エイヴリー・エイムズ『チーズフォンデュと死の財宝』

6月24日(月)晴れたり曇ったり

 6月23日、『名探偵のキッシュをひとつ』に続くエイヴリー・エイムズの『チーズ専門店』シリーズの第2作『チーズフォンデュと死の財宝』(Lost and Fondue)を読み終える。

 語り手であるシャーロット・バセットはオハイオ州のプロヴィデンスという町でチーズ&ワイン専門店を経営している。この町にも大学が必要だと考える人々が、設置運動を展開している。シャーロットの親友であるメレディスは町の財産であるジーグラ―・ワイナリーを大学施設に改造してはどうかと提案している。

 ジーグラ―・ワイナリーは19世紀の末にプロヴィデンスの初代の町長ザカライア・ジーグラ―が建てたもので、広大な敷地に壮麗な建物がそびえていたが、ジーグラ―家に忌まわしい事件が起き、ザカライアの娘が土地と建物を町に譲渡してニューヨークに去り、町はこの施設を放置したまま過ごしてきた。この施設を改造して大学のために利用しようと考えたメレディスは資金集めのために、この小説の題名になっているLost and Fondueという催しを計画する。ジーグラ―は死ぬ間際にワイナリーのどこかに財宝を隠したと告白したという。Lost and Found(お忘れ物取扱所)をもじったこの行事のアトラクションの1つとしてこのうずもれた財宝に引っかけた、がらくた集め競争を行おうというのである。シャーロットはこの行事のためにフォンデュを提供するように頼まれる。

 ところがこの行事の最中に町を訪問していた美術学生であるハーカーが殺されるという事件が起き、学生たちを引率していたメレディスの兄のフレディの娘(メレディスの姪)のクインが容疑者になってしまう。親友のためにシャーロットはクインの無実を証明し、真犯人を見つけたいと思うが、『名探偵のキッシュをひとつ』事件で無茶な素人調査をしまくったために、古くからの友人である警察署長のアーソから捜査に首を突っ込むなときつく言い渡されている。とはいえ・・・

 読み終えた感想を少しだけ言うと、クリスティの『親指のうずき』(By the Pricking of My Thumbs, 1968)を思い出させるところがある。トミーとタペンスのコンビが活躍するシリーズの最後から2作目であるこの作品で、タペンスはトミーの死んだ叔母の遺品である風景画を見て奇妙な胸騒ぎを覚える。その絵がきっかけで夫婦は怪事件に巻き込まれてゆく。

 両作品に共通するのは、事件の展開に絵画作品が絡んでいること、また町の過去の有力者の子孫がそれと分からない形で事件にかかわっていることである。前作同様に主人公の昔からの顔なじみである古くからの町の住民と、新しくこの町にやって来た人々とが複雑に交流し合い、シャーロットやメレディスたち、登場人物それぞれの家族の事情がからんで物語をさらに混とんとしたものにしている。大学の設置をめぐっては賛成派と反対派の対立がある。観光客が押し掛けたり、事件があると取材のためにマスコミが押し寄せたりする。小さい町であるが、住民たちは一枚岩とは言えない。そういうアメリカの地方都市の雰囲気がこの小説の奥行きとなっている。主人公の推理は快刀乱麻とは言い難いのだが、殺人事件と関係があるような、ないようなさまざまな出来事のもつれが、どのように解決されていくのか、その興味で最後まで読んでしまう。それだけの魅力のある書物である。 
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