FC2ブログ

ダンガル きっとつよくなる

7月14日(土)晴れ

 7月14日、横浜駅西口ムービル4で『ダンガル きっとつよくなる』(インド映画、ニテーシュ・ティワーリ監督)を見る。

 ダンガル(レスリング)の選手だったマファヴィル(アーミル・カーン)は、家庭の経済的な理由により(国による支援が得られなかったこともあって)、オリンピック出場をあきらめ、コーチをしながら若手の育成に励んでいた。そんな彼の夢は自分の息子にレスリング選手として、国際大会で金メダルを取らせることである。ところが、ご本人と村の人たちの期待とは裏腹に、生まれてきた子どもたちは4人とも女の子であった。夢をあきらめかけた彼は、自分の長女のギータと次女のバビータが、けんかで男の子をやっつけたことを知り、娘2人をレスラーとして育てることを決心する。

 朝5時に起きてのランニングに始まる体力づくり、食事の制限、厳しい練習に娘2人は当然反発する。しかし、娘たちが嫌がっても、周囲の人々が嘲笑しても、マファヴィルは自分の夢を貫こうとする。父親に反発する長女に対し、その友人の一人が言う:自分たちの親は私たち女の子を厄介者扱いにして、家事を手伝わせ、早く嫁に出そうとしている。嫁に行けば行ったで、子育てに追われることになる。あなた方の父親は娘の中に可能性を見出して、それを伸ばそうとしている。そこが違う。
 自分からやる気を起こしたギータとバビータは、練習に励むようになり、やがてギータは州、さらに連邦の選手権で優勝してナショナル・チームの一員となり、国立のスポーツ・アカデミーに入学することになるが、そのコーチの指導方針はそれまで彼女が受けてきた父親の指導方針とは違うもので、次第にギータの心は父親から離れていくが、インド代表として国際大会に出場するようになったギータは、なかなか一回戦を突破できない。コーチは、彼女は国際試合に向かないのではないかと言い出す…。

 この映画は実話に基づいているそうであるが、努力すれば強くなれるというスポーツ根性物語としての側面だけでなく、父親と娘の信頼関係、初めはレスリング一辺倒だった父親が娘をコーチしていく中で女性の権利一般に対して理解を深めていく変貌ぶり、世間一般の女性がスポーツをすることに対する無理解や偏見、スポーツへの補助金を出し渋る役所の消極性や怠惰への批判、最初は馬鹿にしたり、無関心な態度をとっていたのに、勝ち始めると手のひらを返したように態度を変えて熱狂する大衆の描き方などいろいろな要素を含んでいる。とはいうものの、基本的にはスポーツを含む文化の各分野における女性の力量形成を応援する映画と見ることができるだろう。そうはいっても、日本とは全く違うように見えるインドのスポーツ事情の描き出し方がいろいろなことを考えさせる。人気を集めているスポーツも違うし、オリンピックとは別に、コモンウェルス(旧英連邦)スポーツ大会での戦績が注目されるというところも違う。

 インドを含む南アジア、西アジアと中央アジアを東洋でも西洋でもない中洋であると論じたのは梅棹忠夫であったが、この一帯には伝統的にレスリングがスポーツとして高く評価されているが、それはどうも男性のスポーツとしてということであったようである。一方でスポーツにおける伝統を重視する風潮があり、他方で新しい動きがある。それが女性のスポーツ参加ということである。
 この伝統と新しい動きとがつくりだす混乱を面白おかしく描き出したのが、女子が男子のサッカー・ゲームをスタジアムで観戦することが禁止されているイランで、男装して試合を見に行こうとする女性たちを描いた『オフサイド・ガールズ』(2006、ジャファール・パナヒ監督)であった。同作品では、試合を見に行っただけで、女性たちが警察に逮捕されてしまう(もっともそこで映画は終わらないのであるが…)。イスラム教の権威を振りかざして、女性のスポーツ観戦を禁止する宗教的な権威主義国家のイランと、一応世俗的な(最近ではヒンズー原理主義の影響力が強くなっているといわれはするが)民主主義国家のインドの事情はまた違う。この『ダンガル きっとつよくなる』は、女性がスポーツをすることへの偏見を描いてはいるが、むしろその偏見を打ち破ったギータ、バビータ姉妹の活躍に刺激されて、インドの女子レスリングが盛んになり始めているということを告げて、終わっている。インドの女性たちが強くなっているということだけではなく、インドの民主主義の強さもこの映画は描き出していると考えるべきではないかと思うのである。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

tangmianlaoren

Author:tangmianlaoren
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR