森知子『カミーノ! 女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅』

7月7日(日)晴れ、暑し

 7月5日に購入、6日に読み終える。2010年に携帯専用サイト「モバイルブロス」(東京ニュース通信社)に「さらばイギリス夫、今日から一人でファッキン巡礼! ~スペイン810km徒歩の旅」として連載されたものを改題し、再構成して幻冬舎文庫から出版された書物。

 スペイン北西部のガリシア地方にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラは十二使徒のひとり、聖ヤコブ(スペイン語でサンティアゴ)の墓があり、ローマ、エルサレムと並んでキリスト教徒の三大聖地に数えられている。中世に起源をもつ巡礼の歴史の中で、ヨーロッパ各地からの巡礼のルートができているが、フランスからピレネー山脈を越えてきたスペインを歩く「フランス人の道」(810km)がもっとも有名である。

 ライターとしての仕事がほとんどなくなり、イギリス人の夫からは離婚を申し出られた著者は思い切ってサンティアゴ巡礼の旅に出かける。キリスト教を信じているわけではない、ただ旅に出てものを書きたいという一念からである。歩きとおすだけでも大変である。ものを書いてインターネットで送るとなるとさらに荷物が増える。ただ、ひたすら歩くだけではなくて、旅のあいだのさまざまな出会いと触れ合い、邪念、雑念の数々が綴られている。

 さまざまな国籍、境遇の老若男女がこの巡礼路を歩いている。必ずしも快適とはいえない巡礼の旅を忘れられないものとしているのはそのような巡礼者たちの出会いである。巡礼は普通、早朝に旅立ってできるだけ早く宿を確保するのだが、そのペースに著者はなかなかなじめない。それでも追い抜かれたり、追いついたりを重ねながら次第に旅のペースをつかむ。アルべルゲと呼ばれる巡礼宿を初めとして、さまざまな宿に泊まるが、上には上が!?いて野宿専門の巡礼者に出逢ったりもする。宿もいろいろである。

 信仰の旅というよりも、人生を考え直す旅、おしゃべりの旅、そして合間合間にビール(セルベッサ)やワインを飲む旅の記録である。歩いているうちに知り合いが増える。うわさが広がる。自分と同じ年どころか、同じ誕生日の巡礼者に出逢う。そういう旅の中で、岡本かの子の「東海道五十三次」ではないが旅の終わり近くになると、旅を終えたくなくなってくる。

 などと書いたが、「やっぱ酒飲むとだるいね~(あたり前)。『一杯のビールはエナジーになる』ってサラとマルコが言ってたのはどこの町だったっけ? 4杯のワインとは言ってなかったもんなー」(229ページ)というようなざっくばらんな調子で旅の次第が語られている。

 サンティアゴ巡礼についての書物は最近多く出版されているが、この書物がおそらく一番世俗的な(宗教とは縁の遠い)ものである。実のところ私もサンティアーゴ巡礼と四国お遍路を成就して、両者を比べてみたいとひそかに思っていたのだが、この巡礼を終えた著者はさらに四国お遍路を歩きとおし、著書をまとめたとのことである。ひょっとすると歩くこと自体が一つの宗教的な意味をもつのかもしれない。とにかく著者のエネルギーに感心するとともに、今後の活躍を期待したい。 
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