらしい女性客たちからは特に不満の声は上がらず。その後シネマヴェーラ渋谷で「映画史上の名作9」特集上映から、『花嫁凱旋』(リチャード・ボレスラウスキー監督)、『マルクスのデパート騒動』(チャールズ・F・ライスナー監督)を見る。映画が終わって外に出ようとしたら激しい雨で足止めを食った。

 カメラマンの夢をあきらめて郊外の家電量販店で働く均は、団地に住む母親には文句を言われ、職場の上司であるタジマからは何かといじめを受けているが、まずまず平穏に暮らしている。ある日ハンバーガー店で隣り合わせた客の携帯電話が自分のトレーに置かれたのをそのまま持ち去り、出来心でその母親に90万円を振り込ませる。ところがその母親が自分のアパートに現れ、自分の母親の住む団地に出かけるとストーカー呼ばわりされる。事情がわかってくると、どうやら均の他に、2人の人間が彼と同一人物になっている。均、彼がその携帯を盗んだ大樹、それにもう1人の学生である。3人は意気投合し、学生のあぱーとを「さるやま」ならぬ「俺山」と名づけて連絡を取り合う。その一方で均は謎めいた美しい女に仕事を頼まれるが、その夫という男とその仲間に付きまとわれるだけでなく、どうも行動を監視されているようである。

 均は増殖を続け、学生はそういう増殖した仲間を集めることを主張するが、大樹は反対する。すると学生は削除を始める。均の身近な人物が消され始め、彼自身も危険を感じるようになる。女が仕事をしている建物にはひどくがらがらの空間が広がっている。彼女が何をしているのかも謎である。

 ビートルズの『HELP! 4人はアイドル』などという例を持ち出すまでもなく、ある程度の集客を想定できるアイドル主演映画には時々とんでもない実験映画が紛れ込むことがある。これもその一例であろう。どこまでが現実(と言っても作り話ではあるが)、どこまでが幻想か、その境界があいまいになったまま物語が展開する。コメディーのようでもあり、サスペンスのようでもあり、寓意劇のようでもあり、不条理劇のようでもある。主人公が働く家電量販店の店員たちは、いつまでもこんな仕事をせずに転職しろと半ば以上強引に夢をしつけられている。夢がかなうとは限らないのに、その代価だけは厳しく取り立てられているのはどうもおかしい。職場の仲間、あるいは「俺」たちが集まって飲み交わすときのメニューのさみしさにも注目する必要がある。平穏に見える彼の職場生活にも実は闇があるし、その闇を照らすと、こんなドラマが見えてくるのかもしれない。
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